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24.第二階層の罠

 四人が警戒しながら隣の部屋に入ると、通った扉がゆっくり自動的に音も立てずに閉じた。


 やっぱりどうにも薄気味悪くて落ち着かない。


「この扉、勝手に閉じちゃいましたけど。さっきの小部屋と繋がっているんでしょうか」

「そりゃそうでしょ? 繋がってないはずが……ない……」


 四人全員が同じ疑問にたどり着いた。


 さっきの階層はブロックの組み合わせで複雑にループしていた。もしもこの階層にも同じような罠があるとしたら、部屋の組み合わせが入れ替わっていたっておかしくない。


 つまり、閉じた扉を開けたからって、同じ部屋に戻れるとは限らない。


「一度、試してみようか」


 (あらた)が扉を押すと、やはり扉は音も立てずに開く。


 扉の向こうはこの階層にやって来た時と同じ小部屋。天井には丸い模様があるのも見える。


「……元の部屋ですね」

「消えた扉は復活してないみたいね」


 これってループは無いってことなのかな?


 いや違う、今はまだループしてないだけ。もう一度扉を閉めたら、次に開けた時には違う場所に繋がっているかもしれない。


 同じ場所に見えて実は違う場所、あの転送の模様の先は違う領域に繋がっている可能性だってあるのだ。


「もう何も信用できないよね。でも……」


 ドゴンッ!


 (あらた)はその扉に、巨大棍棒を叩きつけた。木製の扉はあっさりと粉々に砕けた。そしてさらに数発、念入りに壊しておく。


「突然びっくりしたよ」

「ほんと、いきなり乱暴ね」


「それってつまり、目印っていうことですか?」

「うん、そういうこと」


 壊したからって次の瞬間には直っていることだってあるだろうし、壊したはずの扉が生えてくることだってあるだろう。違う部屋なのに同じように壊れた扉がある、そんなことがあったとしても不思議じゃない。


 目印をつけたってそれが有効かどうか。そんなこと判断しようがない。それでもそれでも目印をつけておいた方が、魔巌洞(ダンジョン)の手札を削ることができるに違いない。


 実は罠も何もない、それらしい演出で精神を削りに来ているだけ、そんな可能性だって無いわけじゃないだろう。


「考えれば考えるほど、深みにはまっていく気がするよ」

「同感ね」



 みんなで手分けし、さらに聖者の瞳も駆使してその部屋を探ってみたけれど、これといって怪しい点は見つからなかった。


「次の部屋に行ってみようよ!」

「どの扉を選ぶの?」


「向かいの扉かな。次がどうなってるか分からないけど、もしも同じような構造だとしたら、しばらく真っすぐ進んでいくのがいいんじゃないかと思う」

「真っすぐですか。何か理由があるんですか?」


 特に理由があるわけじゃない。


「勘かな?」

「それ、信頼できそうな理由ね」


「だろ?」

「ええ、とっても」



 次の扉に手をかけて、ゆっくり少しだけ開けて中の様子を確認する。


 今いる部屋と同じように薄暗く、同じような感じの教室ぐらいの広さの四角い部屋だ。壁がゴツゴツした感じといい、それぞれの壁に扉がある事といい、今いる部屋との違いはほとんど分からない。


 ただ違いがあるとすれば……


「ゴブリンがいるよ。結構多いかも」

「今まで見て来たゴブリンよりも大きいわね」


 これまで出てきたゴブリンは腰よりちょっと高いぐらいの背丈だった。でもここにいるヤツらは胸元ぐらいの身長がある。


 背丈だけでなく、横幅も少しガッシリしている気がする。肌の色も緑というより青緑のような感じだし、もしかしたらゴブリンとはちょっと違う種族なのかも。そして武器や防具もちゃんと装備。でもそれ自体は今までどおり粗末なものだ。


「石を投げたりして、一匹づつ誘ったりできないかな?」

「そこまで馬鹿じゃないと思いますが」


「いっぺんに来ちゃうかな?」

「だと思います」


 やっぱりゲームのようには行かないか。



「あ、気づかれちゃった!」

「突入するわっ!」


 都久詩(つくし)、そして音羽(おとは)が部屋の中に入っていく。無駄な考え事をしていた(あらた)は少し遅れてしまった。


「え~いっ!」


 都久詩(つくし)の刀が先頭のゴブリン、その一匹の首を斬り飛ばした。


「かなり硬いよ!」


 そう、下の階層だと三匹ぐらい一気に処理していたのに、まだ一匹しか斬っていない。


「ああ、もうっ!」


 音羽(おとは)も別のゴブリンにローキックを叩きこんでいた。一発では倒れない、もう一発、それでやっと足元が崩れた。


 それでも倒せたわけじゃない。体勢を完全に崩しつつも、ゴブリンの右腕が音羽(おとは)の胸元に迫る。彼女の制服の胸元、その布地が千切れ飛ぶ。



 二人に遅れて踊り込んだ(あらた)の前をゴブリン二匹が立ち(ふさ)がった。まずは踏み込みざまに一匹、そしてもう一匹に全力で巨大棍棒を叩きつけて吹き飛ばす。


 強くなっているのかもしれない。でも(あらた)の戦法だと、そんなに違いは分からない。ただ仲間の状況を確認するだけの暇がない。前に出過ぎない、それだけを気にするようにして、こちらに向かってくるゴブリンたちをなぎ倒していく。


 ゴブリンたちの手にした剣や短剣が、(あらた)の腕や足をかすめる。制服は切り刻まれ、同時に血しぶきが舞い、それが霧になって部屋の中に溶け込んでいく。


「痛いって、言ってるんだ、よっ!」


 (あらた)はすぐさま反撃の棍棒を振るった。まだそんなに戦闘経験はないけれど、こういう時は引いちゃ駄目、止まっちゃ駄目。ただひたすら目の前の敵を潰していくのが正解だ。


〈うむ、薙ぎ払うが良し〉


 心の声さんもこう言ってくれてる。


 それにしても敵が多いな。倒しても倒しても湧いてくる。どこからか援軍が来てるんじゃないだろうか。


 (あらた)は、もちろん音羽(おとは)都久詩(つくし)、それに木綿花(ゆうか)も、ゴブリンたちの反撃を受けながらも戦い続ける。


 それでもまだ終わりは見えない。


 無事に切り抜けられるのかどうか、それすら誰にもわからない。



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