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底なしダンジョン学園にようこそ! なんて言われても困るんだけど(仮)  作者: 大沙かんな


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130.不利な戦場

 その後も何度か妖獣ワニーの襲撃があった。横から襲ってくることは少なく、基本は上からだ。襲ってくるというより、降ってくるといったほうが合ってる気がする。


 妖獣ワニーからしてみれば、水中で落とし穴に(はま)ったようなイメージ。(あらた)に噛みついたヤツのように頭から突っ込んでくるだけじゃなく、尻尾を下にして降って来るヤツも多いのだ。


 例えばこれがゲームだとすると、環境のデザインと、敵のデザインが噛み合っていないという感じ。


 ただ捻じれて見えるだけなのか、それともそこに何か意図があるのか。


 それは誰にもわからない。



「ここ、見えにくいけど壁があって分かれ道になってるよ」

「うわ、ほんとだ」


 このまるで湖の底を歩いているような水中通路、広々としているのはいいんだけど、どこが壁なのか分かりにくい。


 何も無いように見えて、透明なガラスのような硬い壁があったり、水の壁があってその向こうは水中になっていたり、物理法則を無視した、かなり自由な作りになっている。


 天井の向こうだって水中で、妖獣が足を踏み外して落ちてくるしね。


 透明なガラスのような壁にスプレーで印をつけてみる。だけど印の形はすぐに崩れて、見えなくなってしまった。


「まるで水面にスプレーしてるみたいね」

「うん、そんな感じ」


 触ると硬く感じるけど、実際は水。


 言葉にすると、なんのこっちゃ分からないけど、そうだとしか言いようがない。


 そんな見えにくい壁。それがあるのかないのか良く分からない。



 さらに湖の底を進んでいくと、小柄なワニーが数匹、右側から泳いで近づいてくるのが見えた。


 良く見るとどうやら鎧を着ているようだ。さらにその腕には長い槍のようなものを握っている。


 妖獣なのに鎧? それに武器だって?


 いや、アイツらは妖獣ワニーじゃない。似ているけど違う、ワニ人? ワニ獣人? 呼び方は知らないけど、ワニっぽい人間っぽいヤツら!


 聖者の瞳で鑑定してみると、ワニ人ではなく、ワニールという種族のようだ。それが五匹、泳いでこちらに向かってくる。その速度は人間より少し速い感じ。



 そのワニールたちに向かって、前衛として(あらた)が右前、都久詩(つくし)が左前に位置取る。その後ろで巫子の木綿花(ゆうか)が槍を、調理師の陽菜(ひな)と裁縫師の亜紗(あさ)もそれぞれ武器を構える。


 かなり開けた場所なので、後ろからの攻撃に備えて音羽(おとは)は一番後ろで警戒だ。


 敵はまだ水中。だけどこの後すぐ、壁を破って襲い掛かってくるはず。


 あれ? 来ない?


 襲い掛かって来ると思った敵のグループは、こっちに直接向かって来ずに上昇に転じる。そして(あらた)たちの真上に到達すると、急降下して襲い掛かって来た。



 バシャッ!


 大きな水音を立てながら、真上から槍を持って襲い掛かってくるワニールの群れ。


 もしもこれが奇襲だったとしたらかなり恐ろしかっただろう。だけど(あらた)たちだって、ただ黙ってボーっと突っ立っていたわけじゃない。見え見えの槍攻撃を食らうようなメンバーは一人もいない。


 大きくステップしてワニールの攻撃を避けると、体勢が整っていないワニールに逆襲する。


 まずは都久詩(つくし)がワニールを一匹切り刻み、続いて音羽(おとは)が軸足を蹴り飛ばして引っ繰り返ったところで急所に一撃を加える。


 (あらた)にはワニールが二匹同時で襲い掛かってきたけれど、これを二匹とも避けた上で、棍棒の大振りの連打で力任せに二匹同時に叩き潰した。


 あと一匹は?


 そう思って振り向くと、陽菜(ひな)亜紗(あさ)に牽制される中で木綿花(ゆうか)の槍で貫かれ、砂になって崩れ落ちるところだった。


「ワニール、パワーはかなり強いね」

「上背もかなりあるから厄介だわ」


 比較対象はゴブリンになってしまうけれど、それと比べたらパワーは段違いだ。背の高さだって二メートル以上ある。ただ背中を丸めているから、あまり大きさは感じない。


「あまり小回りは得意じゃない感じでしたね」


 うん、それは(あらた)も感じた。


 ずっと妖獣ワニーがそのまま立ち上がって鎧を着たような見た目だったから、直線番長だった妖獣ワニーの印象が強いのかもしれないけど、前後左右へのフットワークのような動きは少なかった気がする。


 パワー重視で足を止めてドツキ合い、それは(あらた)も同じと言えば同じなんだけどね。



 ワニールの落としたビー玉を拾い集めて、湖の底をさらに進んでいく。見た目では分かりにくいけれど、そこら中に透明な壁の間仕切りがあって、通路はまるで網目のように広がっている。


 聖者の瞳の鑑定能力で通った場所の簡単な地図は出来上がっているけれど、どこがどう繋がっているのか、実際のところはあまり良く分からない。壁を軽く叩きながら進んでいるんだけど、それだけでは情報が足りないのだ。


「見えない壁って、思ってたよりも大変だよ」

「印もつけられませんね……」


 そして問題は透明な壁だけじゃない。


「またワニールが来るわ、後ろから十匹ほど」

「左からも来るよ、六匹!」


 もちろん後ろからと左からだけじゃない、前からも右からも来ている。


「上からも来てます!」


 前後左右、そして上からも敵は襲ってくる。


 どこにも休める場所がないっ!



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