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『最弱の戦略家は復讐しない 〜俺を騙したパーティーを俺のクランで雇い直す。ざまぁより、そっちが"勝ち筋"だったので〜』  作者: めざし
盤上の灯火編

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第28話・幕間 盤上の灯(ステータス回)

支部長ジグムントが去って、七日。

新しい支部長が着任し、街は、少しずつ、日常を取り戻していた。

そして、その日。

クランハウスに、測定の水晶が、運び込まれた。

「──支部からの、貸与だそうです」

受付の職員が、困惑した顔で、言った。

「新任の支部長が、『盤上の灯の所属者は、支部まで測定に来なくてよい。水晶を貸す』と」

「へえ」

ニックが、口笛を吹いた。

「ずいぶん、下手に出てるじゃねえか」

「そりゃ、そうだろ」

ガルドが、鼻を鳴らした。

「前任者が、うちを潰そうとして、罷免されたんだ。同じ轍は踏みたくねえだろうよ」

俺は、その水晶を、静かに、見ていた。

支部の匙加減が、変わった。

だが──それは、匙加減が、こちらに傾いただけだ。仕組みそのものは、何も、変わっていない。

「……まあ、いいでしょう」

俺は、頷いた。

「使わせてもらいましょう。──全員、測定します」


『──【ガルド】 三四歳 冒険者ランクB』

『腕力:44』

『耐久:47』

『敏捷:28』

『器用:30』

『魔力:22』

『総合戦闘力:171』

『ギフト:【不動】』

『一度構えた足は、そう簡単には退かない』

『スキル:大盾術(上級)/大剣術(上級)』

『挑発(上級)/パーティー指揮(上級)』

『クラン運営(中級)/交渉(初級)』

「……俺、一しか上がってねえのか」

ガルドが、微妙な顔をした。

「三十四です。伸びる歳じゃありません」

「言い方!」

「ですが」

俺は、記録を、指した。

「スキルが、二つ、増えています。『クラン運営』と『交渉』」

「……そりゃ、書類仕事ばっかりだからな」

ガルドは、苦笑した。

「前は、剣振ってるだけでよかった。今は、伯爵家の家令と、話をしてる。……人生、分からんもんだ」

そして、彼は、少しだけ、目を細めた。

「なあ、レイジ。──『パーティー指揮』、上級になってるな」

「ええ」

「六年、中級のままだったんだぜ、これ」

彼は、水晶を、見つめた。

「お前が来てから、上がった。──お前の盤面を、隣で見てたからだ」


『──【セシリア】 二六歳 冒険者ランクB』

『腕力:20』

『耐久:26』

『敏捷:25』

『器用:31』

『魔力:62』

『総合戦闘力:164』

『ギフト:【聖光の加護】』

『祝福と回復の資質』

『※本来の位階は、まだ眠っている』

『スキル:回復魔法(上級)/祝福・中位(達人)』

『状態異常治癒(上級)/看破(上級)』

「あら」

セシリアが、目を丸くした。

「祝福が、達人に」

「あの十日で、ですね」

俺は、頷いた。

「祝福の使い方を知らないパーティーに入って、毎日、魔力を空にしていた。──あれで、伸びたんでしょう」

「ふふ。……苦労した甲斐が、ありました」

彼女は、微笑んだ。

そして、その記録の、一行を、見た。

『※本来の位階は、まだ眠っている』

「……この一行、ずっと、出るんです」

彼女は、静かに言った。

「六年前から。何度測っても、同じ」

「眠っている、とは」

俺の問いに、彼女は、首を振った。

「分かりません。教会でも、聞いたことがない表記だそうです。──ただ」

セシリアは、自分の手を、見た。

「時々、思うんです。私の光は、こんなものじゃない、と。……もっと、届くはずだ、と」

彼女は、そこで、言葉を、切った。

「……いえ。気のせいですね」

『──【ニック】 二一歳 冒険者ランクC』

『腕力:31』

『耐久:29』

『敏捷:54』

『器用:40』

『魔力:16』

『総合戦闘力:157』

『ギフト:【韋駄天】』

『敏捷の器が大きい』

『スキル:斥候(達人)/索敵(上級)/短剣術(中級)』

『話術(達人)/情報収集(上級)/罠設置(上級)』

『指導(初級)』

「──おおっ! 斥候、達人になってる!」

ニックが、飛び上がった。

「四年、上級で止まってたんだぞ、これ!」

「教育に回ったからでしょう」

俺は、答えた。

「人に教えると、自分の技を、言葉にしなきゃならない。──言葉にすると、初めて、分かる」

「……あー」

ニックは、頭を掻いた。

「そうかもな。『なんで、こうやって索敵するのか』って聞かれて、俺、答えられなかったんだよ。『そういうもんだ』としか」

