表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/60

12.槍ゴブリン

 部屋の中央に突入した(あらた)は、数匹のゴブリンを血祭りに上げた後、槍持ちのゴブリンと対峙することになった。


 槍ゴブリンの醜い顔に残虐な笑みが浮かぶ。


 と同時に、槍の一撃が飛んできた。


「うわっ、危なっ!」


 体をひねってギリギリで避ける。


 さらに二発目、三発目が飛んでくるのを、またギリギリで避けた。槍が制服ブレザーの裾をかすめて、布が千切れ飛ぶ。本当に危険、あんなのが当たったら無事で済みそうもない。


 あーあ、もうほんとにね、恰好つけずに都久詩(つくし)に任せちゃえばよかったよ。でも女の子を危ない目にあわせるのはやっぱりね。


〈その意気や良し〉


 心の声さんも応援してくれてるし、ちょっとは頑張らないとね。


 そうは言っても、槍のせいで近づくことすらできない。ただ何となくだけど、避けるのに慣れてきた感じがする。ギリギリで避けているのは変わらないけれど、かなり余裕が出て来た感。


 次は右かな? ほら右が来た。


 左、左、右と来そうだ。やっぱりね。


 槍ゴブリンの視線なんだろうか、筋肉の動きなんだろうか。それとも足の位置取りなんだろうか、何が理由なのかはわからないけど、相手の攻撃が分かるようになってきている。


 思い切って一歩踏み込んでみる。ほら、(かわ)せる。


 もう半歩。かなり厳しいけれど、なんとかなる。


 槍ゴブリンの瞳に焦りの色が浮かんだ。


「グガァァァッ!」


 吠えた。


 でもそれは隙だよ? (あらた)は大きく踏み込んで、ゴブリンの頭の上から巨大棍棒を力いっぱい叩きつける。か、硬い?


 槍ゴブリンはよろけながらも槍を突いてくる。距離が近すぎて避けきれない。槍は(あらた)の脇腹に突き刺さった。


 めちゃくちゃ痛いっ!


 でもこれはチャンスだ。この間合いだと、相手は槍を引いて抜くこともできない。つまりもう攻撃できないはず。


 (あらた)はわき腹に突き刺さった槍を無視して、もう一度棍棒を叩きつけた。さらによろける槍ゴブリン。


 もう一度、そしてもう一度と、何度でも棍棒を叩きつける。槍ゴブリンはついに槍から手を離して膝をついた。さらに追加で数発、巨大棍棒をお見舞いすると、槍ゴブリンはサラサラと砂のように崩れて消えていった。



「大丈夫ですか、(あらた)! かなり血が……」

「分かんないけど、多分すぐに死んだりしないと思うよ」


 脇腹にはまだ槍が刺さったままだ。そう言えば購買で万能包帯っていうのを買っておいたんだったっけ。試しに使ってみるか。


「治療したいから、この槍、引っ張って抜いてくれる?」


 木綿花(ゆうか)に手伝ってもらって槍を抜くと、傷口からドバドバ血があふれ出てきた。


 うわ、これは急がないと危ない。


「たしかこれ、傷口に当てるだけでいいんだよな」


 購買で教えられた通り、万能包帯を脇腹の傷に押し当ててみる。


「うわ、なんだこれ。勝手に巻き付いていくぞ?」


 特に何かしたわけでもないのに、ブレザーどころかシャツの中にまで勝手に潜り込んで巻き付いていく。ボタンも開けてないのにどこから入り込んだのやら。


 そして丸々一本が巻き付き終わると、かなり痛みが和らいできた。シャツをめくって傷口辺りをみると、出血も止まってるっぽい。


「まるで魔法みたいな包帯だな」

「……今のは?」


「ああ、万能包帯っていうみたい。購買で安かったから買ってみたんだ。すぐに治るわけじゃないけど、かなり良い感じだよ」


「へえ、それじゃあグループで買いそろえた方がいいかもね」

「それじゃあ、学校に固定グループ申請しましょうか。固定グループだと口座だって持てるし、資産管理が楽になりますよ」


 資産管理……、うん、面倒くさそうだ。そういうことは木綿花(ゆうか)に全部お任せしたい。


 音羽(おとは)都久詩(つくし)の二人も雑魚ゴブリン狩りを終えて駆けつけて来たようだ。ビー玉もしっかり拾い集めてきた模様。


「旦那様の戦い、すっごく恰好良かったよ! あんなに近くで避け続けるなんてびっくりだよ」


 どうやら都久詩(つくし)は雑魚狩りをしつつ、(あらた)の戦いを見学していたらしい。一体どんだけ余裕なんだよ。


「ああ、ありがとう。最後は一発もらっちゃったけどね」


 なんとなくだけど、もしも都久詩(つくし)なら一発も攻撃を受けることなく、とっとと近づいて首をはねてるような気がする。



「それじゃ宝箱だね! すっごく楽しみ」


 見たところ罠などは無さそうだったので、そのまま都久詩(つくし)に任せることにした。


「えっと、何これ? 鎧の一部、かな?」

(すね)当てじゃないでしょうか」


――頑丈な脛当。キックの時の衝撃を抑制する。


「キックの時に便利そう。音羽(おとは)が使うと良い感じかもね」

「それなら私が貰うわね」


 あとは(あらた)の脇腹に刺さっていた槍だ。無骨な作りだけれど、それだけ頑丈そう。


「僕にはこの棍棒があるし、都久詩(つくし)には刀があるよね。音羽(おとは)木綿花(ゆうか)、どっちか使ってみる?」

「私はパス。敵と少し離れて戦えるから、木綿花(ゆうか)が使った方がいいんじゃない?」


 木綿花(ゆうか)はちょっとどんくさい。音羽(おとは)の言い分には一理あるけれど、刃のついた武器だと自分を突き刺しちゃったりしないだろうか。そこだけが心配だ。


「えっと、それじゃあ私が使ってみますね」


 本人はちょっとやる気みたいなので、任せた方がいいかな。



 ここまでの戦いと今のボス戦でみんなのレベルが上がり、(あらた)はレベル十六、音羽(おとは)木綿花(ゆうか)はレベル十五、都久詩(つくし)はレベル十四になっている。


 ここまで、危なそうなこともあったけど、とっても順調に成長してるように思う。


 ただちょっと気になることはある。授業では初心者(ノービス)レベル三ぐらいになったら第二階層という話だった。


 やっぱり何かがちぐはぐだ。このまま放置しても問題ないのだろうか。


 それとも何かが起こっているのだろうか。



――――――――――



若草(わかくさ)(あらた) 見習い《ノービス》十四→十六

 装備: 簡易防具、巨大棍棒、聖者の瞳


鳴神(なるかみ)音羽(おとは) 初心者(ノービス)十三→十五

 装備: 簡易防具、頑丈な篭手、頑丈な脛当、棍棒、ビキニアーマー(黄)


坂江(さかえ)木綿花(ゆうか) 初心者(ノービス)十三→十五

 装備: 簡易防具、無骨な槍、ビキニアーマー(白)


不知火(しらぬい)都久詩(つくし) 見習い剣士(ノービス)十→十四

 装備: 簡易防具、無骨な刀、ビキニアーマー(水色)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