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39.参戦

 二人がダンジョンの中で着替え始めたのには焦ったけれど、それ以外は特に大きな問題もなく、第零階層の再探索は終わり、再び第二階層に戻ってきた。


「ステディなんだから見ても構わないのに。あ、アイツには見せてないわよ?」

「いつも覗きに来てウザかったですけどね」


 (あらた)としてはそんな話をされても困るし、ただ聞き流すしかできない。


 それにしても、春陽(はるひ)穂乃香(ほのか)、サラシを外した二人の胸廻りは随分とサイズアップしたものだ。春陽(はるひ)なんてフルプレートだというのに、どういう仕掛けなんだろう。胸の部分だけ交換パーツでも持っているんだろうか。


「自動サイズ調整機能があるんですよ」

「ええ? そんな機能が存在するとは。僕が貰った鎧にはついてなかったのに」


「珍しい機能よ? 穂乃香(ほのか)のローブにはついてなさそうね」

「元々ダブダブって感じだったもんね!」


 パッツンパッツンになっているわけじゃないけど、胸元が大きく盛り上がったのに腰のところを絞ってないので、なんだかデブっぽく見えてしまう。でも本人はあんまり気にしてないようだ。そう見えた方が変な人が寄って来なくていいらしい。


「少し気にした方がいいんじゃない? (あらた)に嫌われたら元も子もないし」

「……それもそうですね」


 背負い袋から組紐のようなベルトを取り出して軽く腰に巻き始める。


 うわ、男子高校生的に、それちょっと不味い!


 お願いして少し緩めにしてもらった。



 戦いを始めてみると二人の動きが驚くほど良くなっている。ビキニアーマーを装備したからといってそんなに変わるとは思えないんだけど、何があったんだろうか。


「ローブが切られてしまうのは変わらないけど、怪我をしなくなりましたから。だから思い切っていけるの」


 疑問に思っていたら穂乃香(ほのか)から答えを教えてもらった。


穂乃香(ほのか)は分かったけど、春陽(はるひ)は何で?」

「これ、胸が軽くて動きやすいのよ。引っ張られたりしないし、痛くないし。って、私たちは先輩なんだから、ちゃんと敬称付けなさいよね」


「いや、これには理由があって……」


 うわー、面倒くさいっ。それが(あらた)の正直な感想。もちろんそれが思いっきり顔に出た。


 さっきからずっと敬称なんてつけてないのに今になって言い出すなんて。ステディとか面倒くさすぎるし、いっそのこと一人でいた方が楽なんじゃないかと思えてきた。


「私たちのグループでは、敬称禁止にしているんです。戦いのときに呼び合うのに、いちいち敬称をつけていると素早く呼べないので」

「それなら戦いの時だけに……」


「少し向こうでお話ししましょうね?」

「なによ、それ。どういう意味?」


「向こうでお話ししましょうね?」

「え、何? ちょっと待ってよ」


 木綿花(ゆうか)に無理やり連行されていく春陽(はるひ)音羽(おとは)都久詩(つくし)の二人が両側からしっかりと逃げられないように押さえている。


 穂乃香(ほのか)も慌てて春陽(はるひ)の後を追いかける。


「ああ、もう! 分かったわ、呼び捨てでいいわよ。そんなに睨まないで」


 向こうから春陽(はるひ)の声が聞こえてきた。どうやら呼び捨て方式をしっかり受け入れて貰えたようだ。


「で、二人とも何してるの?」


 戻ってきたと思ったら、春陽(はるひ)(あらた)の前で土下座を始めた。その横で穂乃香(ほのか)も正座している。ここって床が平らじゃなくて、岩でゴツゴツしてるからかなり痛いと思うんだけど。


「生意気言ってすみませんでした。これからは心を入れ替えてお仕えしますので、お許しください」

「私からもお詫びします。馬鹿な姉ですけど、これからは私も気を付けるようにしますので、今回はお見逃し下さい」


 何これ? どうすればいいの?


 木綿花(ゆうか)に目線を向けると、うんうん、と頷いている。なにがどう、うんうん、なんだよ。


「えっと、良く分かんないけど、みんなと仲良くしてね?」


 まったくもって、面倒くさいことだ。


 (あらた)なんて何もできない。木綿花(ゆうか)に全部お任せなんだから、ちゃんとしてよね。



 春陽(はるひ)は思う。まさかさっきのやり取りで捨てられる直前だったとは思いもよらなかった。


 なんとか許されたみたいで、心底ホッとする。


 自分ほどの美貌の者をそんな簡単に捨てるなんてありえない、そう思ったし、反発もしたけれど、今の(あらた)の顔色を見ていると木綿花(ゆうか)の方が正しかったと完全に理解できた。


 一つ年下のモブ顔の男子。この(あらた)という男子は絶対にどこかがおかしい。まだそこまで入れ込んでいるわけではないけれど、手放したら後悔する、そんな強い予感はある。


 この先を体験できないことに比べれば、土下座なんて安い物だ。



 次の扉は都久詩(つくし)が開け、その次の扉は(あらた)が開けた。どちらも大当たり。部屋の中には大量のゴブリンが湧いていて、後ろからもゴブリンの大群が押し寄せてくる。


 都久詩(つくし)音羽(おとは)は相変わらず速攻でゴブリンたちを殲滅していくし、木綿花(ゆうか)も動きにそつがない。


 春陽(はるひ)穂乃香(ほのか)の姉妹もかなり慣れてきたようで、まだまだぎこちないながらも、もう最初の時のようなパニックには陥らずに落ち着いて戦えているようだ。


 なんとか敵が片付いて、音羽(おとは)木綿花(ゆうか)、そして都久詩(つくし)(あらた)の頭を撫でに寄ってくる。


 春陽(はるひ)穂乃香(ほのか)はもちろん来ない……と思ったら、二人とも顔を真っ赤にしながら撫でにきた。


「次は穂乃香(ほのか)、その次が春陽(はるひ)ですね」

「えええ? 私お姉ちゃんなのに……あ、はい、ごめんなさい」


 春陽(はるひ)は完全に木綿花(ゆうか)に絞められてしまった模様。


 というか、このナデナデ合戦、この二人も参加するつもりなの?




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