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26.レベルの代償

 その戦いは、もちろんすぐに終わることはなかった。


 (あらた)たちがすぐに押しつぶされることはなかった。ゴブリンたちがすぐに殲滅されることもなかった。


 それじゃあ均衡していたのか? そう問われると、それは完全に違う。


 圧倒的な物量のゴブリンの群れは、最初こそ(あらた)たちを押し包んでいたけれど、だんだんと盛り返され、今では四人に傷をつけることも出来ずに、ただただ殺され消えていくだけの存在に成り果てている。


 十分、二十分、三十分、それでもまだゴブリンの群れは尽きない。


 そして戦いが始まって四十分を過ぎた頃、やっとゴブリンの群れが止まった。



 四人とも、制服はボロボロに切り裂かれ、そこら中から肌が見えている。でも怪我をし、血を流しているのは(あらた)一人。その様子はまだ息があるのが不思議なくらい。


「すぐ治療を! 急いで!」


 買ってあった万能包帯が巻き付き、(あらた)の姿はあっという間に包帯だらけのミイラ男のような姿に変わっていく。


(あらた)、死なないでっ!」

「……酷、いな、生きてる、ってば」


 実際の所、(あらた)の怪我は見た目ほど酷くはなかった。体のそこら中が切り裂かれていたけれど、どの傷も浅いものばかり。ただ血を流しすぎているので、放っておいたら危なかったことは間違いない。


「ビー玉拾わないと……うわ、クラクラする」


「ちょっと休んでなさいよ。後片付けは私たちでやるから」

「ごめん、そうさせて、貰うわ」


 木綿花(ゆうか)の肩を借りて壁際まで移動すると、そのまま壁にもたれかかって座り込む。


 目の前には大量のビー玉。ぱっと見、どうやら鎧のドロップは無い模様。


「ちょっとぐらいサービスしてくれてもいいだろうに、って、痛っ」


 少し動こうとするだけで、体中に痛みが走る。ここはおとなしく、じっとしてるしかないみたいだ。



 そういえば、戦いの途中でレベルが上がった感触があったことを思い出した。一体どこまで上がったんだろうか。やることもないし鑑定してみるか。


 あれ? レベル二? おかしいぞ、下がってないか?


 もう一度見直してみる。


 やっぱりレベル二。戦いの前はレベル十九まで上がってたのに。


 女子たちの方も鑑定してみる。三人ともレベル三……彼女たちだって同じレベル十九だったはず。どうなってるの、これ?


 どうにも頭が回らなくて、考えがまとまらない。


 面倒くさいし、後回しにするかな。



 魔巌洞(ダンジョン)から外に出ると、ボロボロの制服は元通りになるし、中で負った怪我だって完治する。でも失った体力は元に戻らないらしい。


 ビー玉の換金や万能包帯の補充などを木綿花(ゆうか)都久詩(つくし)に任せ、(あらた)音羽(おとは)に付き添われて保健室に急行することになってしまった。


 この後の探索はもちろん取りやめだ。明日も探索できるかどうかちょっと疑わしい。


「おえっ、気分悪い……」


「無理させ過ぎた私たちが言うのも何だけど、(あらた)、ほんとに大丈夫?」

「おそらく……。血が戻ってくれば、元通りだと思う。多分」


「もう、鎧必須よ。なんとかお金を出しあってでも買わないと、もう危なすぎるわ」


 制服に夏草(なつくさ)先生の言葉の半分くらいでいいから防御力があれば、それだけでなんとかなりそうなんだけど。実際にはほんと、ただの布なんだよね。


 胸廻りには簡易防具を身に着けているけれど、ゴブリンたちは背が低いし、そんな場所はほとんど攻撃を受けたりしない。こんなものに使うお金があるのなら、別の部位の鎧が欲しいところだ。


「レベルでごり押しするのも限界かもしれないね」

「そうね。やっぱり防具は大切だと思うわ。死んじゃったら終わりなんだから」


 まだ第二階層だというのに限界が来るとは。これ、絶対に何かおかしいぞ。レベルだって下がっちゃうし。


 思い出してもう一度、音羽(おとは)のことを鑑定してみる。


――鳴神(なるかみ)音羽(おとは) 拳闘士三

 装備: 簡易防具、頑丈な篭手、頑丈な脛当、棍棒、ビキニアーマー(黄)


 やっぱりレベル三だ。あれ、でも何かおかしいぞ?


 目をこすって、もう一度見てみる。


 拳闘士レベル三。


 これ、もしかして転職してない?



 確か授業で習ったはず。見習い《ノービス》レベル二十になったら、中央奥ノ宮で転職できるって。たしか好きな職業を選べるんじゃなくて、自分に最も合った職業になれるって話だった。


 音羽(おとは)、いつの間に転職に行ったんだ?


 って、そんな時間はどこにもなかった。ずっと一緒にいただろうに。


 少し混乱しながら、(あらた)は自分のレベルも鑑定してみる。


 中級見習い、レベル二。


 なんだこれ? 見間違いか?


 中級見習い、レベル二。


 間違いじゃないようだ。いつの間にか(あらた)は、見習いから中級見習いに転職していたらしい。


 なぜ転職したのか理解できないけれど、中級見習いって、そもそもなんの中級で、なんの見習いなんだろう。全く意味が分からない。


 勝手に転職しちゃったなんてこと、保健室みたいな人の出入りが激しい所ではちょっと話せない。


 他の二人と合流してから、どこか静かな場所に行かないと。



 簡単な診察の後、(あらた)は『特に問題なし』ということで保健室から放り出された。薬を貰って、少し気分は楽になっている。


「問題が無かったと聞いて、少し安心しました」

「ボクたちも心配してたんだよ?」


 木綿花(ゆうか)都久詩(つくし)、二人を鑑定してみると、巫子レベル三に剣豪レベル三。二人ともやっぱり転職している。


 これ、黙っててもいいんだろうか。


 いや、そういうわけにはいかないよね。



――――――――――



若草(わかくさ)(あらた) 見習い《ノービス》十九→中級見習い二

 装備: 簡易防具、巨大棍棒、聖者の瞳


鳴神(なるかみ)音羽(おとは) 初心者(ノービス)十九→拳闘士三

 装備: 簡易防具、頑丈な篭手、頑丈な脛当、棍棒、ビキニアーマー(黄)


坂江(さかえ)木綿花(ゆうか) 初心者(ノービス)十九→巫子三

 装備: 簡易防具、無骨な槍、ビキニアーマー(白)


不知火(しらぬい)都久詩(つくし) 見習い剣士(ノービス)十九→剣豪三

 装備: 簡易防具、無骨な刀、ビキニアーマー(水色)



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