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49.ぶら下がり

 夕方になり、(あらた)が一人で食堂に向かうと、春陽(はるひ)穂乃香(ほのか)の双子姉妹と出くわした。ちょうど魔巌洞(ダンジョン)でのレベル上げを終わって戻ってきたところらしい。


 おそらくと二人と同じグループの二年生だろう、五人ほどの女生徒と一緒の模様だ。初心者(ノービス)レベル十五から十七で、まだ二次職に転職していないところをみると、春陽(はるひ)たちがレベル上げを手伝っていると言っていた集団の模様。


「何よ、(あらた)。そんなに嫌がらなくてもいいでしょう?」


 なんだか嫌な予感がしたので挨拶だけして通り過ぎようとしたら、ものの見事に捕まってしまった。


 そのまま彼女たちと相席する。


「へえ、その子が例の一年生? なかなか可愛いじゃないの」

「見たところヒモ系?」

「ぼーっとしてるように見えるけど、中身は野獣なのかも。もう五人も女の子を落としてるのよね」

「きっと気づいたら、分からせられちゃってたって感じね!」


 まるで女子会のような、あけすけな会話が飛び交う。やっぱり嫌な予感は的中していたっぽい。



「みんなもう少し遠慮しなさいよね、まだ一年生なんだから」

「ごめんなさいね、(あらた)。こんな学校で暮らしていると、みんなやさぐれていくのよ」


「暇を持て余してる感じ?」


 今日の午後、一人でぼーっとしていたから強く感じるんだけれど、やっぱりやることがなさすぎるんだよね。


「それもあるけど、ねえ」

「こんな所に閉じ込められて、好きでも無い男のモノになるか、それとも死ぬか、どっちか選べ! みたいな話だからね」

「強いからって男に媚びたって死ぬときは死ぬし。意味ないわ」


 穂乃香(ほのか)の言葉通り、なんだか自棄(やけ)になっておられる模様。


 この学校、一年生は十二クラスあるけれど、どんどん生徒は減って行って、五年生では半分の六クラスぐらいになるそうだ。


 事故で亡くなる場合ももちろんあるけれど、大半は魔巌洞(ダンジョン)での行方不明。一年生はすでに十一名が行方不明になっているし、二年生も三十人ほどいなくなっているらしい。



魔巌洞(ダンジョン)に行くのをサボっちゃうわけにはいかないんですよね?」


「ええ、そうね。学年ごとに必須到達階層が決まってるから」

「サボってると強制的に補講に放り込まれるわよ?」


「補講かぁ……あれって行方不明者製造機……だよね」

「もうアレの話はやめてよ、トラウマになるから」


 トラウマって……どんだけヤバいんだろうか。ちょっと聞くに聞けない。


 この学校、真神原塾社では学年ごとに必須到達階層(ノルマ)が課せられている。ノルマ設定は単純で、半年で二階層分、一年間だと四階層分が必要だ。


 つまり一年生前期で第二階層クリア、後期で第四階層クリア。推奨レベルは一階層ごとに四レベルづつ上がっていくので、レベル換算すると十六前後、転職手前ぐらいってことになる。


 二年生前期だと第六階層のクリアが求められている。レベルにすると二十四。初心者(ノービス)レベル二十を突破して二次職に転職、その上でレベル四ぐらいになる必要がある計算だ。


 そのことは(あらた)だって知っていた。でも自分の今の状況から考えて、あまり気にしていなかったというか、ほとんど危機感を持っていなかった。


 だけどこうして二年生の先輩女子の話を聞いていると、詳しい事まで把握できたわけじゃないけれど、それでも入学したばかりじゃまだ分からないような、思っていたよりも厳しい何かがあるように思える。


 となると……クラブ活動も真面目に考えないといけないのかな?


 ちょうどいい機会だし、ちょっと聞いてみることにしよう。



「クラブ活動? 自分でクラブを作るならいいけれど、どこかに入るのはやめた方がいいわ」

「私たちの知る限りですけど、上位のクラブにはまともなところなんて一つもありませんよ?」


 隠密研究部の名前は出さずにクラブについて聞いてみたところ、春陽(はるひ)穂乃香(ほのか)だけじゃなく、他の彼女たちからも辛辣(しんらつ)な言葉が返ってきた。


「上級生のおもちゃにされて、飽きられて捨てられるだけだよね」

「上手く取り入っても、今度はおもちゃ同士で足の引っ張り合い? 不毛だわ」


 彼女たちの評価は辛辣(しんらつ)を通り越してかなりひどい。美味しい目もあるんだろうけど、根本的に下級生は上級生の奴隷のような扱いを受けるらしい。特に女生徒は足元を見られて、言葉にするのもはばかられるようなことになるそうだ。


 八強と言われる最上位のクラブは特に滅茶苦茶らしく、上級生よりさらに上、特侵科の生徒から捨て駒のような扱いをされるのだとか。


 確かにそうなりそうだ。レベルが低い下級生を入れたって、上級生にはメリットってあんまりないと思ったんだよね。興味はあったけど返事しないでおいて良かったよ。



「自分たちでクラブを作るっていいかもね!」

「固定グループをいくつか集める感じ?」

「いいわね、春陽(はるひ)穂乃香(ほのか)のステディ君にも入ってもらってさ」


 どうやら(あらた)たちのグループも引っ張り込んで、新しいクラブを立ち上げるという話が始まった様子。それってまさか、入学したばかりの一年生にぶら下がる気満々ってことじゃないよね?


 既存のクラブの話を聞いてかなりひどいと思ったけど、この人たちだって十分ガメツい感じ。春陽(はるひ)も一緒になって騒いでいるし。


「もうっ! 春陽(はるひ)もみんなも、あんまり勝手な事ばかり言わないのっ!」


 穂乃香(ほのか)がただ一人、苦い顔をしながら説教をしているけど、ちょっとまとまりがつきそうにないみたい。


 やっぱり人数が増えると、増えた分だけ面倒な事も増えていく。命がかかっているとなるとそう簡単には引けないし。


 僕らのグループは、まだしばらくクラブ無しでいいかな。




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