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『最弱の戦略家は復讐しない 〜俺を騙したパーティーを俺のクランで雇い直す。ざまぁより、そっちが"勝ち筋"だったので〜』  作者: めざし
盤上の勇者編

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第38話 決めてやる

王都から、早馬が、来たのは、俺たちが、ハルベルに、戻った、三日後だった。

『勅命』

『勇者ソラ、ならびに随行のクラン盤上の灯へ』

『先の、魔族領侵攻において、成果なきことを、遺憾とする』

『よって、再度、命ずる』

『十日以内に、魔族領へ、進軍し、魔王を、討つこと』

『今回は、王国騎士団より、五十名を、増派する』

『勇者ソラは、これを、指揮し、必ず、魔王の首を、持ち帰ること』

『なお──』

俺は、その先を、読んで。

手が、止まった。

『随行クラン「盤上の灯」が、任務に、消極的である、との報告を受けた』

『次に、同様の報告があった場合。──クラン登録を、抹消し、代表以下を、王命違反として、処断する』


「……来たか」

俺は、書状を、机に、置いた。

「なんて、書いてある」

ガルドが、聞いた。

「十日以内に、再侵攻。騎士団五十名を、増派。──そして」

俺は、その一行を、指した。

「次に、消極的な報告が、上がれば。──クランは、抹消。俺たちは、処断」

ガルドの、顔が、こわばった。

「……脅しか」

「脅しじゃない。宣告だ」

俺は、静かに、答えた。

「もう、王国は、隠す気も、ない。──『言うことを聞かなければ、殺す』と」

広間が、静まり返った。

そして、ニックが、掠れた声で、聞いた。

「……ソラは? あいつ、王都で、王様に、聞くって、言ってたよな」

「ああ」

俺は、頷いた。

「そして、答えを、聞いたはずだ。──だが」

俺は、書状を、見た。

『勇者ソラは、これを、指揮し、必ず、魔王の首を、持ち帰ること』

「王国は、まだ、あいつを、動かせると、思っている」


ソラが、ハルベルに、戻ったのは、その、二日後だった。

だが──様子が、おかしかった。

「……ソラ」

俺は、クランハウスの、前で、彼を、迎えた。

「王都は、どうだった」

ソラは、答えなかった。

馬から、降りて。

俯いたまま、立ち尽くしていた。

「ソラ?」

「……兄貴」

彼が、掠れた声で、言った。

「王様に、聞いた」

「ああ」

「『なんで、魔族と、戦うんですか』って。『あの村の人たちが、何をしたんですか』って」

彼は、顔を、上げた。

その目が、真っ赤に、腫れていた。

「そしたら、王様」

彼の、声が、震えた。

「──笑ったんだ」

「笑った?」

「うん」

ソラは、頷いた。

「『勇者よ、お前は、優しいな』って。『だが、魔族は、獣だ。獣に、情けをかける必要は、ない』って」

彼は、拳を、握った。

「俺、言ったんだ。『でも、あの人たち、畑を、耕してました』って。『子供も、いました』って。──そしたら」

彼の、声が、掠れた。

「『獣も、巣を作る。子も、産む。それが、どうした』って」

俺は、答えなかった。

「俺、それでも、食い下がった。『あの人たちは、俺たちに、何も、してません』って。そしたら」

ソラは、両手で、顔を、覆った。

「『勇者よ。お前は、考えなくていい。──考えるのは、王の仕事だ』って」


「……そうか」

俺は、静かに、言った。

「そんで、俺、部屋に、戻されて」

ソラの、声が、震えていた。

「先生が、来た」

「総騎士長か」

「うん」

彼は、俯いた。

「先生、心配して、来てくれたんだ。『どうした、ソラ』って。──だから、俺、話した。村のこと。あの子のこと。全部」

