↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
10/20

10話 息抜き

「ありちー!朝だよ!起きてよ!」


 やわらかなベッドの上で、ふかふかの布団を抱きしめて丸まっていると、私の睡眠を邪魔する奴の声がした。

 外はだいぶ明るいようで、目を閉じていても眩しく思える。

 私は寝返りを打って布団を頭からかぶった。


「もう起きて出かけようよー、つまらないよー」


 イラっとした。

 せっかくふかふかのベッドで気持ちよく寝ていたのに、身体を揺らされて無理やり起こされそうになった。


「この町、なにがあるのか見たいよ!見に行こうよ~」


「うっさいな!!一人で行けよ!!」


 あまりにもしつこくてムカついた。起き上がると布団をバンバンと叩いて一瞬嬉しそうに笑ったぷるぷるに怒鳴ると布団を頭からかぶってまた寝た。

 ぷるぷるもわかってくれたのか、静かになったところで私はもう一度ゆっくり寝ることにした。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ふぁあ~あ…」


 大きなあくびをしながら私たちは宿を出て町の探索をすることにした。

 ぷるぷるは昨日レノからもらった服に着替えていた。

 白と水色を基調にした動きやすそうな軽装だ。短いケープに、腰から垂れた水色の布が『元』僧侶の面影を少しだけ残している。

 けっこう服に無頓着なところがあるけど、これはたぶんスライムだったからなのかもしれない。

 短いケープに動きやすそうな服、腰から垂れた水色の布が『元』僧侶の面影を少しだけ残している。

 前の服はというと、宿の方で洗っておいてくれるというのでお願いすることにした。


「…」


「なに?起きなかったことまだ怒ってんの?」


「…」


 後ろを歩くぷるぷるは何もしゃべらずに後ろをついてきた。

 あの後、二度寝はしたんだけどどのくらい寝たか覚えていない。

 目が覚めたらぷるぷるは部屋にいなかった。

 どこに行ったかは知らないけど、めんどくさいなぁ。と思いながらも宿屋を出ると目の前にある椅子に座っていた。

 いい加減心配させるのはやめてほしい。


「ねぇ!返事くらいしろよ!」


 私は振り向いて朝から肉串を食っているぷるぷるに詰め寄った。

 最後の一口を口の中に入れてごっくん…。

 こいつ、結局少しもくれなかった。


「うるさいって言われた。僕悲しかった」


「だーかーらー!!謝ってるじゃん!わかる!?私だってたまにはふかふかのベッドで寝たいんだよ!」


「謝られてない。ずっと怒ってる」


「だからゴメンって言ってんじゃん!!」


「言われてない。今初めて聞いた」


「言ったじゃん!」


「いつ?」


「今!」


「…」


 道のど真ん中で私たちは言い合いになり睨み合った。


「ぷ、ははは!!今謝ってるって、…それ、謝ってないから!」


 先に笑いだしたのはぷるぷるだった。

 それにつられて私が睨んでいた顔も緩んでしまう。

 視線を外して地面を見ながら、


「ゴメンって言ったじゃん」


「うん、言ってた。一回ね。笑っちゃったから僕の負けでいいよ。仲直りしよ」


「きっしょ…っつか、なんでお前肉串食ってるの?金は?」


「え?ここから取ったよ」


 ぷるぷるは後ろを向いて腰のところにある水色の布の下にあるポーチを見せた。

 どこかで見覚えがあるぞ…それ。


「おま!!それ私のじゃん!勝手に取るなよ!!」


「勝手には取ってないよ。今朝机の上に置いてあったんだ。だから借りたんだけど…ありちー今まで忘れてたじゃん。ってことはいらないでしょ?」


「いる!それありち―の分!!返せ!」


「ありち―持ってても失くすじゃん!だったら僕が荷物持ちも兼ねて預かるよ!借りてるだけ!ちゃんと中身も全部ありちーのだから!」


「それならいっか…。勝手に使うなよ。カネ!次は殺す!金を使うな!」


「うん。わかってるよ。全部ありちーのだから大丈夫」


 ぷるぷるはカバンをまた隠すと、私の隣に走ってきて得意げに笑った。

 私専属の荷物持ち…いいじゃないか。ちょっと偉くなった気がする。


「肉串」


「はいはい。向こうで売ってたよ!見に行こうよ!この町、前の町よりも広いしいろいろあるよ!」


 ぷるぷるは私の手を掴むと勢いよく引っ張って走りだした。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「朝はやっぱりシュワシュワだよね」


