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底なしダンジョン学園にようこそ! なんて言われても困るんだけど(仮)  作者: 大沙かんな


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97.成長が異常なわけ

 敵を全滅させた後、戦った場所から少し離れたところに移動する。


(あらた)は座ってていいわよ、辛いんでしょ?」

「それじゃあ、お言葉に甘えて」


 周囲の警戒を他の四人に任せて、(あらた)はグテーっと座り込んだ。


 万能包帯は鎧の中まで勝手に入り込んで巻き付いてくれるし、多少の傷なら即座に治してくれる優れものだ。そして包帯を巻けば激しい痛みも抑えてくれる。値段が安いのもいい。


 でも大怪我を完治させるほどの治癒能力はないし、失った体力を元に戻すにはしっかりと休憩を取らないといけない。



「すごくたくさんの敵でしたね。私、ちょっとびっくりしちゃいました」


 (あらた)たちからしてみれば、このぐらいのことは今までも良くあったし、それほど驚くには値しない。だけど特別講習で知り合って、合流したばかりの(みのり)からしたら、びっくりするぐらいじゃ済まないほどの体験だったのだ。


「第零階層でゴブリンが大量に降って来るのを見てるじゃないの」

「はい、あれも驚きましたけど、敵が弱かったのでそれほどでもなかったんです」


 たしかにそれはその通り。初めてゴブリンの雨に出会った時は、男子たちが何もできないままに飲み込まれていったからね。だけどレベルが上がった今では、いっぱい出てくるだけで特に脅威ってわけではない。


「まだ一年生なのに皆さんがなぜそんなに強いのか、その理由が良く理解できました。後ろにいただけなのに、レベルが二つも上がっちゃったんですから」


 (みのり)の言うことは(あらた)たちにも納得できる。管理領域を第十階層まで実際に見てきたことで、普通だとどれだけ敵が少ないか、どれほど敵が弱いかを体感したのだから余計に。


 管理領域と比べると、この魑魅(ちみ)領域は圧倒的に敵が強い。その上、敵の数が多い。さらには獲物の取り合いなんか起こらないので、自由に全部狩ることができる。そりゃレベルが早く上がるのも当然のこと。


「せっかくレベルが上がっても学生証にはレベルが反映されてませんけどね。自慢できないのがちょっと残念です」

「そこは我慢してもらうしかないよ」


 (あらた)たち四人の学生証の表示は、まだ初心者(ノービス)、レベルだって一桁だ。管理領域に行ったのは行ったけれど、ほとんど敵を倒していないのだからこれも当然のこと。


 まだ行ったことないけど、中央奥ノ宮とやらに行けば鑑定して貰えて、学生証にもその内容が反映されるらしい。もしも必要ならば鑑定してもらいに行けばいいよね。



 レベルや経験値の話をしているうちに、退場の時間が近づいてきた。


 (あらた)たちのレベルアップが早いのは魑魅(ちみ)領域に紛れ込んだせい。これは本当にその通り。厳しいことも多いけど、良いことだって多いように思う。


「それにしても、どうやってこんな所に入り込めたんですか?」

「それが謎なんだよね」


 なんで魑魅(ちみ)領域に潜り込むことになったんだろう? (あらた)だって考えてみたことはある。誰かの陰謀なのか、それとも事故なのか。納得できる理由はまだ見つかってない。


「私は(あらた)に引きずり込まれたと思ってるけど?」

「それは少し言いすぎですけど、私もそうじゃないかと思ってます」


「えええ! ちょっと待ってよ。音羽(おとは)木綿花(ゆうか)魔巌洞(ダンジョン)に入ったのは僕より先でしょ? 引きずり込まれたのは僕のほうだよ」


「あら、そうだった?」

「私たちが最後のグループだったように覚えてますけど……」


「僕が最後だってば」


 あの時のことは間違いない。クラスの全員がそれぞれグループを組んで先に入ってしまい、誰とも組めなかった(あらた)は一人ボッチで残っていたんだから。


「そうだとしたら不思議ね」


 (あらた)だったら不思議じゃない、とでも言いたそうな音羽(おとは)


 本人から見ても変だと思うことはある。あの時、心の声さんに従っているうちに体の中から力が湧いてきて、気がついたらゴブリンを倒しまくっていた。


 今では気合をいれることで力が湧いてくるようになったけど、あの力は一体何なんだろう?


 自分の感覚としては武技みたいなもの? なんだけど。


 考え込みそうになる前に時間が来てしまい、みんなの体が転送の光に包まれた。



 ~~~~~



 (あらた)たち四人が栽培師の(みのり)魔巌洞(ダンジョン)攻略を進めているのと、ちょうど同じ頃。


 同じ一年辰組の武士(たけし)もまた、自分のグループの女子たち四人と組んで魔巌洞(ダンジョン)の第一階層にやって来ていた。


 武士(たけし)グループは全員がまだレベル三。とはいえ、敵の強さから考えるともう第二階層に進んでもいいレベルだ。それでもこうして第一階層でグループメンバーの戦闘技量を磨くことに集中していた。


「みんな、本当にオブザーバーで良かったの? (あらた)だったらクラブに入れてくれたと思うんだけど?」


 知らないうちに(あらた)たち四人がとんでもなく強くなっていた上に、三年生まで巻き込んでクラブを立ち上げることになっていた。


 それも驚きだったけれど、武士(たけし)にとってもっと驚きだったのは、三人の女子たちがそのクラブへの参加を見送ったことだった。なぜならクラブに入れば、それだけで強者のヘルプで安全にレベルがあげられるのだから。


「うん、とっても魅力的な話だったよね!」

「でも寄生虫みたいなのは嫌だから……」

「困った時は助けてもらえる、今はそれだけで十分だよ」


 彼女たちは真面目と言えばいたって真面目だし、変なヤツらと言えば全くもって変なヤツらだった。それもこれもみんな、武士(たけし)の「地道に行く」という方針に根差している。



 基本的にはそれで何も問題はない。ただ今朝になって、とある先輩から(あらた)のクラブに参加するようにと言われてしまったのだ。


 言われたのは、参加せずにオブザーバーになると決めた後のこと。今になって参加したいと言い出すのは、ちょっとタイミングが悪すぎる。


「それなら問題ないかな」


 ダメならあとは勝手にやってくれ。


 武士たけしはそう開き直って、ゴブリン狩りに集中することに決めた。




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