第45話 測る者、測られる者
連邦が形になって、一年が過ぎた。
街は五千の民で賑わい、霧の回廊を通って、隊商が定期的に出入りするようになっていた。
回廊のことは、少し説明が要る。俺は聖剣で霧を張れるが、同時に、霧に一本の道を通すこともできた。連邦が認めた者だけが、精霊銀の通行証を持って、その道を歩ける。証は霧の中で淡く光り、進むべき方向を示す。証を持たない者は、方向を見失い、霧に呑まれて引き返すしかない。霧そのものが、街の関所であり、国境だった。
その街も、いよいよ自衛団を、正式に編成することになった。
誰を、どの隊に置くか。それを決めるには、まず戦力を、正しく把握しなければならない。俺は、ハルベルから運んできた測定用の水晶を、訓練場の中央に据えた。
「一人ずつ、手をかざしてくれ」
俺が言うと、若い連中が、わらわらと集まってきた。
◇
「俺からだ」
真っ先に名乗りを上げたのは、ヴァイスだった。
白銀の髪を掻き上げて、ずかずかと歩み出る。水晶に、手を置いた。
淡い光が、水晶の内側を駆け抜けた。そして、宙に、文字が浮かぶ。
『──【ヴァイス】 一九歳 魔族』
『腕力:64』
『耐久:52』
『敏捷:48』
『器用:32』
『魔力:44』
『総合戦闘力:240』
『ギフト:【剛角】』
『角に魔力を通し、身を強化する』
『スキル:大剣術(上級)/体術(中級)/咆哮(中級)』
「……二百四十。Aランク、か」
ヴァイスが、自分の数値を見て、ぼそりと呟いた。
「立派なもんだ」
ガルドが、腕を組んで頷いた。
「その歳でAに届く奴は、そういない。魔族の身体能力を差し引いても、鍛えてる証拠だ」
ヴァイスは、まんざらでもない顔をした。だが、器用の欄で、目を止めた。
「……器用が、低いな。三十二」
「そこが、お前の伸びしろだ」
俺は言った。
「力は、もう十分ある。あとは、それを、どう使うかだ。ソラに教わってるだろう」
「……ああ」
ヴァイスは、少し悔しそうに頷いた。
◇
次々と、若手が測っていった。腕力自慢の魔族、素早い人族、いろんな数値が並ぶ。
そして、ソラの番になった。
「俺、こういうの、久しぶりだな」
ソラが、水晶に手を置いた。その瞬間、水晶の光が、ぶわりと膨れ上がった。
『──【ソラ】 一七歳 人族(勇者)』
『腕力:125』
『耐久:115』
『敏捷:90』
『器用:50』
『魔力:30』
『総合戦闘力:410』
「……よん、ひゃく!?」
ヴァイスの口が、開いたまま止まった。若手たちが、ざわめいた。自分たちの、倍近い数値。
だが、俺は、別のところに目を止めていた。
器用、五十。
以前のソラは、器用が三十だった。力任せの、考えない戦い。それが、五十まで伸びている。ヴァイスに稽古をつけ、「考えろ」と教える中で、自分自身も伸びていた。教えることは、学ぶことだ。ニックが、そうだったように。
(……こいつ、まだ上がるな)
腕力や耐久は、もう頭打ちだろう。だが、器用は違う。頭が、筋肉に追いついてくれば、ソラは、まだ強くなる。
「腕力、百二十五かよ……化け物だな」ヴァイスが、掠れた声で言った。
「でも、器用は五十だぜ」ソラが、頭を掻いて笑った。「兄貴に、いっつも言われるんだ。『お前は、頭が、筋肉に負けてる』って。──最近、やっと、ちょっとは、追いついてきたけどな」
◇
「次、私ですね」
フィオナが、進み出た。水晶に、手を置く。光が、静かに、しかし深く、脈打った。
『──【フィオナ】 一七歳 人族』
『腕力:19』
『耐久:24』
『敏捷:30』
『器用:35』
『魔力:134』
『総合戦闘力:242』
『ギフト:【魔導の申し子】』
