69.衝突
助けを求めて新たちの元に駆け込んできた四人の三年女子生徒たち。その彼女たちを追いかけてきた男子たちは、三年生八人と二年生六人の合計十四人。手に手に武器を携えている。
「何か僕たちに用があるの?」
とりあえず新は男女を問わず、走り寄ってきた生徒たちに聞いてみた。
「おい、こいつらが一年生だろ」
「一緒に連れて行こうぜ」
追手の男子生徒が何か言っているが、新の質問に対する返事ではないようで、意味するところが良く分からない。だいたい想像はつくけどね。
こういう人たちが本当にいるんだ。そりゃステディとか固定グループを急いで組んで、護衛の男子を確保したくなるに決まってる。
「もう一度聞くけど、僕たちに何か用?」
「男はぶちのめせ、女は傷つけるなよ」
会話になってない。やっぱり魔物かな?
「ちゃんと可愛がってやるから、おとなしくついてきな」
「大事にしてやるからよ」
「ついていっちゃ駄目だよ! そいつら女の子を捕まえて、酷い事しようとしているんだよ!」
三年生の女子たちがそう叫びながら新の後ろに逃げ込んでくる。
何か大きな荷物を抱えているなと思っていたけれど、どうやらお弁当と水ボトルらしい。確かにそれを置いてきちゃうと命にかかわるからね。理解はできるけれど、なんだかこの場に不似合いな気がして面白い。
「おい、いいからそこをどけよ」
「今すぐどかないと死ぬことになるぜ」
もう一度だけ聞いてみてもいいけれど、それも面倒くさい。もう別にいいかな。
新は巨大棍棒を振り上げて、思いっきり踏み込みながら目の前の相手に全力で振り下ろす。
ぐしゃっ!
いやな音を立てて、目の前の相手がペチャンコになって潰れた。大量の血が噴水のように溢れて、霧になる前に新の体に降りかかってくる。
「な、なに……」
その隣にいた相手にも一発、全力で巨大棍棒を振り下ろした。
「ゴブリンが人間に化けてる! 殲滅だ!」
新がそう言い終わらないうちに、音羽と都久詩は動き出していた。一瞬にして二人の首が飛び、一人の胸に大穴が空く。
「な、な……」
腰が引けた追手に対して、炎の玉がまるで嵐のように襲い掛かった。
「うわ、熱っ! やめ、やめてくれっ!」
「水! 水をっ!」
「まったく新は。面倒くさいなんて言いながら、優しいんですから……」
確かに。木綿花よりも優しいかもしれないよね。目の前で燃え上がった追手たちを眺めていると、新の胸にそんな思いが浮かんでくる。
口に出したら怖いから黙っているけど。
混乱する追手たちにさらなる刃が振るわれる。逃げようとする者たちの足が鋭い蹴りで薙ぎ払われる。
あっという間に追手たちは倒され、砂のように崩れて消えていった。あとに残ったのはビー玉だけ。それも暗がりの中なので、どこに落ちているのか良く分からないといった具合。
片づけてから振り返ると、助けを求めて駆け込んできた三年女子たちは、四人とも腰を抜かして座り込んでいた。
「あなたたち、ほんとに一年生よね?」
「なんでそんなに強いのよ! まさか特侵科……」
「何意味の分からないことを言ってるのかしら。強いと思ったから助けを求めたんでしょ?」
「というよりも、私たちが弱かったらどうするつもりだったんでしょうか。どうせだからと道連れにでもするつもりだったんでしょうか」
音羽と木綿花の言うことはもっともだ。
「ご、ごめんなさい、パニックになってて判断がついてなかったんだ」
「言い訳になっちゃうけど、私たちは戦闘が苦手で……」
「それは本当にただの言い訳ですよね。苦手だからって戦わないのはただの逃げです」
やっぱり木綿花は手厳しい。彼女自身、ちょっと鈍くさいところがあるし、戦いは苦手だと言ってもいい。それでも頑張って戦っているから、余計に思うところがあるんだろう。
ちなみに新も運動は苦手だ。ただ心の声さんに助けて貰えているから、なんとなく戦えているだけだったりする。
「あ、そういう意味じゃなくて、職業が戦闘向けじゃなくて……」
「それ、どういう意味なの?」
話を聞いたところ、彼女たちの職業はクラフター系、つまりモノづくりを得意とする職業なのだそうだ。クラフター系だとレベルを上げても基礎体力が上がるだけ、戦いにほとんど影響しない上に、戦技を覚えることはできない。
転職するまでは普通にみんなと一緒に戦っていたのだけれど、クラフター系に転職してしまってからは見放されてしまい、落ちこぼれになってしまったのだとか。
仕方なくクラフター系の仲間とグループを組んで頑張っているけれど、やはり魔巌洞探索は厳しくて、あまりレベルを上げることはできないそうだ。
「ふむ。とりあえず特別講習の間だけでも、一緒に組んでレベル上げしますか? ずっと守ってくれと言われたら無理だけど、ちゃんと戦うというのなら構いませんよ」
「ずっと守ってなんて言わないよ! 最初がアレだったから信じて貰えないかも知れないけど」
「ほら、やっぱり優しいんですから」
「女たらしなのかもね」
断じてそんなことはない。
「私は天坂陽菜、調理師レベル五だよ」
「紅野亜紗、裁縫師のレベル四よ」
「白妙由樹、木工師。同じくレベル四、よろしく」
「朝顔穂です。栽培師、レベル四です」
四人とも二年生なら立派なレベルだけど、三年生なら見事に落ちこぼれだった。




