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34.決闘

 最初はただ面倒くさいだけと思っていたけど、なんだか腹が立ってきたぞ。


「かなり腹が立つわね、めちゃくちゃにボコボコにしてやりたい気分だわ」

「ねえねえ、ボクが決闘しちゃ駄目かな? あんなの、一発で首を斬り落とすから、ね?」


 いや、それよりもいい考えがある。


「三人とも、ちょっと耳貸して」


「ああ、そういうこと?」

「うん、そういうこと」


「いけそうですね、やってみましょうか」

「面白そう!」


 三人からも賛同が得られた。


 オッサン先輩の話だと、この時期一年生、しかも女子からの決闘申し込みは断れないはず。ならばいくらでも逃げ道はある。


「どうします? この決闘うけますか?」

「ええ、受けますよ」


 オッサン先輩の言葉に(あらた)は即答した。



「それでは、相手を故意に殺すことは認められません。また二人の決闘に乱入することも認められません。決闘の結果に異議を唱えることも許されません。お互い、いいですね?」


「はい」

「当然だ」


 全身鎧の二年生リーダーが醜く歪むように口角を上げた。



 離れたところでは志郎(しろう)が真っ青な顔をしておろおろしていた。


 なんでこんなことになってしまったのか、もちろん知っている。企んだのは自分なのだから。でもまさかこんな展開になるなんて。


 志郎(しろう)魔巌洞(ダンジョン)を出てすぐ、二年生の四人組と出会ったのは全くの偶然だった。連行されて話を聞いて、彼らが締めようとして捜しているのが(あらた)であることにすぐに気がついた。


 あのモブ顔、そしてこれ見よがしに襟につけたステディ証のバッジ。(あらた)以外にそんな一年生がゴロゴロしているわけがない。


 そこで志郎(しろう)は考えた。自分の代わりにこの二年生をけしかけて、音羽(おとは)木綿花(ゆうか)を解放してもらえばいいのではないかと。


 自分のことを慕っていた女生徒を無理やり力づくで奪われた。自分は彼女たちを取り戻すために授業をサボってダンジョンに籠っているけど、いつになったら彼女たちを救えるのか分からない。だから先輩たちに手伝ってほしい、そう涙ながらに訴えたのだ。


 このままだと音羽(おとは)木綿花(ゆうか)はどうなってしまうんだろう。ああ、あの二人は間違いなく、志郎(しろう)のモノだというのにっ!



 第五闘技場。この学校にいくつかある闘技場のうちの一つ。


 学校の闘技場はここに限らず、実は魔巌洞(ダンジョン)の一部になっている。しかもかなり特殊な場所で、モンスターが湧いて出てくることがない。それだけじゃなく、制限時間なんて関係なしに自由に出入りできるようになっている。


 つまり闘技場では、大怪我をしてもすぐに外に運び出せば全快してしまう。もちろん死には至らない。


 今その闘技場の中心で、(あらた)は全身鎧の二年生と対峙していた。


 名前は知らない。名乗っていたような気がするけれど、面倒くさかったので聞いてなかった。


 階段状になった場所で(あらた)たち二人を見つめる三人の美少女、そしてむさくるしい三人の二年生。彼らの乱入は禁止されている。


 今この闘技場に入ることが許されているのは(あらた)たち二人と、立会人のオッサン先輩、この三人だけだ。


「二人は距離を取って。うん、それぐらいで。それじゃ、開始!」


 オッサン先輩の掛け声で戦いは始まった。



「ほら、先に攻撃させてやる。好きに打ってきていいぞ」

「それでは遠慮なく」


 (あらた)は巨大棍棒を構えることもなく、そのままトコトコと相手の方に歩み寄った。


「お前、舐めてんのかっ!」


 全身鎧の二年生が大剣を振りかぶり、そんな(あらた)に向かって叩きつけている。


「先に攻撃させるって自分で言っておいてもう忘れてるんだ。鳥頭なの?」

「このガキがっ! 舐めんなって言ってるんだっ!」


 そんな大振りの攻撃を軽く避けて煽ってやると、全身鎧は火がついたように大剣を振り回して連撃を繰り出してくる。


 おそらく当たれば吹き飛ぶだろう。でも(あらた)はなんとかギリギリで避けることに成功していた。


「クソガキがっ! 喰らえ! 『一閃(スラッシュ)』!」


 突然、かなりの素早さで大剣が横から飛んできた。


「うわっ!」


 かろうじて巨大棍棒で受ける。何、今の?


〈よう避けた。今のは戦士の武技じゃな〉


 心の声さんの解説によると、今のは職業・戦士が身に着けることができる武技というものらしい。


 威力も速度も通常の攻撃とは段違いだけれど、モーションが固定されているから慣れれば簡単に対処できるそうだ。


 いや、慣れてないんだけど……あんなの連発されたら、かなり不味い。


「まだまだ、『刺突(スティング)』!」


 今度は正面からの鋭い突き。大剣だというのに、まるで槍ボス並み、いやそれ以上の鋭さだ。なんとかギリギリで避けることができたけど、こっちもかなり厳しい。


 その後も通常攻撃に武技を織り交ぜながら、まるで(あらた)を追い込むように連撃を繰り出してくる。今の所、なんとか避けられているけれど、もう防戦一方だ。


「お~い、何チンタラやってんだ?」

「遊んでないでとっとと仕留めて飯にしようや」


 観客席から他の二年生のヤジが飛んでくる。


「ああ、任せろって。『一閃連撃(ダブルスラッシュ)』!」

「うわわっ!」


 今度もなんとか巨大棍棒で受けた(あらた)だったけれど、そのあまりの威力に吹き飛ばされてしまった。体勢が崩れたところにさらに連撃がやってくる。


「うわっ! 危ない! 危ないって、やめてっ!」


 まぐれなのか何なのか、上手く回り込んで避けきったけれど、今のはかなり危なかった。


「ちょこまかと、逃げるのだけは得意だな」

「えっと、ありがとう?」


「それもこれで、終わりだっ!」


 全身鎧が真正面から思いっきり上段に振りかぶった。


 全力の振り下ろしがやって来る!




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