『属性:全属性(旧・氷特化)』
『スキル:全系統魔法(上級)/精霊感応(達人)』
「……魔力、百三十四!?」
ニックが、水晶を、二度見した。
「お前、前は、百四じゃなかったか!?」
「百四でした。少し前まで」
フィオナが、平然と答えた。広間が、ざわめいた。魔力百四でも、この街の歴代最高値だったのだ。それを、さらに三十も超えた。
「属性、全属性って……」ニックが、目を丸くした。「お前、氷しか使えなかっただろ!」
「ええ。でも、今は違います」
フィオナが、指先を、くるりと回した。その指先で、水の珠、風のそよぎ、火花、淡い光が、順に生まれては消えた。氷だけだった少女が、今は、すべての属性を、手のひらで踊らせている。
「精霊たちと、繋がったんです。おかげで、器が、目覚めました」
フィオナは、ちらりと、俺を見た。そして、少しだけ耳を赤くして続けた。
「……ある人と、繋がったのが、きっかけですけどね」
ニックが、にやりとした。
「旦那ァ……」
「言うな」
俺は、先回りして遮った。
◇
ガルドが、水晶に手を置いた。
『──【ガルド】 三五歳 冒険者ランクB』
『腕力:44』
『耐久:47』
『敏捷:28』
『器用:34』
『魔力:22』
『総合戦闘力:175』
『ギフト:【不動】』
『バッドスキル:【古傷】』
『深手の後遺症。長時間の戦闘で急激に消耗する』
「……お、器用が、上がってるじゃねえか」
ガルドが、意外そうな顔をした。
「総隊長として、采配を覚えたからでしょう」
俺は言った。
「若い連中を、どこに置くか。どう動かすか。それは、剣を振るのとは、違う技術だ」
「なるほどな」ガルドは、苦笑した。だが、すぐに、その顔が曇った。「……で、こっちの、ろくでもねえのは、なんだ。【古傷】」
「腹の傷ですね」
俺は、静かに言った。
「あの傷は、消えない。長く戦えば、急に、力が抜ける。だから、あなたは、前で指揮を執る。斬り込むのは、若い連中の仕事だ」
「……はいはい」
ガルドは、溜め息をついた。だが、その目は、どこか安堵しているようにも見えた。もう、自分の身体で、全部を背負わなくていい。そういう場所に、来たのだ。
◇
セシリアも、ニックも、測った。
セシリアの魔力は、相変わらず高かった。回復と祝福の資質。そして、あの一行――『本来の位階は、まだ眠っている』は、もう消えていた。あの覚醒で、位階は目覚めたのだ。
ニックの斥候スキルは、達人のまま。索敵も、情報収集も、一段上がっていた。
「さて。──最後は、俺だな」
俺は、水晶に、手を置いた。
その瞬間、俺は、心の中で、剣霊の加護を、ぐっと、抑え込んだ。全能力に乗っている+二十を、表に出さないように。剣霊が、心得たように、力を、静める気配がした。
光が、収束していく。そして、数値が、浮かんだ。
『──【レイジ】 一九歳 冒険者ランクF』
『腕力:26』
『耐久:28』
『敏捷:34』
『器用:39』
『魔力:20』
『総合戦闘力:147』
『ギフト:【自己強化(大)】』
『自己を強化する。発動中、能力が上昇』
◇
「……百四十七?」
ヴァイスが、首を傾げた。
「Fランクにしちゃ、高えな。でも、まあ、そんなもんか」
俺は、内心で、少しだけ、息を吐いた。
本当の総合は、百九十七。剣霊の加護で、全能力に二十が乗っている。だが、それを抑えて、ギフト【自己強化】が働いた分だけ――百四十七に見せた。加護の存在は、水晶にも、出さない。
これでいい。剣霊の加護は、俺の切り札だ。聖剣を握れば、さらに跳ね上がる。──その底を、誰にも、見せる必要はない。たとえ、身内でも。手札は、伏せておくものだ。
「Fランクの登録のわりに、やるじゃねえか」
