兄と妹
風呂場で泥を落とす俺。
パーティを率いて狩場で無双する妹。
夕食の下ごしらえをする俺。
イレギュラーモンスター雷馬が出現し、あわてて撤退する妹。
異空間牧場で、トレントと、マッドゴーレムにオーブを与える俺。
逃げられず、立ち向かう妹。
机に向かって、錬金術や鍛冶の勉強をする俺。
雷馬の素早さに徐々にパーティが削られる妹。
本格的に夕飯を用意する俺。
魔銀の刀と兄からもらったマナメタロッドを変形させた刀の二刀流で挑む妹。
夕食を作り終え、一息つく俺。
仲間の男子学生の盾を攻撃し、雷馬に遠隔衝撃波攻撃を当てる妹。
とりあえず、部屋に戻る俺。
衝撃波攻撃で、倒れた雷馬を倒しきる妹たち。
俺が家で、日常をすごしている間に、妹は、冒険譚の主人公のように、ギリギリの戦いから生還していた。
それを俺が知るのは、このあと。
妹から電話を受ける俺。
兄に電話をかける妹。
「どうした?」
「ちょっと、イレギュラーに出くわした。」
「イレギュラー?冗談じゃなくて?」
「冗談じゃないよ。」
「怪我とかしてないよな…。」
「怪我も大丈夫。」
「よかった。上手く逃げたの?」
「逃げられなかったよ。すんごい早いやつで!」
「じゃあ、どうやって助かったんだ?」
「兄貴にもらったマナメタルロッドで、不意をついて倒せた!」
「そうか…。冗談じゃないんだよな…?
」
「冗談じゃないよ。今日は、報告とかで遅くなるかも。」
「よくわわかんないけど無事なんだよな?」
「無事は無事!大丈夫。」
「そうか…。ならいいや。夕食は作ってあるけど…あ、それより、あんまり遅くなるようなら、報告は明日にしてもらえるようにお願いするんだぞ。」
「…わかった。」
そして、無言になる妹。
俺も、少し動揺しているのか、動悸が激しくなる。
お互い無言の時間。
「…武器さ、ありがと。」
妹の気恥ずかしさを押しての感謝のつぶやき。
残念ながらイマイチ状況がまだ飲み込めていない兄には届かなかった。
「…?なんか言ったか?」
「…なんでもない、なんでもないよ!気にしないで。10時までには、帰れるようにお願いしてみるから。」
「了解。」
ツー、ツーと電話が切れる。
俺は、ゆっくり電話をしまう。
「はあ。」
『なんのため息ですか?』
「いや、なんでも…あるのか?」
…妹の活躍にやっぱり嫉妬してしまう俺。
…武器を譲ってくれた兄に感謝する妹。
そんなふうにそれぞれが、それぞれへ気持ちをつのらせる夜だった。




