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30.育てたわけじゃ……

 左から襲い掛かってくるゴブリンの首がスパッと斬り飛ばされる。


 右から来たゴブリンがドカッと蹴り飛ばされる。


 中央のゴブリンはズバッと槍で貫かれる。


 その後ろで(あらた)はそれをほけ~っと眺めている。


「ボク、なんだかわかっちゃったよ!」

「戦うたびに体に馴染んでいく気がするわ」

「私はまだまだですけれど、少しだけしっくりいくようになってきました」


「うん、そうだね、その通りだ」


 転職を知らされて自分の職業を知ったことが影響しているんだろうか、三人の戦いがさらに洗練されたような感じがする。


 敵が片付いたのを見て、三人の後ろで見学していた(あらた)は動き出した。もちろんビー玉拾いだ。



 午後から魔巌洞(ダンジョン)に入り、三人に鑑定結果の職業を告げてから、すでに何度もダンジョンに入り直して激しい戦いを繰り広げている。


 最初は怪我することを考えて、控えめに戦いに参加していた(あらた)だったけれど、今では参加したくても参加する余地がない状態になっていた。


 これは無能扱いされて追放されるまで、秒読み状態かな? もう少し長持ちすると勝手に勘違いしてたよ。


 あ~あ、カッコつけたりせずに、役立ってる間にオッパイ揉んだりチューしたりしとけばよかった……。


「ビー玉回収、終わったよ」

「それじゃあ、移動しましょうか」


 入って来た扉の向かい側の扉から次の部屋へと移動する。そこは相変わらずの、教室ほどの広さの四角い部屋、中には十数匹のゴブリンが群れているのが見える。


「一気に殲滅するわよ!」

「行っくよーっ!」


 突入する美少女たち。ライトグレーのプリーツスカートが翻る。垣間見える健康的な肌がとても眩しい。


 戦いが終わり、トボトボ歩いてビー玉を拾い集める。


 そんな(あらた)の頭がふわっと柔らかいものに包まれた。


「何を思い悩んでいるんですか? 手を伸ばせばいいだけなのに」


「え? 何なの!」

「我慢なんてしなくていいんですよ?」


 身動きができない。木綿花(ゆうか)に抱きしめられている、それは分かるんだけど、なんでこんなことになってるの!


「あ~、ずるいんだっ!」

「もう! (あらた)はヘタレなんだから、無理はしないって約束でしょ?」


「ごめんなさい、(あらた)がオッパイ揉みたい、キスしたいって、ブツブツつぶやいていたので、つい」


「えええ~~~っ! もしかして……口に出てた?」

「はい、思いっきり」


(わらわ)はスルーしておったが、聞きとがめられたようじゃの〉


 な、なん……だと……?



「ボクの胸も、しっかり揉んで育てて欲しいなっ!」


 いや、ちょっと待ってほしい。


 音羽(おとは)木綿花(ゆうか)のふくよかな胸は、別に(あらた)が育てたわけでも何でもないんだけど。なんだかそんなニュアンスに聞こえるし、大いなる誤解を招きそうだ。


「揉むと大きくなるって、ガセネタらしいわよ?」

「胸自体は大きくならなくて、乳輪だけが黒くなって広がっていくって聞きましたよ?」


「うわぁ……、それは嫌……でも、旦那様が乳輪好きなら受け入れるよ……」


 都久詩(つくし)がチラッと(あらた)を見てくる。


「ちょっと待って! 女子会じゃないんだから、あんまりあけすけな話はやめてっ!」


 もう、なんの罠だよ!


