表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/54

13.悪鬼

 (あらた)たちが槍ゴブリンと戦っていたちょうどその頃。


 同じクラス、一年辰組の男子の一人、磐瀬(いわせ)武士(たけし)は、四人の可愛い系の女子と一緒に、キャッキャウフフの魔巌洞(ダンジョン)探索をエンジョイしていた。


 まだここは第一階層だ。出てくるのはゴブリンだけ、武器も防具も何も身に着けていない。それも同時に出るのは一匹、たまに二匹になるぐらい。余裕にも程がある。


 それなのに入学初日に十人以上が返って来なかったらしい。一体どれだけヘタレだったんだろう。


「ねえ、武士(たけし)くん。私たちにも戦い方を教えてくれないかな?」

「ああ、いいぜ。任せてくれ」


 出てきたゴブリンを弱らせて、反撃できないようにしてから女子たちに交代で叩かせる。


「ああ、もうちょっと腰を入れて、こんな感じ。そうそう上手いぞ」


 可愛い女の子たちの腰を抱くようにして、フォームを直していく。上手く出来た娘の頭を撫でてやるのも忘れない。


 それにしても都久詩(つくし)だったか、彼女は少しもったいなかった気がする。かなりの美少女で、胸廻りもほっそりしていて武士(たけし)の好みだった。ちょっと背が高すぎさえしなければ、絶対に手放したりはしなかっただろう。


 たしか(あらた)だったかな。あのモブはどうせ何かをやらかすだろうし、どこかでグループは壊滅するに違いない。そうなった時、あぶれた彼女を拾ってやればいい。


 もしかしたらあのモブのお手付きになってるかもしれないが、そんなことは気にしなくていい。あとからじっくり教えてやればすむことだ。


 そんなことよりも今は人間関係。同じグループの少女たちの信頼を得ることがなにより重要だ。



 ~~~~~



 (あらた)たちのクラス、一年辰組には、(あらた)武士(たけし)だけでなく、もう一人の男子生徒がいた。


 青雲(あおぐも)志郎(しろう)。銀縁の眼鏡をかけたインテリ風の容貌をした彼は、武士(たけし)とは真逆で大きな胸の女の子が好きだった。


 武士(たけし)にグループ構成を相談された時には迷ったけれど、彼は小さな胸の女子が好みだと聞いて、あっさりとそのたくらみに同意することになった。おかげで彼の目の前には、胸が大きくて素敵な女子が三人集まっていた。


志郎(しろう)くん、武器の使い方ってこれでいいの?」

「えっと、そうだね、腕はこんな感じで、あと腰はこう、うん、そうだよ」


 女子一人一人の腰を抱いたりしながら、武器の振り方を教えていく。そのたびに彼女たちの柔らかな胸が何とも心地よい感触を彼の体に伝えてくれる。


 ほんとにまったく。武士(たけし)にはなぜ、この素晴らしい物の価値が分からないのだろうか。


 女子たちの素晴らしさを味わいながらも、志郎(しろう)には少し後悔があった。


 鳴神(なるかみ)音羽(おとは)坂江(さかえ)木綿花(ゆうか)


 まるで女神のような美しい顔と素晴らしいスタイルを持った二人の女生徒が、あろうことか良く分からないモブのグループに入ってしまったのだ。


 もう少し余裕があると思っていたのが運のつき。完全に出遅れた、そう思っても後の祭り。それでも胸の大きな可愛い女の子が集められたのだから、良しとするべきだろう。


 どうせあのモブのことだ。この先の階層で必ず行き詰まる。行き詰まらないにしても。何か問題を起こしてグループは解散することになるに違いない。その時になってから音羽(おとは)木綿花(ゆうか)、二人を引き取っても遅くはない。


 モブのお手付きになってるかもしれないけれど。その時はその時で、あの素晴らしい体を思いっきり楽しめばいいのだ。


志郎(しろう)くん、もうちょっと教えて?」

「ああ、任せとけ」


 再び女生徒の腰を抱き寄せる志郎(しろう)。彼の魔巌洞(ダンジョン)探索(アタック)はまだ始まったばかりだ。



 ~~~~~



「くしゅんっ!」

「どうした、木綿花(ゆうか)? もしかしたら風邪か?」

「いえ、違うと思うんですけど。何だか一瞬ひどい寒気がして」


「くちゅんっ!」


 今度は音羽(おとは)がくしゃみをした。もしかして、魔巌洞(ダンジョン)の影響か何かなのか?


「多分そうじゃないと思うけど。でも何だろう。一瞬、気持ち悪い感じが通り過ぎたのよね」

「ええ、私もです。何だか舐めまわされるみたいな、本当に気持ち悪い感じでした」


 もしかしたら何かに取りつかれたということもあり得るか。そう感じた(あらた)は、聖者の瞳を意識しながら二人のことをじっくりと観察する。特に変な所は……


「あ、なんだこいつ!」


 木綿花(ゆうか)の豊かな胸元のブラウスの隙間から、小さな緑色のトカゲのようなものが顔を覗かせていた。


「きゃっ!」


 (あらた)はとっさに手を伸ばしたが、トカゲはすぐにブラウスの奥に隠れてしまった。


(あらた)、突然何してるのよ、血迷ったの?」

「いや、木綿花(ゆうか)の胸元に何かいる、ちょっと動かないで」


 どうやら彼女たちには見えてないらしい。


〈早よお(とら)まえねば()し〉


(あらた)、待って、こんなところで……乱暴しないで」


 木綿花(ゆうか)は泣きそうになっておられるが、しばらく我慢してもらうしかなさそう。ブラウスのボタンをいくつか外して腕を突っ込む。


「ああっ……」


 よし、捕まえた!


 彼女の胸元から腕を引き抜くと、それは小さな緑色のゴブリンもどきだった。ゴブリンもどきは眼鏡をかけたような顔をしている。


「キィッ! キキャッ!」


「な、なによ、それ……」


 小さなゴブリンもどきをひねりつぶすと、(あらた)音羽(おとは)に向き直った。


「な、なによ?」

音羽(おとは)の胸元にもいる。すぐに取り除かないと危ないぞ」


「ちょ、ちょっと待ってよ! 自分でやるから……」

「見えてないだろ? 任せろ」


 音羽(おとは)の細い腰を抱き寄せると、ブラウスのボタンを素早く外していく。


「ああ、責任……とってよ……」


 無事に音羽(おとは)に潜んでいたゴブリンもどきの捕獲に成功した。見た目は先ほどのヤツと同じようだ。もちろんすぐに気合とともに握りつぶす。


「あの……ボクは?」


 しっかり観察してみたけど、都久詩(つくし)には取りついていない模様。


「むう……やっぱり胸なの?」


 なんだか少しお怒りのようだが、取りつかれていなかったことを喜んで欲しい。


「今の……なんだったんでしょうか?」

「悪霊、とか?」


 音羽(おとは)木綿花(ゆうか)はまだ、少し顔が赤いけれど、特に寒気などは感じなくなったらしい。心の声さんも何も言ってこない。


 おそらく悪鬼がやって来たのはつい先ほど。まだ気を抜くことはできないけど、取りあえず問題は解決したようだ。


 緑のゴブリンもどきを握りつぶすとき、親玉まで滅殺するぐらいの気合を込めてみた。もちろんそんなものが相手に届くとは思っていないけれど、これも気分の問題だ。


 その時、いきなり泡を吹いて倒れた男子生徒がいたことなど、(あらた)はもちろん、音羽(おとは)たち女性陣の誰も気づくことは無かったが。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