75.地下の闘技場
新たちが地下に続く祭壇を調べ始めたちょうどその頃、ゴブリン砦の焼け跡を調査していた十人の暴漢たちは目を覚ましていた。
暗くて小さな部屋、ほとんど明かりが入って来ない小さな窓、そして目の前には鉄格子。どうやらそこは地下の牢獄のようだ。
鎧は身に着けているけれど、手に馴染んだ武器はどこにも見当たらない。
牢屋の中には仲間が一人もいない。自分だけだ。どうしてこんなことになっているのか、全く思い出せない。
「おい、誰かいないのか?」
恐る恐る声をかけてみる。
「いるぜ」
「ここにもだ」
返事が返ってきた。
良かった。顔は見えないけれど、自分一人ではないみたいだ。
でもある意味では良くなかった。十人全員の返事が返ってきたのだ。つまり全員が捕まってしまっているということ。まだ拠点には半分が残っているけれど、恐らく助けに来ることは無いだろう。彼らとはそこまで仲良くはない。
少し会話をしてみて、自分たちに何が起こったのか、誰一人として覚えていない事も分かった。
これは何かの魔法なのか、それとも魔巌洞のギミックなのか。実際のところは何も分からない。それでも女子生徒たちや落ちこぼれの追手たちも、同じように捕まっているんじゃないかと思われた。
声をかけても返事がないので望みは薄いけれど、うまくすれば女子たちを助け出すことができるかもしれない。そう考えるとかなり元気が戻ってくる。
男子たち? 自力で頑張ってくれ。
しばらくすると、牢屋の番人と思われるゴブリンが二匹、牢の檻の前に立ち止まった。
「デロ」
檻の鍵が開けられて、外に引きずり出される。
こちらは武器がなくて素手だけど、鎧はしっかりと身に着けている。相手はゴブリン、それもたった二匹だ。武器を奪い取れば確実に勝てる。
そう考えたけれど甘かった。ゴブリンのくせにとんでもない怪力で、簡単に床に組み伏せられてしまった。
「シニタクナケレバ、オトナシクシロ」
たかがゴブリンにいいようにされるなんて屈辱だ。でも今は言われた通りにするしかない。
そのまま引きずられるようにして連れていかれた先は、まるで古代の闘技場のような円形の広場だった。武器が手渡され、そして闘技場の中に移動するように促される。
闘技場の向こうの端には八匹のゴブリンたちの姿が見える。
背丈は自分より少し小さいぐらい、かなり大きく見える。どうみても普通のゴブリンじゃない。
あのゴブリンたちと戦えとでもいうんだろうか?
上等だ! 武器さえあればゴブリンごとき、皆殺しにしてやる!
~~~~~
新たちは暗い地下の回廊を進んでいく。いくつかの曲がり角を越えて進むと、大きな部屋に出た。
「明かりが届きにくいですけれど、かなり大きな部屋みたいですね」
「天井も高いわね」
ここは何だろう、祭壇の先ということは、地下神殿か何かなんだろうか。
「うわ!」
八人全員が部屋に入ったところで、天井がいきなり眩しく光りだす。そのあまりの明るさに思わず声を上げてしまった。とてもじゃないけど目を開けていられない。
「ああ! 出入り口のところが閉じてるよ!」
入ってきた通路への入り口が、いつの間にか鉄格子のようなもので閉ざされていた。どうやら閉じ込められた様子。
目が慣れるにつれてあたりの様子が見えるようになってきた。ここは円形の広場、周囲にはまるで野球場のように観客席が用意されている。ただし観客は誰もいないし、野球場ほどの広さはない。
入ってきた場所の反対側には、同じように鉄格子が嵌められた出入り口のようなものがある。そして左右にはそれよりも小さな出入口のようなものが見える。
「もしかしてここって……闘技場でしょうか?」
そう言われてピンときた。ここはローマにある遺跡、コロッセオの中みたいな感じなのだ。
だとすると向かいの鉄格子、その奥から対戦相手が現れるに違いない。
予想通りだった。鉄格子が開き、中から巨大なゴブリンが一匹現れたのだ。
普通のゴブリンだと腰ぐらいの背丈、大きめのゴブリンでも胸元ぐらいまでしかない。それなのに目の前のゴブリンは新と同じか、それ以上に大きい。
その両手で大剣を握りしめ、そして体は金属の鎧に覆われている。完全にボス級だ。
――@×*?△ 種族:ゴブリン 職業:戦士
名前が文字化けしていて読めないけれど、やはり名前付き、ゴブリンのボスのようだ。
一筋縄でいく相手じゃないのは確実だ。新は全身に気合を入れて足を踏み出す。
「グワアアアァォォオオッ!」
と同時にゴブリンが吠え、そして新に向かって駆けだしてくる。
今までに出会ったボスは受け身というか、後の先というか、こちらからの先制攻撃を待っていることが多かった。それらと比べてこのボスはやたらと殺意が高い。
しかし気合で負けていたら話にならない。新もさらに気合を入れなおしてボスゴブリンに向かって走り出す。
ボスゴブリンが目の前に迫る。その血走った眼をはね返すように、新もまた目に力を込めて睨み返す。
スパァンッ!
視線の端で白刃がきらめき、プリーツスカートがふわっと宙に舞った。目の前のボスゴブリンは頭を失い、血がまるで噴水のように噴き出す。
またもや都久詩。戦場で彼女から目を離してはいけないのだ。
「恐ろしいわね……」
「初見殺しですからね。あれはいくらボスでも無理ですよ」
「えへへっ」
音羽と木綿花の言う通りだ。たとえ初見じゃないとしても、新程度の力で彼女と戦えば、気がつく前に首が飛んでいるに違いない。
さすがはボス戦だけあって、武器や防具がしっかりドロップしていた。大きめのビー玉と合わせてしっかり回収しておく。さらに嬉しいことに全員のレベルが一つ上がっていた。
「これで終わり……かな?」
「そうは思えないけど」
陽菜の言葉を否定しつつ、後ろを含めて四カ所の出入り口を見回す。どこも開いている様子はない。
やはり戦いは続くようだ。
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若草新 中級見習い十二→十三
装備: 全身鎧、巨大棍棒、聖者の瞳
鳴神音羽 拳闘士十二→十三
装備: 簡易防具、頑丈な篭手、頑丈な脛当、棍棒、ビキニアーマー(黄)
坂江木綿花 巫子十二→十三
装備: 簡易防具、無骨な槍、ビキニアーマー(白)、炎の杖(魔力向上小、炎魔法連射)、魔法のドレス(魔力向上小、炎耐性中)
不知火都久詩 剣豪十三→十四
装備: 簡易防具、無骨な刀、ビキニアーマー(水色)
天坂陽菜 調理師九→十
紅野亜紗 裁縫師九→十
白妙由樹 木工師九→十
朝顔穂 栽培師九→十




