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底なしダンジョン学園にようこそ! なんて言われても困るんだけど(仮)  作者: 大沙かんな


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127.不戦勝

 場所は第一闘技場、クラブ対抗戦の本戦が行われているメイン会場、その控室。


 そこでは筋肉の塊のような巨人たちが数人、たむろして次の試合を待っていた。


 彼らはクラブ『筋肉(マッスル)ダイナマイツ』の部員たち、乙種クラブの中では最上位に位置しており、一部の甲種クラブよりも強いのではないかと言われている筋力パワー軍団だ。


 そんな上位クラブの選手ともなれば全員が四年生や五年生である。そのレベルだって非常に高い。


「ちょっと待て、おい、俺たちが不戦勝? ふざけてんのか?」

「ふざけてない。相手が不戦勝になっていて、進出権がないのだ」


「構わんから戦わせればいいだろうが!」

「その通りなんだが、それだと不戦勝の奴が次の試合に出ても良いことになるぞ?」


 彼ら『筋肉(マッスル)ダイナマイツ』と話し合っているのは、クラブ対抗戦を主宰する決闘管理軍団。普通の意味でのクラブではないけれど、彼らもまた最強の一角だ。


「そいつらが不戦勝になったのが悪いってことか? それならそいつらを戦わせて……」

「それがだな、そいつらの相手も不戦勝になっているのだ」


「ん? どういうことだ? もしかして……」



 ここまで話して、『筋肉(マッスル)ダイナマイツ』にも、今ここで何が起こっているのかが理解できた。


「ああ、その『もしかして』が正解だ。第一回戦で不戦勝になったクラブがいてだな、そのせいでずっと不戦勝が続いている」

「おいおい、それじゃああれか? この後、今回のクラブ対抗戦は……」


「うむ。決勝戦は不戦勝になる」


 伝統あるクラブ対抗戦、その決勝戦が不戦勝になる? そんなことが許されるわけがない。


 だからといってどうする? 不戦勝で勝ち上がったヤツが上位に挑戦する、そんな卑怯なことを認めるというのか?


「最初に不戦勝を選んだザコを叩きのめせばいいだろうがよ!」

「それがだな、そいつらはちゃんと予選で相手をボコボコに叩きのめしているんだよ」


 この不戦勝問題、元をただせば予選でボコボコにした相手が、不正で本戦に出場してきたのが事の発端だったという。


 そんな相手との再戦などつまらん、という彼らの言い分を決闘管理軍団は受け入れて、不戦勝としたらしい。


「そいつらがザコなのは確かだが、その気持ちは理解できるな。つまらん戦いを強制されるぐらいなら、昼寝でもした方がマシだからな」

「うむ。とはいえ不戦勝は不戦勝だ。次の戦いに進ませるわけにはいかない」


 『筋肉(マッスル)ダイナマイツ』の部員たちにも彼らの気持ちは理解できる。簡単に言えば、相手がショボすぎてやる気がなくなったってこと。


 今さら上位進出権を特別に与えたところで、そいつらは出てこないだろう。そんなことは戦士としてのプライドに関わる。


「決闘で引っ張りだせないのか?」

「そいつらのクラブは一年生が主体だ。上級生が決闘を申し込むのか? まだ入学したてのレベルが低い奴らに?」


 それこそ戦士としてのプライドが引っ繰り返る話になってしまう。


「他の上位クラブは? 八強はなんて言ってるんだ?」

「お前らと同じだよ。みんな頭を抱えている」


 八強、それは戦力最上位に位置する八つのクラブ、または生徒の団体のことを言う。風紀委員軍団を傘下に持つ生徒会や、こうしてクラブ対抗戦を仕切っている決闘管理軍団もまた八強の一員だ。


「あああああっ! 難しいことはどうでもいい、そいつら無理やり引っ張り出してこいよ!」

「ははは、八強たちもみんな、同じことを言いだしてる。で、どうするんだ?」


「ん? どういう意味だ?」

「不戦勝になった『筋肉(マッスル)ダイナマイツ』さんとしては、八強の命令にホイホイ従って、次の試合に出場するのか?」


「そんな恥ずかしい真似、するわけないだろうが!」

「だよな」


 結局、他のクラブと同じように、『筋肉(マッスル)ダイナマイツ』は黙って不戦勝を受け入れた。


 受け入れた瞬間、彼らの目標であった甲種クラブへの挑戦、そして甲種への昇級は完全に夢と消えた。


 この不戦勝問題を引き起こしたクラブ『たかはし』の名前を、その魂に強く刻むとともに。


「『たかはし』だと? そんなふざけた名前のクラブ、木っ端みじんにぶっ潰してやる!」



 ~~~~~



 (あらた)たちのクラブ『たかはし』のメンバーたちは、クラブ対抗戦の本戦を終えて、拠点へと戻ってきていた。


 彼らが選んだ不戦勝、その結果として何が起こったのか。そんなこと(あらた)たちは知る由もない。そもそもルールの方がオカシイのだ。


 今までずっと不戦勝が問題にならなかったのは、単純な話として、今までずっと誰も不戦勝を選ばなかったからに他ならない。そんなことの責任まで(あらた)たちが取らなきゃならない理由もない。


 拠点での建物建築は思ったよりも急ピッチで進んでいる。木造二階建てのかっちりした洋館、その柱などの骨組みが組み上がっている。まだ屋根も乗っていないし、壁もできてないけどね。



「そろそろ魔巌洞(ダンジョン)の時間だね」


 クラフター組に声をかけてみると、調理師の陽菜(ひな)と裁縫師の亜紗(あさ)が一緒に来ることになった。


 ただ今攻略中の領域では、定期的に三十分づつ潜るだけで、長時間の戦闘にはならないんだけどね。



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