72.連携技
「えええ? 今なにしたの!」
「なにって、クマーの回収だよ。やってみたら上手くいったよ」
丸太が回収できるなら、妖獣だって回収できるはず。都久詩が前に出た瞬間、突然そう思いついたのだった。
実際にやってみると簡単にできてしまった。あとは砂にならなければいいんだけどね。魔巌洞の中で出すのか、それとも外に出てからにした方がいいのか。それはどこかで試してみるしかない。
妖獣クマーは強力な敵だったらしく、たった一匹倒しただけなのに、クラフター組全員のレベルが六に上がっている。
「クマーのお肉! 絶対美味しい料理ができるよ!」
「毛皮は私が貰うわね。何を作ろうかな、やっぱりコートかしら?」
調理師の陽菜と裁縫師の亜紗が大喜びしている。
「みんなずるいです……素材だけじゃなくて畑だって収納してくれたっていいじゃないですか」
栽培師の穂が一人だけ拗ねているけど、いかんともしがたい。畑を収納したとして、どこにどうやって出せばいいんだろうか。
その後も妖獣クマーの襲撃は続き、都久詩、それと音羽
の手で簡単に狩られ、新にどんどん収納されていく。
妖獣クマー以外にも、妖獣シカーという巨大鹿や、妖獣ブターという巨大イノシシが出てきたけれど、そいつらも問題なく狩られて収納されていく。もちろん森の大木もバシバシ伐採されて、そこら中が切り株だらけだ。
妖獣を狩りまくったことでクラフター組のレベルはさらに上がり、今では全員レベル九になった。二年生後期のノルマ、第九階層への到達の推奨レベルは二次職レベル十二。もう少し頑張ればクリアできるかもしれないところまでこぎつけている。
気が付いたら新たち四人も全員レベルが一つ上がっていた。これで新と音羽、木綿花はレベル十二、都久詩はレベル十三だ。
「ねえ、今日はもう終わりにして食事にしない?」
「うん、そうしようよ! ボクもう疲れちゃった」
そう言われて時計を見ると、もうお昼の時間はとっくの昔に過ぎて、夕方になっていた。
「ごめんね、お肉集めが楽しくて、ちょっとはしゃぎ過ぎちゃった」
「おかげで毛皮もいっぱい集まったよ」
「材木もね。今なら家だって建てられるわよ」
「ああ、畑……」
若干一名、ちょっと悲しそうな顔をしている気がするけれど、おおむね楽しそうで何よりだ。
食事の前に周囲の木を由樹が伐採して、それを新が収納する。これでちょっとした広場が生まれる。森の中で休憩するのも気持ちがいいものだけれど、ある程度の広さがあった方が襲われた時に安心なのだ。
各々が携行食料を取り出し、手ごろな切り株に腰掛けようとした時、調理師の陽菜から待ったの声がかかった。
「みんなちょっと待って! クマーを一頭だけ出してもらえるかな?」
「うん、いいよ。でも何をするの?」
森に入って最初の頃に倒した妖獣クマーを一匹、魔法の鎧袋から出して地面に転がした。かなり大きめの個体だ。都久詩の斬撃のせいで首は半分以上ちぎれていて、ほとんど皮だけで繋がっている状態だ。
しばらく待っても砂のように崩れたりしない。しっかりドロップアイテムになっている様子に新は少しホッとする。
「うん、絞めたてって感じだね」
包丁を片手にスパスパと切っていく。あまりに素早すぎて何をやってるのか良く見えない。ちょっと方向性は違うけど、都久詩の剣術を見ているような気分になる。
「待って、陽菜! 毛皮と胃袋は私にちょうだい!」
「え? 胃袋も? 何かに使うの?」
「うん、なんだかピンと来ちゃったんだ~」
裁縫師の亜紗が妖獣クマーから取り出した胃袋を抱えて、何かを作り始めた。良く分からないけどなんだか楽しそう。
気づいたら木工師の由樹がテーブルらしきものを作っている。ノコギリなんて使っていないのに太い丸太が分厚い板に代わり、さらにテーブルへと変身していく。これがクラフターってヤツなのか。
「由樹、薪もお願いね」
「はいよ!」
そんな立派な丸太を薪にするなんてもったいない、なんて思ってしまったけれど、ここにはいくらでも生えていて取り放題なのだ。まったく気にする必要なんてない。
木工作業を見ているうちに、いつの間にか土のカマドのようなものが出来上がっていた。穂の仕業だ。結構背が高くてテーブルぐらいの高さがある。
栽培師っていうと田んぼや畑を作るだけだと思っていたのだけれど、畑を耕すだけでなく、土を盛ったり穴を掘ったり、いろいろなことができるらしい。
陽菜が出来上がったカマドに薪を並べ、背負い袋から取り出したフライパンを二つその上に置いた。
魔巌洞での特別講習にわざわざフライパンを二つも持ち込むなんて、クラフターっていうのはやっぱり普通の戦闘職とは生き方自体が違うらしい。
「あ、しまった、火を忘れちゃった……」
そしてどこか抜けているらしい。
「大丈夫ですよ、ほら」
木綿花が薪を一本拾い上げ、魔法で火をつけて渡すと、陽菜が嬉しそうに笑った。
「ありがとう、助かったよ!」
ちょっと目を離しただけなのに、由樹が作ったテーブルの上にはお皿が何枚も積み上がっている。もちろんお箸、さらにはコップまで用意されていた。
「椅子は使わないかな?」
「そうだね」
ここまでくれば新にも分かった。これ、クマー肉のバーベキュー大会だ!
テーブルの上に並んだ大きなお皿には、クマーの肉やモツが盛りつけられている。一切の打ち合わせなしでこんなものを一瞬で用意できるとは。正直な所、ちょっとクラフターってものを舐めてたよ。
「亜紗、そろそろこっちに来なさいよ」
「まって、あと少しなのよ」
「お肉なくなっちゃうわよ?」
「まって、まって! 今行くから!」
そういえば、ここで裁縫って何が登場するんだろう? テーブルクロス……ではなさそうだし、ナプキン? 鍋つかみ?
亜紗が何を持って来るのかと興味深く見守っていたら、彼女が手にしていたのはポシェットみたいな物だった。
なんだ、バーベキューとは関係なかったのか。
ちょっと騙されたような気分だよ。
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若草新 中級見習い十一→十二
装備: 全身鎧、巨大棍棒、聖者の瞳
鳴神音羽 拳闘士十一→十二
装備: 簡易防具、頑丈な篭手、頑丈な脛当、棍棒、ビキニアーマー(黄)
坂江木綿花 巫子十一→十二
装備: 簡易防具、無骨な槍、ビキニアーマー(白)、炎の杖(魔力向上小、炎魔法連射)、魔法のドレス(魔力向上小、炎耐性中)
不知火都久詩 剣豪十ニ→十三
装備: 簡易防具、無骨な刀、ビキニアーマー(水色)
天坂陽菜 調理師五→九
紅野亜紗 裁縫師四→九
白妙由樹 木工師四→九
朝顔穂 栽培師四→九