ヴァイスが、ふん、と鼻を鳴らした。
「この前の手合わせ、一撃も当てられなかったのが、ちょっとは、腑に落ちたぜ。……ちょっとだけな」
「そうか」
俺は、短く答えた。──ヴァイスは、百四十七で、納得している。真の値には、気づいていない。それでいい。
◇
その様子を、フィオナが、じっと、見ていた。
測定が終わって、俺が水晶から手を離すと、フィオナが、静かに、隣に来た。
「……レイジさん」
「なんだ」
「今の、抑えましたね」
俺は、答えなかった。
「わかるんです。あなたの、魔力の流れが、一瞬、内側に、引っ込んだ。──何かを、隠した」
フィオナの目が、まっすぐ、俺を見ていた。
「私、ずっと、あなたを、測ろうとしてます。付与品の魔力の謎。強さの、カラクリ。──でも、まだ、解けない。今も、あなたは、数字を、伏せた」
「……鋭いな」
「当然です」
フィオナは、少しだけ、唇を尖らせた。
「歴代最高の、魔力の器ですから。あなたの、魔力の機微くらい、読めます。──でも、その先が、読めない。数字は、見えるのに、その数字が、どういう仕組みで、出来てるのか。それだけが、どうしても、わからない」
彼女は、悔しそうに、しかし、どこか楽しそうに、笑った。
「……一生、かかりそうです。あなたを、測り切るのは」
「なら」
俺は、言った。
「一生、測っててくれ」
フィオナの、頬が、ぽっと、染まった。
「……っ、それ、どういう意味ですか」
「言葉のとおりだ」
「……ずるいです」
フィオナは、俺の肩に、こつん、と頭を預けて、それ以上、何も言わなかった。
◇
「──で。最後に残ってるのは、あんただけだな、魔王」
ガルドが、輪の外に立つ、黒い外套の男を見た。
魔王は、腕を組んで、測定を、静かに眺めていた。
「俺は、測るまでもない」
「そう言うなよ。参謀殿の実力、みんな、知りたがってる」
「……この水晶が、保たんぞ」
「大げさな」
「まあ、いい」魔王は、微かに笑った。「見せてやろう」
魔王が、歩み出た。ヴァイスたち魔族の若者が、さっと、道を空けた。かつての王への、自然な敬意だった。若い連中にとって、この男は、四十五年、盾になり続けた、生ける伝説なのだ。
魔王が、水晶に、手を置いた。
「まず、これが、地の値だ」
淡い光が、駆け抜ける。数値が、浮かんだ。
『──【魔王】』
『腕力:95』
『耐久:90』
『敏捷:85』
『器用:70』
『魔力:110』
『総合戦闘力:450』
「よん、ひゃく、ごじゅう……!?」
ヴァイスが、絶句した。ソラの四百十すら、超えている。しかも、これで──
「地の、値……? これで、素なのか……!」
◇
「そうだ。何も、纏っていない、俺の値だ」
魔王は、静かに言った。
「だが、俺は、常に、これに、身体強化を、乗せている。眠っている時も。飯を食っている時も。──四十五年、一度も、解いたことがない」
「なんで、そんな……」
「いつ、襲われても、いいようにだ」
魔王の声が、低くなった。
「俺が倒れれば、民が死ぬ。だから、俺は、常に、臨戦だ。魔族の魔力は、それを、可能にする」
彼は、水晶に、手を置いたまま、目を閉じた。
「見せてやる。俺の、常の値を」
その瞬間。
水晶の光が、内側から、爆発的に膨れ上がった。数値が、駆け上がっていく。四百五十。五百。五百五十――
ぴしり、と、音がした。水晶の表面に、亀裂が、走った。
『測定範囲を、超えています』
そう浮かべて、水晶は、力尽きたように、沈黙した。ひびの入ったまま。
◇
「……壊れちまった」
ニックが、呆然と呟いた。
「五百八十だ」
魔王が、手を離した。