彼は、記録を、見た。

「んで、必死に、考えた。なんでだろうって。……そしたら、分かったんだ。俺が、四年かけて、身体で覚えたことに、全部、理由があった」

彼は、笑った。

「レイジ。お前が、俺を教育に回した理由、それか」

「……さあ」

「絶対、そうだろ!!」

『──【フィオナ】 一七歳 冒険者ランクB』

『腕力:19』

『耐久:24』

『敏捷:30』

『器用:35』

『魔力:104』

『総合戦闘力:212』

──広間が、静まり返った。

「……は?」

ニックが、水晶を、二度見した。

「魔力、百四!?」

「……ええ」

フィオナが、自分の手を、見つめていた。

「そんな、馬鹿な。だって、お前、前は九十じゃ」

「九十でした」

彼女は、静かに、答えた。

「三ヶ月前まで」

広間が、ざわめいた。

魔力、百。

この街の測定記録で、それは──誰も、到達したことのない、領域だった。

歴代最高値は、フィオナ自身の、九十。

それを、彼女は、十四も、超えた。

「……フィオナさん」

俺は、その記録を、見つめた。

「あなた、この三ヶ月で、何回、魔力を空にしましたか」

彼女は、少し、考えた。

「……数えていません」

「毎日ですね」

「……ええ」

俺は、頭の中で、計算した。

貸し出しの、十日。詠唱を二十七回潰され、毎日、魔力を空にした。

精霊の地の、二日。半日、走りながら、意味のない氷を撃ち続けた。

そして、その後も。──彼女は、依頼のたびに、限界まで、使い続けていた。

「……器が、広がったんですね」

俺は、静かに、言った。

「文献に、あります。魔力の器は、限界を超えて酷使し続けると、わずかに、広がる。──ただし」

俺は、その先を、言い淀んだ。

「──ただし、普通は、命懸けです」

フィオナは、答えなかった。

代わりに、俺を、見た。

そして、少しだけ、笑った。

「……知っていました」

「え?」

「限界突破のことは、学院で、習いました。危険だから、やってはいけない、と」

彼女は、静かに、言った。

「でも、やりました」

「なぜ」

「あなたが、いない場所で」

彼女は、俺を、見つめた。

「私が、あなたに、守られていたことを、知ったからです」

広間が、静まり返った。

「詠唱を、二十七回、潰されて。魔力を、毎日、空にして。──私は、こんなに、弱かったのか、と、思いました」

彼女の声が、震えていた。

「だから、決めたんです。──次は、守られない、と」

俺は、答えられなかった。

「レイジさん。私は、あなたの盤面の上で、撃つだけの駒でした。それは、それで、心地よかった。……でも、もう、嫌なんです」

フィオナは、杖を、握りしめた。

「私は、あなたの隣に、立ちたい」

──沈黙。

そして、ニックが、静かに、頭を抱えた。

「……なあ、旦那」

「言うな」

「あれ、告白だろ」

「言うなって」

「レイジ、なんて答えると思う?」

俺は、その記録を、見ていた。

魔力、百四。総合、二百十二。

──Aランク相当。

「……フィオナさん」

「はい」

「無茶を、しましたね」

彼女の、眉が、動いた。

「それだけ、ですか」

「命懸けだと、言いました。文献にも、そう書いてある。──器が、壊れることもある」

俺は、続けた。

「今度から、限界突破をする時は、俺に、言ってください。──俺が、隣で、見ています」

フィオナの、目が、見開かれた。

そして。

その頬が、ゆっくりと、染まった。

「──っ、それは」

彼女は、慌てて、顔を背けた。

「……戦術的な、提案ですか」

「はい」

「……そうですか」

彼女は、俯いた。

そして、蚊の鳴くような声で、言った。

「……なら、いいです」


「──あかん」

ニックが、テーブルに、突っ伏した。

「ケイル。お前、半年に賭けてたよな」

「賭けましたわ」

隅で帳面をつけていたケイルが、狐目を細めた。

「……あかんな、これ。十年に、賭け直しますわ」

「賭け、変更できねえよ!」


『──【バッセ】 六八歳 元冒険者ランクB』

『腕力:16』

『耐久:20』

『敏捷:22』

『器用:32』

『魔力:16』

『総合戦闘力:106』

『ギフト:【健脚】』

『現役時の主力。今は見る影なし』

『スキル:気配察知(上級)/罠解除(上級)』

『観察眼(達人)/文書整理(達人)』

『記録解析(達人)』

「……ほう」

バッセさんが、丸眼鏡を、押し上げた。

「『記録解析』が、出とるのう。こんなスキル、初めて見た」

「新しく、生えたんですね」

「六十八にして、新スキルとはな」

老斥候は、くしゃりと、笑った。

「四十年、ただ記録をつけとっただけの爺じゃった。……それが、この半年で」

