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03.打ち上げ

「こんな所にずっといても仕方ないし、打ち上げもかねて食堂に行きましょうよ」

「そうですね、外に出て安心したらお腹が空いちゃいました」


 学生食堂に行ってみると、それは想像よりも立派で洒落た建物になっていた。まだお昼には少し時間が早かったこともあって空席がかなり目立っている。


「この学校ってお金がかかってるわよね」

「学費だって安いのに、食費まで含まれてるのはびっくりですよ」


 学生食堂では学生証を見せればお金を払う必要はない。というか制服姿なら学生証を見せる必要すらない。食べたいメニューの所に並んで、料理のお皿を受け取るだけの簡単なシステムになっている。


「外が空いてるみたいですよ、行ってみませんか」

「賛成~!」


 料理の乗ったお盆を手に外に出ると、そこはオープンテラスになっていた。


「へえ、中庭まであるのか」


 テラスの向こうには植木があるだけでなく、人工池やレンガ造りの遊歩道まで用意された本格的な庭園が広がっていた。あちこちにベンチが置いてあって、好きな場所で座って休憩できるみたいだ。


「なんだか学校の中じゃないみたいですね」

「ほんとにそうだね」


 高校というよりは、アメリカのドラマに出てくるような大学の雰囲気がある。


 よく考えてみればこの学校、真神原塾社は高等専門学校だ。ある意味では、高校と大学の一貫教育みたいなもの。大学に近い雰囲気があってもおかしくない。


 (あらた)たち普通科だけで、一クラス二十名、一学年は十二クラスで二百四十名ほど。これが五学年、さらに専科の二年を合わせて七学年、単純計算すると千七百名弱の生徒が学んでいることになる。


 もちろん途中でドロップアウトする人もいるので、生徒の数はそんなに多くないはず。でも貴族たちが集う特侵科、そして教師たちもいるので、それなりの数の人たちが暮らしているのは間違いない。



「それじゃ、かんぱ~い!」


 打ち上げだから乾杯だ、そう言われても手元にあるのはプラスチックのコップに入ったお茶。ぶつけあっても音はしないけど、そこは気分の問題らしい。


「かなり甘く見てたわ~。このままこの学校でやっていけるのかしら」

「敵が出てきたのにも驚きましたけど、ゴブリンは弱いって話でしたし、この制服が守ってくれるって聞いてました。でもなんだか違うみたいですよね」


「敵はそんなに強くなかったよ。でも上から降ってきたのには驚いたかな」


 三人がやられたのは、油断しまくって完全に舐めプしていたのが原因だと思う。


「あいつらだってちゃんと反撃してたわよ?」

「全く効いてないように見えましたね。かなりレベルを上げないと無理なのかも」


「レベルを上げるってどうやってよ? レベルを上げるレベルが無いわ! (あらた)、あなたも何か言いなさいよねっ」


「えっと、それじゃあ……。レベルって何?」

「えええ~っ、そこからなの?」


 魔巌洞(ダンジョン)の中で怪物(モンスター)を倒すと経験値が得られる。それを貯めるとレベルが上がって、強力な技や力が得られる。そしてレベルが二十以上になると新しい職業につくことができて、さらに強力な技が使えるようになるらしい。


「まるっきりRPG(ロープレ)? つまり敵を倒して倒して倒しまくればいいってこと?」

「その理解で間違いないと思います」


 ゴブリンを倒している最中、何だか体の奥から力が湧いてきたような気がしたけれど、あれはレベルが上がったのが原因かもしれない。



「で、この後だけど、二人とも何か用事はある?」

「僕は特に何もないけど、何かあるの?」


「もう一度、魔巌洞(ダンジョン)に入ってみない?」

「三人だけでですか? ちょっと危なすぎる気が……」


 音羽(おとは)サン、立派な胸元をお持ちなだけでなく、なかなかワイルドな感性もお持ちのようだ。木綿花(ゆうか)の方は立派な胸元だけをお持ちだ。


「お? そっちの可愛い女子二人、これからダンジョン? 俺たちも行くから一緒しねえ?」


 (あらた)たち三人の話を聞きつけたのか、チンピラ風の男子四人組が近寄ってきた。


「俺たち、さっきのオリエンテーションで第一階層まで行ったんだよな。だからかなり強いぜ?」

「そっちのボクチャンはここでお別れな。帰ってマスかいて寝てな」


 どうやら彼らも同じ一年生の様子。


 その態度の悪さに木綿花(ゆうか)が眉をしかめている。あまりご一緒したくなさそうだ。


「一緒に来たいならいいけど、(あらた)を外すのはナシね」

「えええ~、私はちょっと、あの人たちとはあんまり……」


「いいからいいから、耳を貸して」


 音羽(おとは)に何か耳打ちされて、木綿花(ゆうか)も賛成することにしたようだ。いったい何を吹き込まれたのやら。でも嫌そうな表情なのは変わらない。


「私たちは彼を含めて三人、それでいいなら一緒でもいいわよ」

「ああ、ボクチャンはパシリ要員でキープってことね、わかったぜ」


 生え際がプリンになった金髪ロン毛がニヤニヤしながら頷いた。


 なんだか面倒くさいことになりそう、逃げだしたい。




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