「地の四百五十に、身体強化を、三割。それが、俺の、常の値だ。──人族の器では、到底、届かない領域だが」
彼は、少し、疲れた顔で、笑った。
「それでも、俺は、民を、守りきれなかった。三万が、五千になるまで。力があっても、一人では、限界がある。それを、四十五年かけて、思い知った」
その言葉に、訓練場が、静まり返った。五百八十という圧倒的な力。それを持ってしても、守りきれなかった民。──その重さが、全員に、伝わっていた。
そして、魔王は、ふと、フィオナに、目を向けた。
「──娘。お前の、魔力の値は、いくつだった」
「え? ……百三十四、ですが」
魔王の、眉が、上がった。
「百三十四、か」
彼は、少し、驚いたように、目を細めた。
「俺の、魔力は、百十だ。──器だけなら、お前は、俺を、超えているな」
フィオナが、目を見開いた。
◇
「私が……魔王を?」
「魔力の、器だけの話だ。総合では、遠く及ばん」
魔王は、静かに言った。
「だが、器というのは、伸びしろだ。俺は、もう、これ以上は、伸びん。歳を取りすぎた。──だが、お前は、若い。しかも、精霊と繋がった。その器が、どこまで広がるか、俺には、見当もつかん」
彼は、フィオナを、じっと見た。
「大事に、使え。その器は、この世界で、誰も、持っていないものだ」
フィオナは、しばらく、自分の手を、見つめていた。
そして、静かに、頷いた。
「……はい」
その隣で、俺は、思っていた。
フィオナの器が、魔王を超えた。それは、単なる、数字の話じゃない。──こいつは、まだ、伸びる。俺の盤面の、一番大事な駒が、まだ、底を見せていない。
心強い、と、素直に、思った。
◇
測定が、一段落した頃。
ケイルが、帳面を片手に、近づいてきた。
「レイジさん。ちょっと、ええか」
「なんだ」
「前から、気になっとったんやけどな」
ケイルは、狐目を、細めた。
「この街、いつまで、『連邦』『連邦』て、呼んどくんや」
「……名前か」
「そや。看板が、要るやろ。商売でもな、名前のないもんは、売れへん。よそと取引するにも、『どこそこの連邦』やと、締まらん」
彼は、帳面を、ぱらりとめくった。
「わし、考えたんやけどな。──ここは、精霊の地に、建った街や。霧に守られて、灯火が、灯っとる。精霊と、灯火。……『ミストリア』っちゅうのは、どや」
「ミストリア?」
「霧の、古い言い回しでな。『霧の中の、灯』っちゅう意味も、掛けとる」ケイルが、にやりと笑った。「霧に守られた、盤上の灯。──ミストリア連邦。呼びやすいし、覚えやすい。縁起も、ええ」
◇
俺は、その響きを、口の中で、転がした。
ミストリア。
霧の中の、灯。──精霊の地の霧に守られ、人族と魔族が、共に灯す、無数の灯り。
悪くない。むしろ、この街に、ふさわしい。
「いいな」
俺は、頷いた。
「ミストリア連邦。──それで、いこう」
「決まりやな」
ケイルが、満足そうに、帳面に、何か書きつけた。
「さっそく、よその街に、広めとくわ。『霧の向こうに、ミストリアっちゅう、新しい国が出来た』てな。──こういう噂は、早い方が、ええ」
「噂か」
「名前が、広まれば、それだけで、力になる」
ケイルが、狐目を、光らせた。
「『反逆者の集まり』やない。『ミストリア連邦』や。──ちゃんとした、国の名前がある。それだけで、よその領主も、無視できんようになる」
商人らしい、と、俺は思った。名前一つで、盤面が、変わる。
◇
その夜。
俺は、執務室で、まとめた記録を、見ていた。
ミストリア連邦の、戦力。魔王、五百八十。ソラ、四百十。フィオナ、二百四十二。ヴァイス、二百四十。ガルド、百七十五。セシリア、ニック。──そして、俺。表向きは、百四十七。