「……」

「そしたら、先生」

ソラの、肩が、震えた。

「──『よく、耐えた』って、言ったんだ」

俺は、その言葉に。

背筋が、冷たくなるのを、感じた。

「……よく、耐えた?」

「うん」

ソラは、頷いた。

「『辛かっただろう。だが、それが、勇者の、務めだ』って。『俺も、若い頃、同じことで、悩んだ』って」

彼の、目から、涙が、こぼれた。

「先生も、知ってたんだ。──魔族が、ただの、民だって」

「……」

「知ってて。それでも、『討て』って、教えてたんだ。俺に」

ソラは、その場に、崩れ落ちた。

「なんでだよ……なんで、教えてくれなかったんだよ……!」

俺は、その、震える背中を、見ていた。

そして、静かに、聞いた。

「……総騎士長は、なんと、言った」

「『これは、王家の、決めたことだ』って」

ソラが、掠れた声で、答えた。

「『俺は、王家に、仕える身だ。王家が、決めたことに、従う。それが、俺の、忠義だ』って」

彼は、顔を、上げた。

「そんなの、答えになってねえよ! なんで、間違ってると、分かってて、従うんだよ!」

「……」

「先生は、優しい人なんだ! 俺のこと、ずっと、気にかけてくれて! 飯も、多めに、盛ってくれて! なのに、なんで──」

彼は、また、俯いた。

「……分かんねえ。何も、分かんねえよ」


その夜。

俺は、執務室で、盤面を、組んでいた。

十日以内に、再侵攻。騎士団五十名。──そして、消極的なら、クラン抹消。

盤面は、詰みかけている。

だが。

「レイジさん」

フィオナが、入ってきた。

「ソラさん、ずっと、部屋に、こもっています。……食事も、取っていません」

「そうか」

「様子を、見に行ってあげては?」

「……いや」

俺は、首を、振った。

「今は、そっとしておいた方がいい」

「なぜですか」

「あいつは、今、自分の中で、戦っている」

俺は、静かに、言った。

「三年間、信じてきたものが、崩れかけている。──それは、あいつが、自分で、乗り越えるしかない」

俺は、ペンを、置いた。

「俺が、口を出せば。それは、また、誰かの言葉で、あいつの盤面が、決まることになる」

フィオナは、少し、考えた。

そして、頷いた。

「……分かりました」

だが、彼女は、去り際に、こう言った。

「でも、レイジさん。──人は、一人では、耐えられないことも、あります」

その言葉が。

正しかったことを。

俺は、翌朝、知ることになる。

「──レイジ!!」

夜明け前。

ニックの、絶叫が、クランハウスに、響いた。

「ソラが、いない!!」

俺は、飛び起きた。

客間へ、走る。

扉が、開いていた。

寝台は、空。荷物も、ない。──だが、聖剣が、置いてあった。

その、上に。

一枚の、紙。

『兄貴へ』

『ごめん。俺、一人で、行く』

『魔王に、もう一回、聞いてくる』

『先生が、何を、知ってたのか。王様が、何を、隠してるのか。──全部、聞いてくる』

『兄貴たちを、巻き込みたくない』

『クラン、抹消されるって、書いてあったろ。俺のせいで、そんなことに、なるの、嫌だ』

『だから、一人で、行く』

『聖剣は、置いていく。あれ、俺のじゃないから』

『──ソラ』


「……馬鹿が」

俺は、その紙を、握りしめた。

「レイジ、どうする!」ニックが、叫んだ。

「追う」

俺は、即答した。

「だが、あいつの脚は、速い。夜明け前に、出たなら──もう、山道に、入ってる」

「間に合うのか!?」

「間に合わせる」

俺は、腕輪に、魔力を、通した。

そして──気づいた。

魔力が、三十。剣霊の、加護。

以前なら、四つが、限界だった。だが、今なら。

腕輪。ミサンガ。護符。耳飾り。──そして、軍鼓の短剣。

五つ、同時に。

「……行ける」