彼は、二階の資料室を、見上げた。

「記録が、人を、生かすようになった。──そしたら、スキルが、生えよった」

彼は、目を、拭った。

「……面白いもんじゃのう。人生ってのは」


そして。

「──最後に、俺です」

俺は、水晶に、手を置いた。

全員が、こちらを、見た。

光が、収束していく。

そして、数値が、浮かんだ。

『──【レイジ】 一九歳 冒険者ランクF』

『腕力:16』

『耐久:18』

『敏捷:24』

『器用:29』

『魔力:10』

『総合戦闘力:97』

『ギフト:【自己強化・小】』

『自己を、わずかに強化する』

──沈黙。

「……九十七」

ニックが、呟いた。

「三ヶ月前が、九十三だったよな」

「ええ」

「四しか、上がってねえのか」

「そうですね」

俺は、頷いた。

「一般的なF級冒険者の平均が、百二です。──まだ、届いていません」

広間が、静まり返った。

支部長を、失脚させた男。

伯爵家の依頼を、達成した男。

八十人を束ね、百人に増やし、この街の匙加減を、終わらせた男。

その数値が。

九十七。

「……ランク、Fのままかよ」

ニックが、掠れた声で、言った。

「はい」

「上がらねえのか」

「上がりません。測定値が、基準に満たないので」

俺は、淡々と、答えた。

「支部の基準では、俺は、Fランクです。──それは、たぶん、これからも、変わらない」


「……ふざけるな」

ニックの、声が、震えていた。

「なんだよ、それ。おかしいだろ。──お前が、Fだって?」

「事実です」

「事実じゃねえ!!」

彼は、水晶を、殴りつけた。

「この石が、間違ってんだよ! お前を、測れてねえんだ!」

「ニック」

俺は、彼の肩に、手を置いた。

「落ち着いてください」

「落ち着けるか! お前は──」

「──いいえ」

その時。

静かな声が、割って入った。

フィオナだった。

彼女は、水晶の前に、歩み出た。

そして、その数値を、じっと、見つめた。

「ニックさん。その水晶は、間違っていません」

「フィオナさん!?」

「これは、正確です」

彼女は、静かに言った。

「レイジさんの、腕力、耐久、敏捷、器用、魔力。──全部、正確に、測れています」

「じゃあ、なんで──」

「測る項目が、足りないだけです」

広間が、静まり返った。

フィオナは、水晶に、手を触れた。

「この水晶は、五つしか、測りません。腕力。耐久。敏捷。器用。魔力。──たった、五つ」

彼女は、俺を、見た。

「では、聞きます。レイジさんの、観察眼は、どこに出ますか」

「……」

「盤面を組む力は? 記録を読む力は? 相手の攻撃を駒に変える力は?」

彼女の声が、静かに、響いた。

「十日で誰も帰らない森を攻略する力は? 八十人の記録を頭に入れて、最適な依頼を割り振る力は?」

──誰も、答えられなかった。

「どこにも、出ません」

フィオナは、断言した。

「この水晶は、レイジさんの、一番大事なところを──何一つ、測れていない」

「──それに」

フィオナは、水晶の、一行を、指した。

『ギフト:【自己強化・小】/自己を、わずかに強化する』

「この、ギフトの説明」

彼女は、静かに、言った。

「『自己を、わずかに強化する』。──たった、それだけ」

彼女は、俺を、見た。

「でも、私は、見ました。あなたが、精霊の地で、四つの付与品を、途切れさせずに、使い続けるのを」

俺の、内心が、わずかに、引き締まった。

「付与品は、一つしか、維持できないはずです。二つ目を発動すれば、一つ目が消える。──それが、理です。なのに、あなたは、四つ、同時に、使っていた」

彼女は、続けた。

「私は、それを、『目にも留まらぬ速さで、掛け直している』のだと、思いました。──でも、あなたの魔力は、十。掛け直しているなら、とっくに、切れているはずだった」

彼女は、その一行を、指で、なぞった。

「つまり、この、『わずかに強化する』という、しょうもない説明の裏に──この水晶が、測れていない、何かがある」

彼女は、顔を上げた。

その紫の目が、静かに、燃えていた。

「レイジさん。あなたのギフトの、本当の名前は。──この水晶には、書けないんです」

俺は、答えなかった。

答えられなかった。

──やはり、この女は、あと一歩、だ。

だが、その一歩は、まだ、届いていない。彼女は「掛け直している」という、間違った前提の中に、いる。だから、真相の輪郭に触れながら、その正体には、届かない。

「……フィオナさん」

「答えなくて、いいです」

彼女は、微笑んだ。

「私が、解き明かしますから」

彼女は、水晶から、手を離した。

そして、俺の前に、立った。

紫の目が、まっすぐに、俺を、見ていた。

「レイジさん」

