07.宝箱の中身
無造作に開けてしまった宝箱。
……何も起こらない?
「もう、音羽、脅かさないで下さいよ」
大丈夫そうなので、もう一つの宝箱も開けてみる。中から出てきたのは黒ぶちの眼鏡、そしてレモンイエローのブラとパンツ。
新は黒ぶち眼鏡を手に取った。女性用のブラとパンツに手を伸ばすわけにはいかないし。
「……なんだこれ。もっとこう、強そうな武器とか防具とか、便利な薬とか、そんなのが出ると思ってたよ」
レンズは無い。どうやら伊達メガネのようだ。そのまま黒ぶち眼鏡をかけてみる。
「ああ! 鑑定しないと呪われてるかも! って、もう好きにしなさいよ」
音羽がプンスカ怒るのも道理。眼鏡をかけると、それはすっと新の中に吸収されるように消えてしまった。
〈聖者の瞳、見えぬものを見ぬく眼鏡じゃの〉
「……大丈夫ですか?」
「特に問題はなさそう、かな」
見えないものが見えるようになったのか。音羽と木綿花の方を見てみる。
今までと変わりない紺ブレザーとライトグレーのプリーツスカート姿。どうやら新が想像したような力じゃなさそうだ。残念。
この分だとブラとパンツの方もあまり期待できないかも。
――ビキニアーマー 防御力が大きく向上する魔法の鎧。魅力と敏捷性にプラス補正。
「あ、鑑定できるようになったかも!」
このブラとパンツ、そこそこ良い物のようだ。
「それじゃ、私が貰うわね」
「木綿花にも意見を聞くべきでは?」
「サイズってものがあるのよ、言わせんな!」
怒られた。
まさに口は禍の元。長い間ボッチしてたから……ゆるして。
棍棒の方はただ大きくて頑丈なだけで、特にプラス補正などはついていない模様。
音羽と木綿花は重すぎ、大きすぎで使えないからいらないと言うので、新がありがたく貰っておくことにした。
手に取って振り回してみるとちょうどいい。最初から自分のものだったと勘違いするぐらいのフィット感。
「まだ時間があるけど、さらに奥に行ってみる?」
「もうすぐ制限時間ですし……ちょっとだけ引き返してみませんか?」
「何でまた……。あっ、そういうことね!」
巨大ゴブリンの部屋の入り口まで戻ってから外に出て、三十分に設定して魔巌洞に再突入する。
よし、いた!
先ほどの部屋の中央には宝箱、その上に座っている巨大ゴブリン。武器は持っていない模様。何だか涙目になっているように感じるのは気のせいか。
「いくぞ、やっほーっ!」
奇声を上げて突貫だ。
逃げ腰どころか、慌てて逃げようとする巨大ゴブリンに背中から襲い掛かる。
先ほどゲットした巨大棍棒がとってもいい仕事をしてくれた。かなり強くなった感。
宝箱から出てきたのは、白いビキニアーマー。
うん、横に並べて見なくてもわかる。たしかに大きさが違っている。
「……恥ずかしいから声には出さないでくださいね」
「出したら殺すわよ?」
はい、わかってます。
木綿花も無事にアイテムのゲットに成功、まだまだ時間は残っているので奥に進むこともできるけど、どうしようか。
「今日は頑張りすぎたし、ちょっと疲れたかな」
「先に進むなら、せっかくですからビキニアーマーを装備したいですよね」
「それじゃ、今日はもうお開きね。入り口に戻りましょうよ」
「そうしましょう。ここで着替え始めたら、新が使い物にならなくなっちゃうでしょうし」
木綿花がくすくす笑いながらそんなことを口にする。男子高校生というものを良く分かっていらっしゃる。
ただね、二人の瞳の奥に『¥マーク』が見えたような気はした。
いやもしかしたら、ブーメランみたいな海パン型アーマーが出るのを期待してるのかも。もしそうだったら、ちょっと怖いな。
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その翌朝。
新が教室に入ってみると、何だか人数が少ない。二十人クラスだと聞いていたのに、その半分くらいしかいない。それもなぜか女子ばかりな模様。
「おお、やっと男子が来てくれたか」
教室に一人だけいた男子が声をかけてくる。
「俺は磐瀬武士、よろしくな。もしかして男子は別教室なのかと焦ってたんだ」
「僕は若草新だよ。別の場所に集合なんて話は無かったと思うよ」
しばらくするともう一人、男子が登校してきた。教室の中を数えてみると十三人。七人も足りてない。一体何があったんだろうか。
さらに待っていると本鈴が鳴って、担任の先生が入ってくる。
昨日、いい加減な説明だけで新たちを魔巌洞に放り込んだ張本人、野島夏草先生だ。
相変わらずはち切れんばかりのスタイルをしておられるが、顔色がいささか悪い。
「おはようございます。みなさんに悲しいお知らせをしなくてはいけません」
やはり何かあったのか。
昨日の入学式の後、一年生の男子が行方不明になったそうだ。このクラス、一年辰組から七人、他のクラスから四人、合わせて十一人という大人数。
先生たちはその対応に追われて忙しかったらしい。
「もしも何か気づいたことがあったら、私じゃなくてもいいので、誰か教職員に連絡してください」
何か思い出したのか、音羽と木綿花は少し顔を伏せぎみにしていた。でも新には特に思い当たるフシは無い。
チンピラたち? あいつらのことはもう忘れた。
ここは魔巌洞という危険物がある学校だ。新たちだって充分注意をしていないと、いつ行方不明者の仲間になるか分からない。
気を引き締めてかからなければ。




