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底なしダンジョン学園にようこそ! なんて言われても困るんだけど(仮)  作者: 大沙かんな


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64.この領域の危険性

 (あらた)たちは最初の丘を降りて、次の丘に登った。


 登ってみると先ほどの丘よりも高い場所になっていたので、ちょっとだけ遠くまで見通すことができる。それでも草原全体を見渡すことはできない。


「やっぱりずっと草原が続いているわね」

「ここって地図でいうと、この東草原って場所でしょうか」


 地図の上では東に大きな草原、西に小さな草原、そして真ん中に森が広がっていることになっている。本来ならばその東草原のさらに東、キャンプ場のような拠点が点在する場所の近くに入場することになっていた。


「太陽があそこってことは、あっちが東よね。それならこっちの西の方に移動しない?」

「拠点を避けるわけですね」


 朝霞(あさか)姉妹、春陽(はるひ)穂乃香(ほのか)の話によれば、特別講習、補講の時には必ず、上位レベルの男子生徒たちと女子生徒たちの対人戦イベントが発生するということだった。


 恐らく今、そんなイベントが発生しようとしているのだろう。でも(あらた)たちにはそんな女子たちを助けに行く気はまったくない。なにより相手は三年生、二次職に転職しているのはもちろん、二次職レベル三十を超える者までいるのである。


 (あらた)たちだって全員が転職している。それでも(あらた)はまだレベル十だし、都久詩(つくし)はレベル六、音羽(おとは)木綿花(ゆうか)はレベル五しかない。


 レベルで大きく負けていて、さらに人数でも大きく負けているのだ。それを助けに行くなんて、そんな危険は冒せないし、そこまで増長していなかった。



「あ、あそこ、何か動いてるよ!」

「草が不自然に揺れてますね……」


 都久詩(つくし)が指さした方向、どうやら何かが潜んでいるみたいだ。


 (あらた)は聖者の瞳でその正体を探ってみた。


――ゴブリン 職業:戦士 レベル二十四

――ゴブリン 職業:戦士 レベル二十一

――ゴブリン 職業:戦士 レベル二十八

――ゴブリン 職業:戦士 レベル三十二


「やっぱりゴブリンだ、レベル二十から三十ちょいぐらいってとこ」

「ちょっと! レベル高くない? これはそう簡単ではないわね」


 いつもの狩場、魑魅(ちみ)領域ではゴブリンはどこまでもゴブリンで、職業やレベルが見えることなんてそうそうない。やはりここはいつもの領域とは違うのだと実感できる。


 心の声さんが騒いでいないし、もしかしたらあまり危険は無いのかもしれないけれど、それでも無理は禁物だ。レベル二十差はさすがに大きい。大きすぎる。


「逃げた方がいいでしょうか? それとも一度ぶつかってみますか?」


 そんなの、簡単に判断できるわけがない。


 それにしてもなんでこんなに敵のレベルが高いのか。普通の一年生や二年生に対処できるわけがないじゃないか。三年生の成績不良者だって二次職の一桁レベル前半なのだ。こんなの、成績不良者を(まと)めて殺しに来てるとしか思えない。


 三年生の成績上位者なら対処できるのかもしれないけれど、彼らは率先して助けてくれるわけじゃない。どちらかというと足を引っ張る方の存在なのだ。


 つまり学校は(あらた)たちに死んで欲しいってこと?


 なぜ? なんのために?


「なんだか腹が立ってきたわ。しっかりレベルを上げて、あの夏草(なつくさ)って女をブチ殺してやりたい気分よ」

「だよね!」


 音羽(おとは)都久詩(つくし)が荒ぶっておられる模様。


 ならば……


「よし、()ろうか」


〈その意気や良し。腹に力を込めよ〉


 心の声さんのゴーサインが(あらた)の中で響き渡る。



 ゴブリンたちは草むらに潜みながら少しづつこちらに向かってくる。いや、わざわざ隠れているんじゃない。背が小さくて腰ぐらいの高さしかない、だからちょうど草の陰に隠れているだけだ。


 その証拠にちらちらと草の隙間から姿が見えている。全然隠れようとしていないのだ。もしかしたら隠れているつもりなのかもしれない、でもどこにいるのかこちらからは丸見えだ。


 今目の前にいるのは全部で四匹。全身が鎧で覆われていて、両手には剣と盾。第三階層で戦っている奴らと同じような装備。


 ゴブリンが草むらから出てくる直前で、(あらた)は巨大棍棒を振りかぶって上から思いっきり叩きつけた。ゴブリンは盾を構えることもなく、その一撃を兜で受ける。


 ゴキッ!


 確かな手ごたえがあった。一瞬にしてゴブリンの体が砂になって消える。


 よ、弱いっ!


 レベルなりの硬さはあったけれど、それだけだ。盾を使うこともなく、棍棒攻撃を避けることもない、ただ力任せに踏み込んできただけ。


 右隣で音羽(おとは)の蹴りが鈍い音を立てた。左隣では都久詩(つくし)の日本刀がきらめく。瞬く間にゴブリンたちは砂になって崩れ、あとには輝くビー玉しか残らない。


「なに、こいつら……強いのはレベルだけ?」

「ちょっと硬いだけだったよ」


 レベルが高いのは分かった。でもただ突っ込んでくるだけで、駆け引きも何もしてこない。レベルなりの戦闘力はなかったといっていい。


「あ、レベルが上がったぞ」


 たった一回の戦闘、四匹のゴブリンを倒しただけで、(あらた)はレベルが一つ、音羽(おとは)たちは二つもレベルが上がっていた。


 戦闘力はそれほどじゃないけれど、やはりレベルだけは高いのだ。


 これってもしかして、ボーナスステージっていうやつじゃないだろうか。



――――――――――



若草(わかくさ)(あらた) 中級見習い十→中級見習い十一

 装備: 全身鎧、巨大棍棒、聖者の瞳


鳴神(なるかみ)音羽(おとは) 拳闘士五→拳闘士七

 装備: 簡易防具、頑丈な篭手、頑丈な脛当、棍棒、ビキニアーマー(黄)


坂江(さかえ)木綿花(ゆうか) 巫子五→巫子七

 装備: 簡易防具、無骨な槍、ビキニアーマー(白)、炎の杖(魔力向上小、炎魔法連射)、魔法のドレス(魔力向上小、炎耐性中)


不知火(しらぬい)都久詩(つくし) 剣豪六→剣豪八

 装備: 簡易防具、無骨な刀、ビキニアーマー(水色)



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