帰宅と就職
「俺ってやっぱり、さらわれたんだ…。」
「いいじゃねーか。そのおかげで、俺達は出会えたんだ!」
スーツ姿の男が白い部屋に現れたときにも驚いたが、それより、国が才能ある生産者を捕まえて監禁して、奴隷のように扱っているという事実は、俺に衝撃を与えた。
「それで、俺はどうなるんです?」
「いや、帰りたきゃ、帰っていいよ。俺が家まで連れてってやるぞ。」
「いいんですか?」
「ああ。今、俺の気分はとてもいいからな。それくらいお安いこった!」
「他の人たちは?」
「知らねえよ。俺も、お前1人なら見逃してくれるんじゃねーかっていう甘い考えで、提案してるんだぜ?」
スーツ男に腕を掴まれる。
瞬きの間に、周囲の景色は、家の近くの広場に変わっていた。
「ほらよ。後は帰るなり、好きにしな!」
男は背を向けると同時にそれだけ言い残し、ふっとろうそくの火が消えるようにいなくなった。
俺は、真夜中の道を家に向かう。
先に母への連絡も忘れない。
家に着くと、もちろん母から帰りが遅いと怒られた。
事情を話しても、信じてもらえるかわからないので、とりあえず、謝る。
…逆にごまかしとか隠しごとはいらないと余計に怒られた。
仕方なしにありのままを話す。
父も母もすぐに、色々なところに電話をしていく。
そして、1時間後、俺の就職が決まった。
「天千里ってギルドに加入出来そうだ。明日、ユキと一緒に中央54区の事務所に行くように!」
「天千里って有名なギルドじゃないの?」
「ああ。ネームバリューはあると思う。給料も出るだろうし、何よりお前を囲ってくれそうだから、ここにした。ちょうどツテもあったからな。」
「そこに行くしかないの?」
「母さんも安全優先で、天千里でお世話になった方がいいと思うわ。」
「そっか。…わかった。明日、行ってみる。父さんも母さんもありがとう。」
ユウに明日は、事情を説明し、探索なしと言う連絡をする。
そして、いつも通り、睡眠学習を終え、次の日。
俺は、妹が、起こしに来るころには、すでに身支度を整えていた。
『存分に腕を振るってレベルを上げて下さいね。』
「わかってる。」
そして、中央54区の天千里の事務所へは、10時の時間に到着した。
「はい。お聞きしております。そちらの妹様の武器を作られたのが、お兄様ですね。当ギルドでも存分に腕を振るって下さい。」
ギルドの代表の女性は、軽い挨拶のあと、工房への案内の後、用意していた契約書を渡してくれた。
帰って父母と確認して下さいとのことだ。
「しっかりしたギルドだと思うよ!」
妹は、誘いのあったプロの事務所と比べているようだった。
『勤務時間内に作った物は、全てギルドへ売却すること。材料はギルド持ち。出来た物の価値によって、ギルドが値段を交渉。契約も悪くないと思いますよ。』
昼食は、ユキとファミレスで済ませた。
ユウにも連絡を入れる。
「天千里か…。わかった。」
ユウは何か、考えているようだった。
父と母も契約については、これくらいで良いと言っていたので、明日から早速、天千里のギルドに行くことにした。