「ありちー。君って本当に気分屋だよね。どうして肉串がシュワシュワになったのか教えてくれない?」


「寝起きで肉なんて食べれない」


 シュワシュワを一気に飲み干すとゴミ箱に向かって放り投げる。

 肉串を食べたい。という気持ちもあるけど、朝から肉よりもまずはシュワシュワっしょ。


「別に私が何を食ってもいいじゃん。…あ、あれなに!?」


 私は遠くに見える屋台の並びと、ひときわ大きな剣を見つけて走った。


「あれは、武器屋だね…この町は隣国と交流があるみたいで変わった武器が見れるってことで有名みたいだよ」


 なんか大きな『く』の字に曲がった剣が店先に飾ってあった。

 出店が多くて、市場のようだ。活気もあって、今の私が持っている所持金でも買えそうなものがチラホラある。

 こんなの見たことないし、使いにくそう…。

 自分の身長くらいあるのではないか?という大きさの『く』の字に曲がった剣を持ちあげてみる。


「これ、買っちゃう??おもしろくね?」


「いらないでしょ!?ていうかなんでそんな大きなものが持てるの!?」


「ちぇ…。ちょっと言っただけなのに。じゃあこっちは?」


「それもいらない!それ鞭でしょ!?ありちーに叩かれたら裂けちゃう!死ぬよ!」


「武器なんだから殺していいじゃん」


「あ、確かに…」


 武器なんだから相手を倒すためにあるのに…変な奴。

 そう思って私はぷるぷるを置いて次の店を見つけた。


「おぉー!きれい…」


「魔石屋さんだね…僕も見るのは初めてだよ」


「そうなの?」


「そうだよ。そもそも魔石なんて基本魔物の死体からドロップするアイテムなんだ。仮にスライムから魔石が出るとしても、その頃には僕死んでるし」


「この石キレイじゃない?」


「聞いてる?」


「ほら、ぷるぷるにピッタリじゃん」


 水の雫の形をした青いブローチが目に留まった。青くて水。スライム。ぷるぷるみたいでいいんじゃないかな。


「聞いてる?…はぁ。そうだね。僕どっちかって言えば水色っぽいし…合うんじゃない?」


「お友達にプレゼントかい?いいものを選んだね。それは魔力アップの魔石だよ。水の精霊の加護がある貴重な石なんだ」


 売店のおばあちゃんが声をかけてきた。


「魔力アップ!?それって、魔法がたくさん使えるの?」


「そう聞いてるよ。水の精霊との相性が良ければ精霊の加護も受けられる貴重な石さね」


「魔法がたくさん…」


「ダメだよ。もう回復屋さんはやらないって言ってたじゃん」


「わ、わかってるけどどうせなら使えた方がよくない?しかも精霊の加護までついてくるんだよ??」


「聞いてた?相性が良ければって今言ってたじゃん?僕が相性がいいと思う?相手は水の精霊だよ?僕スライムだよ?どう見ても敵じゃない?」


「水でしょ?どっちも水やん!いけるっしょ!おばちゃん、これください!」


「あら、買ってくれるのかい?ありがとうよ。10シルバーだよ」


 私は青い宝石を受け取ると、自分の胸につけてみた。

 特になにか変わった感じはしないけど…なんかでも可愛い!


「ぷるぷる!払っといて!」


「えぇ!?勝手に決めて…はい。これ代金です」


「え?あ、あぁ。ありがとうよ。わたしゃてっきりあのお嬢ちゃんがあなたにプレゼントすると思ってたのに…はて??」


「いいんです。気にしないでください。そういう人なんです。それじゃ」


 ぷるぷるは困惑しているおばあちゃんに頭を下げると走ってこちらに来た。

 私は奥の方にある小綺麗な建物の前にいた。


「ありちー!そんな、早く行かないでよ…僕…いや、この身体運動が得意じゃないから走ってばかりいると疲れちゃって…。こんなところで何見てるの?」


 外の看板に貼ってある紙を見て、私は立ち止まっていた。


「家…だって」


「家!?そんなの今持っているお金じゃ買えないよ!いくらすると思ってるの!?」


「白金貨10000枚とか?」


「高いよ!!それだけお金あればお城が買えるよ!どんな家を買おうとしてるんだよ!」


「値段なんて見てないもん!!家は…広くて…ベッドがふかふかな家?」


「広すぎだよ!夢が大きいのか小さいのかわかんない!そもそも、いくらの家を見てたの!?」


「ん」


 私は目の前にある張り紙を顔でクイっとして一歩下がった。

 ぷるぷるがブツブツ言いながら張り紙を見に来た。


「白金貨3枚…」


「高い?安い?」


「え?…高い…のかな。だって300ゴールドだよ?白金貨3枚って。僕らの手持ちだって残り2ゴールドくらいしかないだろうし…全然足りないね」


「まだジャラジャラしてるよ?足りないの?」


「今持ってるのはシルバーが多いからね。白金貨の価値は全然ないよ」


「色が違うくらいなら塗る?」


「ほ、本気で言ってる?それ捕まっちゃうから絶対やらないでね?」


 笑いながら提案した私の両肩をおさえて、ぷるぷるは珍しく真剣に怒っていた。

 本気…いや、半分冗談で言ったんだけどこれはやめておこう。


「う、嘘だよ。冗談だって。次に行こう!」


「ありちーが言うと、どうしても嘘に聞こえないから怖いんだよ…あわぁ!急に立ち止まらないでよ」


 私は家の張り紙を見てからちょっと進んだ先の路地裏で不気味なテントを見つけた。人なんてほとんど来ていない場所に大きなテント。

 それはなぜか目を離せない何かを感じた。

 立ち止まった時に後ろからぷるぷるが背中にぶつかってくる。

 それでも、私はテントから目を離せなかった。


「あれ、なに?」


「あれは…なんだろう?この身体の記憶にもないや。気になるの?」


「うん…行ってみようよ」


 私はぷるぷるの手を取って路地裏に入った。

 近づいてみても、何を売っている店なのかよくわからない。


「入ってみよ!」


「え!?ちょ、ありちー!」


 私は気にせず、テントの入口に掛かった布へ手を伸ばした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。