「今日はこれぐらいで許してあげても良くない?」


 音羽(おとは)木綿花(ゆうか)の反対側から、(あらた)の頭を抱き寄せてくる。


「二人ともズルいっ!」


 さらに都久詩(つくし)がズダーンと胸に飛び込んできた。


「うぐぅっ!」


 その頭突きがみぞおちに決まる。


 こ、呼吸ができない……、し、死ぬ……。


「ほんとにねえ。分かっていそうで、でも分かってなくて。それでもやっぱり分かってる、けどやっぱり分かってないんだから、ちょっと始末に負えないわ」

「唐変木ですから。優しすぎるんですよね」


 優しすぎる? ほんとに何を勘違いしているのやら。


 でもどうやら、もうしばらくの間は追放されずに助かるっぽい。



 その後も何度も出入りを繰り返し、女子組の三人はレベルを一つ上げて四になった。(あらた)だけレベルが二のままで変わらない。


 中級見習いとかいう訳の分からないこの職業、もしもレベルの上がりも悪いとなったら、ちょっと耐えきれないような気がする。



 ~~~~~



 (あらた)のクラスメイト、合法ロリの武士(たけし)は自分が理想とする女の子たちに囲まれて、楽しそうに魔巌洞(ダンジョン)の探索を続けていた。


「よしっ! 上手い、その調子!」


 武士(たけし)が弱らせたゴブリンを少女が棍棒で叩く。いい所に当たったのか、数発でゴブリンは砂のように崩れて消えていった。


「うう~、叩いた時の感触、やっぱり気持ち悪くて好きになれないですよぅ……」

「よく頑張った、エラいぞっ」


 武士(たけし)が心底イヤそうな顔をしている少女を抱き寄せて、慰めるように頭を撫でる。


「あ、今のでレベルが上がったみたいです」


 学生証を手にした別の少女からそんな声が上がった。


 その少女だけじゃなく、武士(たけし)も含めてみんなが同じように自分の学生証を取り出して確認を始めた。


「本当だ、みんなおめでとう、お疲れ様!」


 武士(たけし)たちの学生証には、はっきりと『初心者 レベル三』という表示が浮かんでいた。



 真神原塾社の学生証は多機能なICカードになっている。身分証明書なのは当然だけど、それだけじゃないのだ。購買での買い取りや、町中での支払いにも利用できるし、授業の出欠なんかもこの学生証で自動管理されている。


 もちろん魔巌洞(ダンジョン)探索も自動管理の対象だ。どの階層に入ったのか、そして何匹の敵を倒したのかが自動的に記録・逆算されて、おおよそのレベルが表示されるようになっているのだ。



 噂では、レベル三で次の階層に行っても大丈夫、なんて言われている。


「この表示って正確じゃないし、そんなに急ぐ必要もないから、もう少しここで敵を倒そうか」

「うん、そうだねっ!」


「やっぱりレベル四は欲しいよね」

「レベル四になって、ちょっとしてからだよ」


 同じ一匹でもボスとザコでは経験値が違う。途中で階層を移動することもある。他にもいろいろあって、学生証のレベルには誤差がつきものだ。


 時々ちゃんと鑑定してもらって、正確なレベルに書き直してもらわないといけない。


「こんな大切な機能を説明し忘れてるなんて、夏草(なつくさ)先生ってやっぱりいい加減だよね」

「ほんとにそう。あの人、かなり抜けてるよっ」


 こんなのはあまりに常識的すぎて、他人と情報共有するのも恥ずかしいような単純な話。


 先生が説明を忘れるのも当然かもしれない。



――――――――――



若草(わかくさ)(あらた) 中級見習い二

 装備: 簡易防具、巨大棍棒、聖者の瞳


鳴神(なるかみ)音羽(おとは) 拳闘士三→拳闘士四

 装備: 簡易防具、頑丈な篭手、頑丈な脛当、棍棒、ビキニアーマー(黄)


坂江(さかえ)木綿花(ゆうか) 巫子三→巫子四

 装備: 簡易防具、無骨な槍、ビキニアーマー(白)


不知火(しらぬい)都久詩(つくし) 剣豪三→剣豪四

 装備: 簡易防具、無骨な刀、ビキニアーマー(水色)



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