俺は、立ち上がった。

「フィオナ、ニック、来い! ガルドさん、留守を、頼む!」

「おう!」

「セシリアさんは、待機! 怪我人が、出るかもしれない!」

「はい!」


俺たちは、山道を、駆けた。

腕輪の視界。ミサンガの、聴覚。護符の、遠見。──五つの感覚が、同時に、生きている。

以前とは、まるで、違った。

十歩先しか、読めなかった俺が。今は、三十歩、五十歩、先まで、読める。

「──レイジ! 速いぞ、お前!」

ニックが、驚いていた。

「加護のおかげだ」

俺は、答えた。

身体能力も、上がっている。以前なら、この山道を、この速度で、走ることは、できなかった。

「フィオナ、ついてこれるか!」

「なんとか!」

彼女も、必死で、走っていた。

そして、四半日後。

俺たちは、魔族領を、見下ろす、稜線に、着いた。

そして──腕輪の視界が、それを、捉えた。


谷の、底。

魔王の、街の、外れ。

ソラが、立っていた。

そして、その前に。

魔王が。

「……間に合ったか」

俺は、呟いた。

だが──様子が、おかしい。

ソラが、両膝を、ついている。

そして、魔王が、その頭に、手を、かざしていた。

「……何をしてる」

俺は、腕輪の視界を、絞った。

魔王の、手のひらから。

黒い、靄のようなものが、ソラの、頭に、流れ込んでいる。

「……!」

背筋が、凍った。

「──ソラ!!」

俺は、斜面を、駆け下りた。

無茶な、速度で。

腕輪と、ミサンガで、足場を、読みながら。転げ落ちるように。

そして、谷底に、着いた時。

「──やめろ!!」

俺の、叫びに。

魔王が、振り返った。

その顔に、何の、感情も、なかった。

ただ、静かに。

「……来たか」

「何を、してる!」

「見て、分かるだろう」

魔王は、答えた。

「支配だ」

俺は、その言葉に。

猛烈な速度で、盤面を、読んだ。

支配。──精神支配。

魔族に、そんな力が、あるとは、知らなかった。だが、あるのだろう。魔王という、種族の頂点なら。

だが、なぜ。

「……なぜだ」

俺は、聞いた。

「なぜ、今更。──あんたは、三度、俺たちを、見逃した。殺す気は、ないと、言った」

「そうだ」

「なのに、なぜ、ソラを──」

「殺していない」

魔王は、静かに、言った。

「支配しただけだ」

「同じことだろう!」

「違う」

魔王の、声が、低くなった。

「殺せば、王国は、次を、送ってくる。──だが、勇者を、奪えば」

彼は、ソラの、頭に、手を、置いたまま。

「王国は、最強の駒を失う」

俺は、その言葉に、気づいた。

──そうか。

これが、魔王の、勝ち筋だ。

軍事力では、勝てない。四十五年、削られ続けて、もう、戦う力が、残っていない。

だから、敵の、最強戦力を、奪う。

「……ずっと、狙っていたのか」

「いや」

魔王は、首を、振った。

「三度、見逃した。──その気になれば、いつでも、できた。だが、しなかった」

「なぜ」

「支配は、心を、壊すからだ」

魔王の、声に、初めて、痛みが、混じった。

「あの少年は、まだ、子供だ。何も、知らずに、駒に、された。──俺は、それを、二度、するのは、忍びなかった」

彼は、ソラを、見下ろした。

「だが、今日。──あの少年は、一人で、来た。俺の、前に」

「そして、こう言った」

魔王は、静かに、語った。

「『教えてくれ』と。『先生が、何を、知ってたのか。王様が、何を、隠してるのか』と」

「……」

「俺は、答えた。全部だ。四十五年の、すべてを」

彼の、声が、掠れた。

「そして、あの少年は、こう言った。──『じゃあ、俺は、どうすればいいんだ』と」

俺の、心臓が、跳ねた。

「『人族を、守りたい。でも、魔族も、悪くない。──俺は、誰と、戦えばいいんだ』と」

