134.まだまだやり返す
この決闘、クラブ対抗戦での不戦勝がそもそもの引き金になっている。
不戦勝ルールのせいで上位クラブへの挑戦権を失った『筋肉ダイナマイツ』には気の毒だったけれど、新たち『たかはし』からしてみれば、ただの言いがかりに過ぎない話だ。
それなのに、はるか下位のクラブへの闇討ちを行った『筋肉ダイナマイツ』に対しては、決闘管理軍団もかなり苦々しく思っている模様。
なにしろ自分たちの裁定に反抗し、規則を破って弱い者いじめまでやらかしたのだから、彼らは気持ちの上では完全に『たかはし』の味方だった。
最初の決闘、『たかはし』側は音羽だ。拳闘士レベル二十四、そのレベルは一年生としては驚くほど高い。
しかし相手は戦士レベル五十六の四年生。二次職のレベル五十六と言えば、五年生後期のノルマをクリアしていてもおかしくないレベル。それをほぼ三年間の学校生活で達成しているのだから、かなりの上位だ。
音羽とのレベル差は三十以上。普通に考えれば勝負にならないほどの差と言える。
鑑定眼が無ければ相手の本当のレベルは分からない。分かるのは学生証による概算レベルだけだ。魑魅領域に通う新たちは、学生証の概算レベルは非常に低いため、弱いに違いない、と勘違いされやすい。
だけど今のレベル差はそうじゃない。勘違いでも何でもなく、実際のレベルが大きく引き離されているのだ。
「おい、女。先に一発殴らせてやる。かかってきな」
「それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうわ」
『筋肉ダイナマイツ』からしてみれば、『たかはし』なんてただのザコクラブ。それが変な勘違いをして不戦勝なんかを選ぶから、こんな事態になっている、そう思っている。
ちょっと痛い目を見させるなんて、当然のことだ。命までは取らなかったんだから、それでなんの問題もない、そう信じている。
しかしレベルがはるかに低いクソクラブのくせに、こうして決闘を申し込んできた。少しは認めてやってもいいか、なんて上から目線で考えている。
そんな吐き気がしそうなほど傲慢な相手の思考が伝わってくる。
ならばその思考ごと粉砕するまでだ。
音羽がフウウッとゆっくり息を吐いて、大きく構えた。
と同時に、一瞬で間合いを詰めて正拳を突き出す。
相手は、先に殴らせてやる、なんて言っていたけれど、何のことはない。気を抜きすぎていて、その一撃を避けることができなかった。
バシュッ!
大きな音が闘技場に響き渡ると同時に、レベル五十六の戦士の体がまるで風船のようにはじけ飛ぶ。
「な、な……っ!」
決闘場は魔巌洞の一角に位置している。そのため、たとえ大怪我をしたとしても、緊急退出させることで元通りの体に戻ることができる。
即死でさえなければ。
音羽の対戦相手は四散し、砂になって決闘場に消え去った。
そして音羽を含めた『たかはし』の四人は、大きくレベルを上げることになった。
「おい、ちょっと待て! 決闘で殺してもいいのか!」
「今のは殺したというより事故だな。レベル差が激しく大きいのに手抜きしろとは、さすがに決闘管理軍団からは言えない」
『筋肉ダイナマイツ』からの抗議は、決闘立会人から簡単に否定される。
次の二戦目、音羽が引っ込み、それと交代で都久詩が出ていく。
一戦目で相手にとどめを刺す形になってしまったことで、都久詩のレベルも大きく上がり、元は剣豪レベル二十四だったものが、レベル四十四になっている。
それに対して相手のレベルは戦士六十。彼もまだ四年生だというのに、レベルの上ではほとんどの五年生を越えている。
都久詩のレベルが上がったとは言っても、まだまだレベル差は大きい。
「都久詩、負けないでくださいね!」
「もっちろん! 頑張るよ!」
木綿花が必死になって仲間を応援する。彼女はもちろん、音羽の時も同じように勝利を祈っていた。
誰も気づいていないかも知れないけれど、それは間違いなく巫子の強化スキル。一対一の決闘では反則かもしれないけれど、ぶっちゃけバレなきゃ問題ないのだ。
「はじめっ!」
立会人の開始の合図に合わせて、都久詩がスッと前に出る。相手の戦士まであと二歩と、少し遠い間合いだ。
「悪いが俺はお前らを舐めるつもりはない。こちらから先に行かせてもらう……ぜ……?」
相手の戦士が何か話している間に、都久詩は素早く間合いを詰めると、刀をサラサラっと振る。
いつもとは違う。いつもなら首を斬り飛ばしているところだ。
都久詩が刀を鞘に納めると、相手の顔が消えてなくなっていた。一瞬にして細切れにされたのだ。
立会人が相手の戦士を急いで強制退出させたけれど、さすがに頭なしでは復活は無理だ。その戦士は新たちの経験値になって消えていくしかない。
「おい、今のはなんだ! さすがに殺意が高すぎだろうがっ!」
「開始の合図があったのに、いつまでもごちゃごちゃ喋っているからだ。刻まれても仕方なかろう?」
やはり『筋肉ダイナマイツ』からの抗議はまったく聞き入れられない。
仲間を二人も殺された、とは言っても相手はただの一年生。これは負ける方が恥ずかしい決闘なのだ。
そしてこの決闘に負けた以上、闇討ちを実行した犯人に確定している。たとえ殺されたところで、彼らには文句を言える筋合いではなかった。
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若草新 上級見習い三→二十二
装備: 全身鎧、巨大棍棒、聖者の瞳
鳴神音羽 拳闘士二十四→五十二
装備: 簡易防具、頑丈な篭手、頑丈な脛当、棍棒、ビキニアーマー(黄)
坂江木綿花 巫子二十四→五十二
装備: 簡易防具、無骨な槍、ビキニアーマー(白)、炎の杖(魔力向上小、炎魔法連射)、魔法のドレス(魔力向上小、炎耐性中)
不知火都久詩 剣豪二十四→五十二
装備: 簡易防具、無骨な刀、ビキニアーマー(水色)