決して、弱くはない。頂点の武力なら、どんな国にも、引けを取らない。
だが、と俺は思う。数字は、盤面の一部でしかない。
王国には、まだ、底の知れない武力がある。噂に聞く、名だたる騎士たち。俺は、その実力を、まだ、直接は、見ていない。──見ていないものを、侮ってはいけない。正面から、ぶつかるのは、下策だ。
だから、盤面を組む。
「レイジさん」
フィオナが、入ってきた。もう、いつものように、当然の顔で。
「まだ、起きてるんですか」
「ああ。戦力を、並べてた」
「勝てそうですか」
「正面からは、無理かもしれない」
俺は、正直に答えた。
「相手の底が、まだ、見えないからな。──だが、正面から、ぶつかる気は、ない」
フィオナは、俺の隣に、椅子を寄せた。そして、記録を、覗き込んだ。
「あなたの数字。表向き、百四十七」
「ああ」
「本当は、もっと、あるくせに」
フィオナが、じとっと、俺を見た。
「……ずるいです。私にも、教えてくれないんですか」
「いつか、な」
「いつか、っていつですか」
「お前が、俺を、測り切った時だ」
フィオナは、むっと、頬を膨らませた。
「……絶対、測ってやります。一生かけて、でも」
その横顔を見ながら、俺は、少しだけ、笑った。
◇
翌日。
霧の回廊の方から、鈴の音が聞こえた。ケイルの隊商が、戻ってきた合図だ。
荷馬車を連ねて、狐目の商人が、上機嫌で戻ってきた。
「毎度! ただいま戻りました。──それと、レイジさん。さっそく、面白いことになってきたで」
荷袋から、一枚の紙を取り出す。よその街で出回っている、噂の記録だという。
「例の噂な。もう、王国の南半分に、広まっとる。『魔物討伐は、実は村を焼いてたらしい』『回収品が農具やった』──商人は、口が軽いからな。撒いた種が、勝手に育っとるわ」
「王国の反応は」
「火消しに、走っとる。『そんな事実はない』『魔族の虚言だ』と、御触れを出してな。──でもレイジさん、否定すればするほど、みんな『なんでそんな必死なんや?』と思う。王国は、自分で、噂に、真実味を持たせとるんや」
◇
「盤面通りだな」
俺は、呟いた。
「せやろ? で、ここからが本題や」
ケイルが、声を潜めた。
「ハルベルや。──ハルベル領主が、動きそうやで」
俺の目が、細くなった。
「詳しく」
「噂が、ハルベルにも届いた。領主は、王国の御触れも読んどる。『虚言だ』ってな。──でも、あの領主は、賢い。それに、あんたらを、近くで見てきた。ハルベルで、支部長の膿を出して、盤上の灯を作って、街を良くしていくのを」
ケイルが、俺を見た。
「領主は、知っとるんや。あんたらが、どういう連中か。──噂が、本当かもしれん、と思い始めとる。そして、もし本当なら、王国の側にいるのは、まずい、と」
◇
俺は、しばらく、考えた。盤面が、動き始めている。
ケイルが撒いた噂は、土壌を作った。王国は、火消しに追われ、自ら噂に信憑性を与えている。そして、ハルベル領主が、揺れ始めた。
あの領主は、灯火を、近くで見てきた男だ。だからこそ、判断できる。俺たちが、口先だけの反逆者ではないと。
「ケイル。ハルベル領主と、繋ぎを、つけられるか」
ケイルの、狐目が、細くなった。
「……おいおい。いよいよか」
「ああ。噂で、土壌は、できた。次は、証拠だ。──だが、いきなり突きつけはしない。まず、領主本人に、会う。真実を、見せる。そして、選ばせる」
俺は、窓の外を見た。霧の向こう、王国の方角を。
「王国の側に、残るか。それとも、こちら、ミストリアに、来るか」
第一のドミノが、倒れかけている。ハルベル。俺たちが、最初に、灯を点した街。──そこから、王国の切り崩しが、始まる。