「……はい」

「私、決めました」

彼女は、静かに、言った。

「あなたを測る物差しは、私が作ります」

広間が、しんと、静まり返った。

「この、役立たずの水晶の、代わりに」

「……それは」

俺は、答えようとして。

そして、言葉に、詰まった。

心拍が、跳ねていた。

「……戦術的な、興味ですか」

「そうです」

フィオナは、即答した。

そして、つんと、顎を上げた。

「他に、何があるんですか」

その耳が。

真っ赤だった。

「──あかん」

ケイルが、帳面を、閉じた。

「二十年ですわ」

「延ばすなって!!」


その夜。

俺は、執務室で、一人、記録を、眺めていた。

『総合戦闘力:97』

Fランク。一般人以下。

──三ヶ月前と、変わらない。

いや、正確には、四だけ、上がった。

だが、その四に、意味はない。俺は、相変わらず、この街で、最も弱い。

「……そのはずなんだが」

俺は、自分の手を、見た。

三ヶ月前。俺は、精霊の地で、四つの付与品を、半日、使い続けた。

魔力、十。

普通なら、二つ目を発動した瞬間に、一つ目が消える。誰もが、そうだ。

だが、俺は、違う。

「……【自己強化・小】」

俺は、小さく、呟いた。

身体の芯に、いつもの、温かいものが、灯った。

十パーセント。

たった、それだけの、底上げ。

だが──それは、すべての強化の、外側にある。

祝福の上に、乗る。指輪の上に、乗る。付与品の上に、乗る。腕輪も、ミサンガも、護符も、耳飾りも──打ち消し合わず、全部、重なって、生き続ける。

だから、俺は、掛け直さない。一度、発動すれば、全部、乗ったまま、続く。

維持するだけの、わずかな魔力で。

「……なぜだ」

俺は、その事実を、初めて、正面から、考えた。

なぜ、俺のギフトは、外側にあるのか。

なぜ、俺だけが、積めるのか。

そして、なぜ──神様は、俺に、これを、与えたのか。


『すまんなあ。ほんまに、手違いでな』

『お前さんの分の、才能。もう、あらかた、配ってもうたんじゃ』

俺は、二年前の、あの老人の言葉を、思い出していた。

『けどな、これだけは、渡せる。……お前さんのこれ、区分が、おかしくてな。他の連中の強化とは、別の棚に、入っとる』

『しょうもない、端数の力じゃ。──じゃが、まあ』

『使い方次第、かのう』

別の棚。

すべての強化の、外側。

──だから、打ち消し合わない。だから、全部、乗る。

「……使い方次第、か」

俺は、乾いた笑いを、漏らした。

そして、その老人が、最後に言った言葉も、思い出していた。

『あー、それとな。ついでに言うとくが』

『下の国が、勝手に、一人、呼びよってな』

『儀式で、魂を、引っ張りよった。わしが、止める間も、なかったわ』

『行ってしまうのは、仕方ないから──餞別に、才能を、詰めるだけ、詰めたった』

『あの子が、あんまり、真っ直ぐな目ぇ、しとったもんじゃからな』

『……そのせいで、お前さんの分が、尽きたんじゃが』

そして。

『もし、どこかで、会うたら。──仲良う、してやってくれ』


俺は、ペンを、置いた。

二年間、忘れていた言葉だった。

いや、忘れていたのではない。

関係ないと、思っていたのだ。

才能を、全部詰め込まれた、真っ直ぐな目の少年。そんな存在が、この世界のどこかにいるとして。──俺とは、何の関係もない。俺は、Fランクの、最底辺だ。

だから、盤面の外に、置いていた。

「……そのはずなんだが」

俺は、窓の外を、見た。

盤上の灯は、目立ちすぎた。

半年で、支部長を一人、失脚させ、領主家の依頼を奪い、百人の冒険者を、支部の外に、束ねた。しかも、「才能で人を測らない」という理念で。

──それは、ランク制度への、否定だ。王国が、冒険者を管理するための、装置への。

王国から見れば、俺たちは、危険な組織だろう。いずれ、何か、仕掛けてくるかもしれない。

そこまでは、読める。

だが──なぜだろう。

その時、ふいに、二年間、盤面の外に置いていた、あの老人の言葉が、頭の中に、浮かんできた。

『才能を、詰めるだけ、詰めたんじゃ』

『もし、どこかで、会うたら。──仲良う、してやってくれ』

「……なぜ、今、これを」

俺は、呟いた。

盤面には、何の関係もない、記憶のはずだった。

なのに、その言葉は、消えずに、頭の隅に、残っていた。

まるで、これから、指されるべき、一手のように。

俺は、窓の外を、見た。

数えきれないほどの、街の灯り。

その、遥か遠く。

北西の空の、低いところに、一つ、見慣れない光が、瞬いた気がした。

──気のせいだろう。

俺は、灯りを、消した。

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