魔王は、ソラの、頭に、置いた手を、見た。

「あの少年は、迷っていた。──ずっと。ぐるぐると。答えの出ない場所で」

彼は、目を、閉じた。

「そして、俺は、思った。──なら、俺が、決めてやろうと」

「──ふざけるな!!」

俺は、叫んだ。

自分でも、驚くほどの、声で。

「あいつは、今、自分で、考えてるんだ! 三年間、誰にも、考えさせてもらえなかった、あいつが!」

俺は、拳を、握った。

「初めて、自分の頭で、迷ってるんだ! それを、あんたが、勝手に──」

「迷いは、苦しい」

魔王は、静かに、言った。

「お前は、あの少年の、顔を、見たか。──三日前、俺の前で、崩れ落ちた、あの顔を」

「……」

「今日も、同じだった。もっと、酷かった。──眠れていない。食べていない。ずっと、一人で、答えの出ない問いを、抱えている」

魔王の、声が、震えた。

「あれは、救いだ」

「救い?」

「迷わなくて、済む」

彼は、ソラの、頭を、撫でた。

まるで、子を、慈しむように。

「俺が、命じれば。この子は、迷わない。ただ、従えばいい。──楽になる」


「……それは」

俺は、絞り出すように、言った。

「王国が、こいつに、したことと、同じだ」

魔王の、動きが、止まった。

「王国も、そう言った。『考えなくていい』と。『考えるのは、王の仕事だ』と」

俺は、彼を、睨んだ。

「あんたの言ってることは、それと、何が、違う」

魔王は、答えなかった。

長い、沈黙が、あった。

そして、彼は、掠れた声で、言った。

「……違わないな」

「なら──」

「だが」

魔王は、俺を、見た。

その目に、深い、絶望が、あった。

「他に方法が、ないんだ」


「……俺には、時間が、ない」

魔王は、静かに、言った。

「王国は、五十の騎士を、送ってくる。次は、百かもしれん。──俺の民は、もう、五千を、切った。四十五年前は、三万いた」

彼の、拳が、震えた。

「守れないんだ。──どれだけ、俺が、強くても。一人では、五千を、守りきれない」

彼は、ソラを、見た。

「だから、勇者の力が、要る」

「……」

「卑劣だと、罵るがいい。だが、俺にはこれしかない」

魔王は、目を、閉じた。

「五千の民と、一人の、少年の心。──俺は、民を、選ぶ」

俺は、答えられなかった。

理解は、できた。

この男は、四十五年、削られ続けた。三万が、五千になった。守る手段が、もう、これしか、ない。

だが。

「……ソラ」

俺は、その、名を、呼んだ。

膝をついた、少年の。

「聞こえるか」

ソラは、答えなかった。

その目が、虚ろだった。黒い靄が、まだ、流れ込んでいる。

「ソラ!」

俺は、叫んだ。

「お前は、まだ、選んでない!」

その言葉に。

ソラの、指が、わずかに、動いた。


「……無駄だ」

魔王が、言った。

「支配は、完了する。あと、少しで──」

「ソラ!!」

俺は、遮って、叫んだ。

「聞け! お前は、まだ、自分で、選んでない!」

「……」

「聖剣は、お前を、拒んだ! なぜだ! お前が、まだ、何も、選んでいなかったからだ!」

俺は、一歩、踏み出した。

「今、ここで、他人に、決められたら。──お前は、一生、選べないままだ!」

ソラの、身体が、震えた。

「王国に、決められて。次は、魔王に、決められて。──それで、お前は、いいのか!」

「……ぁ」

ソラの、口から、掠れた声が、漏れた。

「お前が、俺に、言ったろ!」

俺は、叫んだ。

「『兄貴の言葉も、鵜呑みにするな』って言ったら、お前は、笑ったよな! 『だから、あんたを、信じられる』って!」

「……ぁ、あ」

「なら、今も、そうしろ! 誰の言葉も、鵜呑みにするな! 王の言葉も、魔王の言葉も、俺の言葉も!」

俺は、拳を、握った。

