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51.暗闇

 いつどこからどんな敵が現れるのか分からない暗闇の中を、一歩一歩確実に進んでいく。


 戦闘は切り込み隊長の都久詩(つくし)、その後ろには遊撃として音羽(おとは)、そして木綿花(ゆうか)が続く。後方警戒のために(あらた)が最後尾だ。


「全身鎧で一番後ろっていうのも、なんか違和感あるなぁ」


 (あらた)だってこの並びが最適解だと思うけれど、入場(ゲート)の前で陰口を叩かれまくったことはやはり気になっている。


「私だってそうですよ。ビキニアーマーにキャミソールで防御力は一番上なのに守られている形ですから」

「私も腕と足に防具があるわよ? 一番軽装なのって先頭の都久詩(つくし)よね?」


 ポジションと防具がチグハグというのもあるけれど、それよりも武器の方が問題だった。どう見ても攻撃力が大幅に下がっているのだ。


 この魔巌洞(ダンジョン)第三階層は通路幅が狭いので、二人が横に並んで戦うのはかなり厳しい。狭いだけでなく天井も低いので、都久詩(つくし)の日本刀だと振りかぶったら上に引っかかってしまう。


 それでも日本刀なら突き技や横なぎが使えるだけマシだ。(あらた)の巨大棍棒だと取り回しが厳しすぎほぼ使い物にならないし、木綿花(ゆうか)の槍なんて方向転換すらままならない状態だ。


 どうしようもないので(あらた)は初期セットの棍棒、木綿花(ゆうか)はゴブリン魔女からドロップした魔法の杖を片手に持っている。そして空いている手にはペンライトを握って周囲を照らす。


 持ち替えた武器を軽く試しておく。木綿花(ゆうか)を見ると、炎の魔法がそこそこ(さま)になっていた。



「前が見えないよぅ……」

「ゆっくり進むしかないわね」


 都久詩(つくし)が自分のペンライトをペンダントのように首から下げているけれど、その程度じゃ明かりが足りないのだ。後ろから音羽(おとは)が照らしているけれど、都久詩(つくし)の体が影を作ってしまってあまり役には立ってない。


 ドタドタドタッ


 天井板の裏をネズミか何かが走り抜ける音がした。


「……ふう、緊張しますね」

「まったくね、嫌な場所だわ」


 床や天井には木の板が張られてるんだけど、あちこちで朽ちて剥がれた場所が陰を作っていて、どこから敵が現れるのか予測もつかない状況だ。後ろなんかペンライトで照らしにくいし、後をつけられていてもそう簡単には気づけないだろう。


 聖者の瞳で坑道を鑑定しつつ地図表示してみる。


 どうやら開始位置からあまり進んでいない模様。


 この階層に来てからというもの、まだ敵とはまったく出会っていない。


 四人とも実際に体験してみるまで、真っ暗闇ってだけでこんなに足が進まなくなるとは思っていなかった。



 設定だとたった三十分、体感だとたっぷり二時間以上過ぎたんじゃないかと思う頃、ようやく時間切れで外に出ることができた。


「何もしてないのに、なんだか疲れちゃったよ……」


 ずっと先頭を歩いていた都久詩(つくし)は、特に疲れがたまっている様子だ。


「片手が塞がっちゃうのは思っていたより厳しいですね」

「ヘッドランプを試してみない?」


 たしか購買にも売っていたはずだ。休憩がてら行ってみると安いものから明るくて防水性の高いものまで、色々な種類の物が並んでいた。


「軽くて明るくて電池が長持ちするのを選びたいわね」

「可愛いのがいいよ!」


 故障や電池切れもあるだろうし、予備も含めていくつか買っておくか。荷物にはなるけれど、レベルが上がったことで重量はあまり気にならないのだ。


 ついでにスプレー式のペンキ缶も買っておく。魔巌洞(ダンジョン)にはループ構造も多いし、用意しようと思っていたけどついつい忘れてしまっていたんだよね。



 他にもいくつか思いついた物を買い足して、もう一度魔巌洞(ダンジョン)の中へと突入する。


 今回は都久詩(つくし)に代わって音羽(おとは)が先頭だ。二人の後ろが木綿花(ゆうか)(あらた)なのは変わってない。


 ヘッドランプのお陰でかなり奥まで光が届くし、何より両手が空いたのがとても便利。


「あれ? おかしいな」


 入ってすぐに辺りを見回していると、(あらた)は異変に気がついた。


「どうかしましたか?」


 前を行く三人が一斉に振り返る。


「うわぁっ! 目がぁぁっ!」


 振り返った三人の額から強烈な光のビームが(あらた)の両眼を直撃した。ヘッドランプ、便利だけど慣れるまでは危険だった。


 しばらく待って、やっと視界が戻ってきた。まだヘッドランプの残像が三つしっかり残ってるけど、そこはもう我慢するしかない。


「で、(あらた)、何があったの?」

「いや、この階層に入った時にナイフで印を刻んだんだけどね、その印がここにあるんだ」


 スプレー缶は買い忘れていたけれど、この階層には木の柱や壁があったので、入った時と出る時にちょっとした印をつけておいたのだ。


「出る時につけた印と間違えてるんじゃない?」

「うーん、そうだったかなぁ……」


 そんなはずはないと思いながらも、絶対に間違いないというほど自信はない。


 でも印をつけるなんて慣れていないし、もしかしたら入った時と出た時で同じ印をつけてしまったのかも。


 今度は間違えないように、ペンキのスプレーで大きく印をつけておく。ついでのスタート地点という意味でアルファベットのSの字も書いておいた。さすがにこれで間違うことは無いだろう。



 一行は最初よりも早いペースで坑道の中を進んでいく。


「待って、前に何かいるわ」


 先頭の音羽(おとは)から声がかかった。


 事故を防ぐためにランプの光量を落としているから見えにくいけれど、何かが闇に潜んでいるらしい。


「ゴブリンかな?」

「分からないわね、何が来てもおかしくないわ」


 学校の授業では第一階層から第三階層までは、ゴブリンしか出てこないと教わっている。でも(あらた)たちはそんなことは信じていない。


 というよりも、学校の授業で習うのは普通の領域の話。ここは普通の領域じゃない、魑魅(ちみ)領域という名前の別の場所なのだから。


 敵が潜む暗闇を音羽(おとは)が強く睨みつけた。




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