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46/55

46.得した人は

 ゴブリンの魔女。


 魅了の力でゴブリン界のアイドルにのし上がった妖婦。


 その魔力が籠った両眼が、しっかりと(あらた)(とら)えていた。


 (あらた)の周囲の空気が桃色を帯びる。


――そうよ、愛しい人。その衝動に身を委ねるの。


「な、んだ、これ……」


 妖しい言葉が(あらた)の体に(まと)わりつく。


 ゴブリンの魔女はその顔に微笑を浮かべると、着ていた服の肩ひもをずりおろし、その太ももを見せるように、大きくスリットの入ったスカートを持ち上げた。


――心配しないで、愛しい人。


(あらた)、どうしたの! しっかりして!」

「も、もしかして魅了の魔法……」


「ああ、なんて魅力的な声なんだ……こんなの、耐えられない……」


――耐えなくていいのよ、愛しい人。ただ、受け入れるだけでいいの。


 ゴブリン魔女が(あらた)に近づいてくる。


 ああ、なんてことだ! こんな、こんなっ!



「お前じゃないっ!」


 グシャッ!


 思いっきり叩きつけた棍棒がゴブリン魔女の頭にめり込んだ。


――な、なんで……


「ゴブリンに魅了される人間なんているわけないだろっ!」


 途中、おそらく魔法の影響で、音羽(おとは)木綿花(ゆうか)のとてつもなく魅惑的な声に惑わされそうになってしまった。我ながら本当によく耐えたと思う。


 だけど、それはそれ。もちろんゴブリンなんかには、これっぽっちも惑わされたりしていない。


 信じられないという顔のゴブリン魔女に、さらに棍棒を数発ぶち込むと、そのままサラサラと砂のようになって崩れて消えていった。


 あとに残されたのはビー玉と薄い布のドレス、そして短めの魔法の杖だけだ。


 頭の中に渦巻いていたちょっとエッチで危険な感情も、ゴブリン魔女と一緒に綺麗さっぱり消えた。それにしても危なかった。もしもあのまま惑わされたままだったら、仲間の美少女たちにどんな無体なことをしでかしていたか分からない。



「そうだ、都久詩(つくし)は? 都久詩(つくし)は大丈夫なのっ?」

「うわ~ん、痛いよぅ……」


 燃え上がっていた制服の火はもう消し止められていた。


 全身かなりのヤケドを負ったようだけど、命には別条ない様子。音羽(おとは)に手当てされながらベソをかいている。


「どうやら無事みたいでよかったよ」

「ほんと、どうなる事かと思ったわ」


 宝箱を開けてみると、中からはペンダントのようなものが出てきた。


――炎帝の護符(タリスマン) 炎の形の護符。特別な効果は無い。


「なんだ、それ……何か(いわ)くがありそうな名前なのに、まさかハズレとは」



 ゴブリン魔女のドロップアイテムの方も鑑定してみる。


――魔法のドレス ゴブリン魔女が着ていたドレス。魔力向上(小)、炎耐性(中)。サイズ自動調整機能つき。


――炎の杖 ゴブリン魔女が使っていた短い杖。魔力向上(小)、炎魔法連射。連射速度は使用者の能力に依存。


「ここで炎耐性かよ……」


 真面目な話、戦う前にこれが欲しかった。


 装備は頑張った都久詩(つくし)に渡したいところだけど、ゴブリン魔女のアイテムは魔法使い系の装備に見える。このグループだと巫女の木綿花(ゆうか)に合うんじゃなかろうか。



「ゴブリンが着てたから汚らしい服に見えたけど、こうして服だけを見るとそうでもないわね」


 汚らしい灰色かと思っていたけど、柔らかな白という感じ。


「良い物だというのは分かりますけど、デザインが少し破廉恥すぎるというか……」


 横乳だけじゃなく、腰まで切れ込んだスリット装備だからね。誰得だと思ってたけど、こうして木綿花(ゆうか)の物になったということは、得したのは(あらた)だったということか。


「自動調整で何とかならない?」

「スカート丈を短くして、キャミソール風に中に着ればなんとか……」


 せっかくの横乳もスリットも、制服の下に格納されて見えなくなってしまうらしい。やっぱり誰も得しなかったっぽい。



 酷いヤケドを負っていた都久詩(つくし)も、一度魔巌洞(ダンジョン)から出てしまえば大丈夫、元通りに完治して元気な姿を取り戻していた。


 都久詩(つくし)が持っていた布の切れ端は、木綿花(ゆうか)のドレスに吸い込まれたのか、消えてなくなっている。


「これで炎耐性、一人だけとはいえ手に入ったわね」

「あと二つ、できればあと三つ欲しいですよね」


「行っとく?」

「もちろん!」


 何がって? それはもちろんゴブリン魔女の再討伐だ。


 魔巌洞(ダンジョン)に入って大部屋に行ってみると、そこでは素手で裸のゴブリン(メス)が体育座りして涙目になっていた。


 宝箱は無い。


「ドレス無しかよ……よし、やっつけろっ!」

「この恨み、晴らさせてもらうわっ」


 恨みって、さんざん焼かれた恨みなのか、それともせっかく来たのにアイテムがない恨みなのか。魔法も使わず逃げ惑うゴブリン(メス)に、(あらた)たちは遠慮容赦なく襲い掛かる。


 なんだよ、せっかく炎耐性を手に入れたっていうのに、杖がないと魔法使えないのかよ……。瞬間移動も使えないようで、一瞬のうちにゴブリンは叩きのめされて砂になって消えていった。


 ゴブリン魔女の再討伐、アイテム的には残念な結果に終わったけれど、音羽(おとは)木綿花(ゆうか)はレベル五、都久詩(つくし)はレベル六まで上がっている。


「それなりに美味しかった、のかな?」

「そうですね、これぐらいで許してあげましょう」


 しっかり討伐しておいて、許してあげるの意味とは。



 それはそうと、あのゴブリン(メス)、杖なしでも魅了魔法は使えるんだろうか。もし無理ならゴブリン芸能界にスキャンダルの嵐が吹き荒れることになるかもしれない。


 そんなことは(あらた)たちには何の関係も無かったのだけれど。



――――――――――



若草(わかくさ)(あらた) 中級見習い十

 装備: 全身鎧、巨大棍棒、聖者の瞳


鳴神(なるかみ)音羽(おとは) 拳闘士四→拳闘士五

 装備: 簡易防具、頑丈な篭手、頑丈な脛当、棍棒、ビキニアーマー(黄)


坂江(さかえ)木綿花(ゆうか) 巫子四→巫子五

 装備: 簡易防具、無骨な槍、ビキニアーマー(白)、炎の杖(魔力向上小、炎魔法連射)、魔法のドレス(魔力向上小、炎耐性中)


不知火(しらぬい)都久詩(つくし) 剣豪四→剣豪六

 装備: 簡易防具、無骨な刀、ビキニアーマー(水色)



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