「──自分で、選べ、ソラ!!」


その、瞬間。

ソラの、目に。

光が、戻った。

「……に、い……き」

彼が、掠れた声で、言った。

「なに?」

魔王が、驚いた。

「馬鹿な。支配が──」

ソラの、手が、動いた。

震えながら。地面を、掴んで。

そして──立ち上がろうとした。

「……お、れ、は」

彼の、口が、動いた。

「まだ……えらんで、ない……」

その目が、俺を、捉えた。

真っ赤な、その目が。

「……に、いき」

そして、彼は。

一歩、前へ、踏み出した。

魔王の、手から、逃れるように。


「……なんだと」

魔王が、目を、見開いた。

「支配を、振り切った、だと? 完了寸前で──」

だが、その、驚愕は。

長くは、続かなかった。

魔王の、手が、動いた。

再び、ソラの、頭に。

「──させるか!」

俺は、駆け出した。

だが、届かない。距離が、ある。俺の脚では。

そして──

「──『氷結の楔』!!」

フィオナの、声が響いた。

稜線から。

全力の詠唱。

氷の槍が。

魔王の、腕を狙って飛んだ。

魔王は、それを避けなかった。

避ける必要がなかった。

氷の槍は、彼の、腕に、当たり──砕けた。

傷一つつけずに。

「……その程度か」

魔王は、静かに、言った。

だが──その一瞬。

彼の、注意が逸れた。

そして、その一瞬で。

俺は、間合いに入った。

「──ソラ!」

俺は、彼の、腕を、掴んだ。

そして、力の限り、引いた。

剣霊の、加護。腕力、十六から、三十六へ。──以前の、俺なら動かせなかった。

だが、今なら。

ソラの、身体が魔王の手から離れた。


「ニック!!」

俺は、叫んだ。

「おうよ!!」

ニックが、韋駄天で、飛び込んできた。

そして、ソラを、担ぎ上げた。

「走れ! 全速で!」

「言われなくても!!」

ニックが、駆け出した。

俺も、続いた。

背後で、魔王が、動く気配が、した。

だが──追ってこなかった。

俺は、走りながら、振り返った。

魔王は、その場に、立っていた。

俺たちを、見送っていた。

その顔に。

なぜか──安堵の、ような、ものが。

浮かんでいた、気が、した。


山道を、駆け上り。

稜線を、越えて。

俺たちは、ようやく、足を、止めた。

ソラは、意識を、失っていた。

だが、呼吸は、ある。

「……レイジ」

ニックが、荒い息で、言った。

「あいつ、大丈夫か」

「分からない」

俺は、答えた。

「支配は、振り切った。だが──完全に、消えたかは分からない」

俺は、ソラの、顔を、見た。

苦しそうに、眉を、寄せている。

うなされて、いた。

「……せんせい」

彼が、うわ言のように、呟いた。

「なんで……おしえて、くれなかった……」

「……ぁ、に、き」

「たすけて……」

俺は、その、額に、手を、当てた。

熱かった。

「……ハルベルへ、戻る」

俺は、言った。

「セシリアさんに、診てもらう。──急ぐぞ」


だが。

俺の、頭の中では。

盤面が、最悪の形で、動いていた。

魔王は、ソラを、諦めていない。

そして、王国は、十日以内の、再侵攻を、命じている。

つまり。

十日後。

俺たちは、また、魔族領へ、行かなければ、ならない。

魔王の、いる、場所へ。

支配を、狙う、相手の、前へ。

「……詰みかけてるな」

俺は、呟いた。

だが。

その時ふと。

魔王の、最後の顔が頭をよぎった。

安堵の、ようなあの表情。

「……なぜだ」

なぜ、あの男は。

支配を、振り切られて。

安堵したような顔を、したんだ。

その問いの、答えを。

俺は、まだ、掴めずにいた。

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