27.図書館
翌日の日曜日。
新はもうすっかり元気になっていたけれど、木綿花たちから大事を取るように諭されて、午前中のダンジョン探索は休みということになった。
午後は午後で様子を見てから判断するらしい。
ちなみにその判断には、新の意見が取り入れられることはない。と思われる。
「休みって言われてもなぁ。やることがなくて暇すぎるんだよね」
この学校、真神原塾社では、スマホやPCなどはそもそも持ち込みも所持も禁止されている。なのでネットを眺めて時間つぶしをするなんてことができないのだ。
ネットだけじゃない。実はテレビやラジオも禁止だ。本当にどうやって暇つぶしすればいいんだろう。
こんな時にできることと言ったらたぶん読書ぐらいか。図書館はあるにはある。どんな本があるのか知らないし、あまり期待できないけど行ってみようか。もしかしたらマンガ、それは無理でもラノベぐらいなら置いてあるかもしれないし。
「やっぱりか……」
図書館にはマンガは置いてなかった。ラノベも無かった。SFとかファンタジーとか、娯楽小説のたぐいも一切置いてなかった。まあそんなものは置いてあっても読まなかっただろうけど。
置いてあったのは国語の教科書に出て来そうなヤツや、夏休みの読書感想文の課題みたいなヤツ。それもちょろっとだけ。こんなもの、誰が好き好んで読むというんだろう。高校生の要求というものを分かっているんだろうか。
もうほんとにしょうがないので、ダンジョンに関係している本を探してみることにした。それなら少しは興味が湧くかもしれない。
ど~れ~に~し~よ~う~か~な、天~の~神~様~の~。
おお、『ダンジョン職業大全』、これはいいかも。グループの女の子たちを鑑定してみたものの、その職業がどんなものなのか全然わかっていない。彼女たちの職業だけじゃなく、自分の職業のことも知らない。この本を読めば少しは分かるようになるかも。
その太い本を手に取って空いてる席に座る。図書館の中には人がほとんどいないので、どこでも座り放題だ。
最初はやっぱり自分の職業から。『中級見習い』……無い。載ってない。試しに調べてみたけれど、一つ前の職業『見習い』、これも載ってない。本の頭の方に『すべての職業を網羅』とか書いてあるのに載ってない。中級見習い、もしかしたら職業っぽいけど職業じゃないのかもしれない。
気を取り直して次に行く。都久詩の職業『剣豪』、これは載っていた。でも何だか記述が少ない気がする。
いろいろ書いてあるけど要約すれば、日本刀を使うと大きなプラス補正、それ以外の武器や盾だとマイナス補正、そういう職業みたい。かなり都久詩に合った職業の模様。たぶんそうだと思っていたけれど、これなら問題無さそうだ。
音羽の職業『拳闘士』、これはどうだろうか。素手での攻撃で大きなプラス補正と書いてある。武器を使っても別にマイナス補正は無いみたいだ。
足癖が悪くて蹴ってばっかりいたから、この職業になってしまったんじゃなかろうか。武器の更新で強くなれないのが難点だけど、その分だけ技がいっぱい使えたり、攻撃の回数が増えたりするらしい。
ある意味ではお得な職業と言えそうだ。
最後は木綿花の『巫子』か。ゲームでも良くありそうな職業だけど、どうなっているんだろう。えっと、あんまり書かれていないな。槍とか薙刀でプラス補正なのか……
「貴方、そこの貴方。その本を譲りなさい」
なんだかうるさい気がする。あと全体に攻撃力が弱め……
「貴方、聞こえていますの? 貴方!」
攻撃力は弱めなのか。木綿花っぽいと言えばそうだけど……
「お返事なさい、貴方っ!」
なんだかちょっとうるさいと思って顔を上げると、そこには柳眉を逆立てた女子が一人、腰に手を当てて仁王立ちしていた。
「えっと、ここは図書館なのでお静かに」
「貴方、わたくしを馬鹿にしていますの? 事と次第によらずとも許しませんわよ!」
この仁王女子、真神原塾社の制服とよく似た姿をしているけれどちょっと色が違う。ブレザーは紺色じゃなくて真紅で、スカートも同じようなプリーツスカートだけど、色がライトグレーじゃなくて純白だ。
これって2Pカラーと言えばいいんだろうか。ゲームじゃないんだから多分違う。顔つきは童顔、というか少し幼い感じがするけれど、胸元はかなりご立派なご様子。もしかしたら木綿花に匹敵するかも。いや、さすがにそれは無いかな。
この子、もしかしたら中学生なのかもしれない。高専の附属中学とか。制服が2Pカラーなのはそれが原因じゃなかろうか。中学生にしてはかなり発育が良いと思うけど、今時ならそういうこともあるだろう。
そうかそうか、付属中学の子が高専を見学に来てるのか。
ちょっと無礼な感じがしてムッとしたけれど、そうと分かれば話は別。無理して背伸びして高専まで見学に来てみたけれど、一人だし寂しいしで片意地を張っちゃってるんだろう。
「いいから、いいから。でもここは図書館だし、いい子だから静かにしようね?」
「やっぱり貴方、わたくしを馬鹿にしていますのね。このわたくしが身分の差というものを教えて差しあげましょう。そこに直りなさいっ!」
中学生っていうのは、体が育って大人に見えても中身はまだ子供。あとそれと、なんだか知らないけど邪眼がうずいたりしてしまう年頃だ。
でもほんと、図書館で騒ぐのは良くない。そんなのは悪い子だと思うんだ。あんまり酷いとお仕置きするしかなくなっちゃうぞ?




