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底なしダンジョン学園にようこそ! なんて言われても困るんだけど(仮)  作者: 大沙かんな


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80.本気の殲滅

「凄まじいわね……」

「でもとっても綺麗ですよ」


 視界は完全に炎で埋め尽くされている。それでも(あらた)には炎の壁の向こう側で、今なにが起こっているのかがはっきりと()えていた。


 青い火の玉が四匹の巨大ゴブリンたちに集中する。壁まで追いつめられた巨大ゴブリンたちは何もできず、四匹ともすでに膝をついている。ゴブリンのいるあたりの地面はあまりの熱で真っ赤に染まり、まるで溶岩のように溶け始めている。


「そろそろ終わりだな」


 炎を上げる巨大ゴブリンたちの体が、一匹、また一匹と砂のように崩れていく。そして最後の一匹が崩れた時、やっと火の玉の魔法は止まった。


「ふう、ちょっとやりすぎました」


 肩で息をしながら、木綿花(ゆうか)がその場に座り込んだ。


 よくやったとその頭をポンポン叩くと、うれしそうに微笑む。


「あ、見て! 右の出入り口が開いたよ!」


 巨大ゴブリンが種切れになったのか、それとも木綿花(ゆうか)の魔法の威力を見て、これ以上のゴブリンをつぎ込んでも無駄だと悟ったか、どちらなのかは分からないけれど、どうやらこれで闘技場バトルは終了したらしい。


 最後の戦いは木綿花(ゆうか)がほとんど一人で戦ったことになる。その木綿花(ゆうか)はレベルが二つ上がり、残りのみんなは一つだけ上がっている。やっぱり経験値と頑張ったかどうかには何か関係がありそうだ。



 一度溶けてから冷え固まった地面は、まるでガラスのようにキラキラと輝いている。それでもなぜかビー玉とドロップアイテムは無事だった。


 しっかり拾って回収した後も、音羽(おとは)はまだ気を失ったまま。抱きかかえて運ぼうと、(あらた)が彼女に歩み寄った時、木工師の由樹(ゆき)から待ったがかかった。


「担架を作っておいたから、これで運ぼうか」

「こっちの方が傷に優しいもんね」


 担架といっても手で運ぶようなものじゃない。病院や救急車に積まれているような車輪つきの物だった。


 木工師、本人は何もできないなんて言っていたけれど、素材さえ豊富にあるならかなり万能に近い。



 (あらた)たちは右手の出入り口から闘技場を後にした。


 車輪付き担架(ストレッチャー)だと狭い通路は通れないんじゃないかと思ったけれど、まったくそんなことはなかった。半分折りたたむようにすると寝台部分が斜めになって、狭い通路でも簡単に通り抜けられるような工夫がされている。


 あんな短時間のうちにそんなギミックまで作り込んでいるとは。


「車いすになるようにしたかったんだけどね、ちょっと時間が足りなかったよ」


 その代わりに上の寝台が分離できるようになっているらしい。


「台車部分に木で板ばねを仕込んでみたんだけど、ちょっと硬すぎたみたいで効果が低いんだよね。もっといろんな種類の木材があれば性能を上げられるんだけど」


「そこは毛皮を使えばいいんじゃないかな?」

「それよりもお肉の端っこの、硬いスジの部分が良いと思うよ!」


 由樹(ゆき)の挙げた改良ポイントに、裁縫師の亜紗(あさ)や、調理師の陽菜(ひな)まで参戦し始めた。


「また栽培師だけ除け者……」


 そろそろ(みのり)は諦めて、別のところで勝負したほうがいいんじゃなかろうか。



 闘技場を出て通路を進んでいると、突然広い場所に出た。


「え? 草原?」

「あの祭壇の下は抜け穴になってたってこと?」


 抜け穴だったのか、それとも闘技場そのものが目的だったのか。理屈があるのか、そうでないのか。魔巌洞(ダンジョン)のことはまるで見当がつかない。


「あれ? 出入り口が消えちゃったよっ!」


 どうやら先ほどの通路は一方通行だった模様。出入り口が無くなってしまい、戻りたくても戻れない。


「次はどうする? 森に戻る?」

「戻るのはいいけど、森はどっちの方角なんだろう? というか、ここってどこ?」


「とりあえず近くの丘の上に登ってみようよ」


 高い場所から眺めてみても、周囲はただの草原だった。特に目印になるような地形もないし、どこなのか見当もつかない。頼みの綱の聖者の瞳もワープが絡むと何の役にも立たなかった。


 説明会で渡された地図には中央に森、その東西に草原が広がっていると記されている。方角は太陽である程度分かるけれど、今いるここは東の草原なのか、それとも西の草原なのか、どっちなのかちょっと検討がつかない。



「敵も見当たらないみたいですし、ここで少し休憩して食事にしませんか?」

「賛成~!」


 バーベキューにしたいところだけど、それはやめておくことになった。


 もしかしたらここは暴漢共が巣くっている拠点に近い可能性がある。煙が上がればそこから敵が繰り出してくるかもしれない。


 この特別講習に参加してからというもの、(あらた)たちのレベルは大きく上がっている。入った時はまだ(あらた)がレベル十、他の三人がレベル五か六しかなかったというのに、たった二日少しでレベル十六から十七になっている。


 同じくクラフター組もレべル四か五しかなかったものが、今ではレベル十三まで上がり、レベルの上だけならもう落ちこぼれ組とは言いきれない状態だ。


 それでも三年生の暴漢共と比べると、戦力は圧倒的に足りていない。暴漢共のレベルは最低でも二十。最高だと軽くレベル三十を超えているのだ。


 レベルだけじゃない。人数だって向こうは二十人、こっちはその半数以下の八人しかいない。その半数はクラフター組で戦闘力自体が低い上、音羽(おとは)が怪我で脱落した状態なのだ。


 もしも正面からぶつかったとすれば勝つのは困難。逃げることも難しい。


 ここはおとなしく、こそこそと狩りを続けるのが賢い選択と言えた。


 もちろんそれが可能かどうかは暴漢組次第。(あらた)たちには戦うという選択肢しか与えられていない。



――――――――――



若草(わかくさ)(あらた) 中級見習い十六→十七

 装備: 全身鎧、巨大棍棒、聖者の瞳


鳴神(なるかみ)音羽(おとは) 拳闘士十五→十六

 装備: 簡易防具、頑丈な篭手、頑丈な脛当、棍棒、ビキニアーマー(黄)


坂江(さかえ)木綿花(ゆうか) 巫子十五→十七

 装備: 簡易防具、無骨な槍、ビキニアーマー(白)、炎の杖(魔力向上小、炎魔法連射)、魔法のドレス(魔力向上小、炎耐性中)


不知火(しらぬい)都久詩(つくし) 剣豪十六→十七

 装備: 簡易防具、無骨な刀、ビキニアーマー(水色)


天坂(あまさか)陽菜(ひな) 調理師十二→十三

紅野(こうの)亜紗(あさ) 裁縫師十二→十三

白妙(しろたえ)由樹(ゆき) 木工師十二→十三

朝顔(あさがお)(みのり) 栽培師十二→十三




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