136.ぶつかり合い
元々の話からすると、クラブ対抗戦での決闘管理軍団の裁定を不服に思った一部の者たちが、新たちのクラブ『たかはし』を逆恨みして襲撃したことが事の発端だ。
新たちにしてみても、決闘管理軍団にしてみても、舐めた行動を取った奴らを粛清できればそれでいいわけだ。
しかし『筋肉ダイナマイツ』の部長や副部長からしてみれば、そのメンツにかけても、これ以上黙って部員を惨殺させるわけにはいかない。
つまり、お互いのメンツとメンツ、正義と正義がぶつかり合っている以上、決闘で決着をつけるのがこの学校のルールなのだ。
『筋肉ダイナマイツ』からしてみれば、部員の上位者を三人も瞬殺した新たちは、異次元の強さのように見えたことだろう。
だけどもちろん実態は違う。一対一の戦いに見せかけて、実際は新と木綿花の強化を含めて三対一で戦っていた。そうして相手の油断しているところに、一切の遠慮をせずに最高の一撃を加えたのだ。
殺しても構わない。そのつもりで戦ったのは間違いないけど、殺すつもりだったわけじゃないんだよね。実際には、三人を生き残らせることができないほど、相手の命にまったく配慮できないほど、ギリギリの戦いだったのだ。
簡単な打ち合わせが終わり、決闘の枠組みが大きく変わった。
対戦は『たかはし』の部長新と、『筋肉ダイナマイツ』の部長の一組だけ。
もしも新が勝てば、『筋肉ダイナマイツ』の部員全員が『たかはし』に隷属する。新が負ければ、拠点への襲撃については不問とする。
ただし新が勝ったとしても、隷属した相手を殺すことは禁止だ。
これで話はかなり単純になった。
あとは戦うだけだ。
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ここ第一闘技場には広い観客席がついている。本来ならば今日はクラブ対抗戦の決勝戦だったこともあり、その観客席には一般生徒だけでなく、甲種や乙種の上位クラブの部員たちの姿もかなり見受けられた。
「一年生相手に好き放題されるなんて、『筋肉ダイナマイツ』の部長もメッキが剥げたねえ」
「最下級に毛の生えたようなクラブに隷属となったら、恥ずかしくて乙種なんて名乗れないでしょうに」
彼らの会話を聞いていると、『筋肉ダイナマイツ』を非難したり、馬鹿にしたりする言葉が圧倒的に多い。やはり下位の者が上位に噛みついて倒す、それが一番の娯楽であり、楽しみなんだろう。
だけどよく聞いていると、『たかはし』を警戒する声もかなり多かった。何と言っても『たかはし』の三人が、かなり上位と目される三人を一対一で順番に瞬殺していった、その衝撃は非常に大きかったのだ。
そもそも新たちが不戦勝を選んだのは、下手に目立って危ない目に合わないためだった。だというのに、変な恨みを買って闇討ちされ、決闘での解決を選んだお陰で、全部すっ飛んでしまったのだ。
見学者の中には、特侵科の真紅のブレザーの姿もちらほら見える。
そのうちの一つ、新のことを誰よりも真剣に見つめる目、それは甲種クラブ『隠密研究部』の一員、特侵科一年の秋風山吹の姿だった。
「三郎坊、これでもやはり、彼の力を認めませんか?」
「いやいや、山吹様。どうやらそれがしの眼は節穴だったようでござる」
「ならば近いうちに、彼らと同席する機会を作りなさい。きっとですよ?」
「相分かりましたでござる」
席を用意する、それは別に構わない。しかしこれからまだ一戦、今度は部長との決闘が行われるのだ。もしもそこで彼が負ければどうするんだろうか?
「彼が負けた場合を考えていますね? だからあなたはダメなのです」
『筋肉ダイナマイツ』の部長は三次職への転職を果たしている。それはもちろんとんでもなく強い事の証明だ。
しかし新の強さはそれとはまったく次元が違う。
山吹の眼は、その事実をしっかりと捉えていた。
観客席には朝霞春陽と穂乃香の姉妹、それに彼女たちのクラブ『エメラルドの風』の姿もあった。
彼女たちは新たちと同等もしくはそれ以上の能力があると、勝手に思い込んでいたフシがあったのだけれど、クラブ対抗戦の予選でコテンパンにやられたおかげで少し現実が見えるようになっていた。
そして今日、『筋肉ダイナマイツ』のエース級の三人を連破するところを見せられて、かなり思うところがあったようだ。
「ねえ、穂乃香。今からでも新たちに土下座したら、仲間に入れてもらえないかな?」
「春陽、やっと目が覚めました? もう遅いかもしれませんけど、やってみる価値はあると思いますよ」
どちらに転ぶか、それも次の決闘の結果次第だ。
穂乃香は軽く座席に座り直すと、真剣な瞳を闘技場へと向けた。




