123.予選開始
拠点の設営を進めつつ、魔巌洞を踏破していく。そんな毎日を過ごしているうちにクラブ対抗戦、その予選が始まった。
予選の方法はとっても単純明快だ。各クラブから五人の選手が出て、一対一の勝ち抜き戦を行う。なんにしても五回勝てば次の試合に進めるし、選手が全員負けたらそこで終わりってわけ。
一人で相手を全員倒してもいいし、5人全員が出場して一人づつ倒していってもいい。
「つまり、目の前の敵をぶっ叩けばいいってことでしょ?」
「いかにも!」
話を聞いてみると、本当にその通り、らしい。頭の中まで筋肉が詰まった、いわゆる脳筋な新たち戦闘職にとっては、大変分かりやすくて素晴らしいルールだ。
トーナメント表なんてものも、予選には無いそうだ。ただ、目の前に現れたクラブをぶちのめしていくだけ。五つか六つほど他のクラブをぶちのめせば、それで予選通過だ。
「ほら、早く行かないと、敵がいなくなっちゃうよ?」
「うん、分かってるって、ああもうっ、耳を引っ張らないでっ!」
予選期間は一週間ほどあるけれど、できるなら早めに行った方がいい。そうしないと相手がいなくなってしまうのだ。
「三日目から始めるのが良いとか、眉唾ものの攻略法があるかな」
「去年は最終日になってから予選を始めたクラブが、勝ち上がったって話題になったよね?」
「あれは出来レースだったって話ですよ。ウワサですけど」
「えええ? 何か裏があったってこと?」
いったいどんな秘密があったんだろう。どれもこれもうわさでしかないし、本当の事なんて分からない。
でも誰にでもわかる単純な法則はある。
強ければ勝つし、弱ければ負ける。ただそれだけのことなのだ。
新たち『たかはし』のメンバー八名と、武士たちオブザーバーの四名は、クラブ対抗戦の予選が行われる闘技場が立ち並ぶ領域へと向かう。
闘技場のある辺りまで行ってみると、結構な賑わいを見せている。
「ほら、新、あそこが受付みたいですよ」
周りに比べて特に人が多く集まっている場所、そこで参加を受け付けてもらえるようだ。
受付には三人ほど係の人が立っていた。三人とも見た目がかなりイカツイ。恐らくだけど、決闘管理軍団か、風紀委員軍団の皆さんだ。めちゃくちゃ強い人たちなので逆らっちゃ駄目なヤツ。
備え付けの参加申込書に名前を書いて、三人のうち、やたらと目つきの鋭い人に手渡す。
なぜその人を選んだのかって? あとの二人は、めちゃくちゃ目つきの鋭い人に、驚くほど目つきの鋭い人だったんだよ……。誰を選んでもそんなに変わりなかったってだけだ。
「お前らは第七闘技場だな、頑張ってくれ」
「はい、ありがとうございます」
参加申込書に大きな受付印が押されて、手元に戻ってくる。戦いに勝てばこの紙に勝利のスタンプを押して貰える。そのスタンプを集めるのがこのクラブ対抗戦の予選だ。
指定された第七闘技場に行って、そこで係の人に受付印が押された申込書を渡す。
「すぐ試合だ、そのまま闘技場に入ってくれ」
なんと! 待ち時間も何もない、そのまま戦いになるとはちょっとびっくりだ。
案内されるがままに闘技場の奥に入ると、なぜかそこには見知った顔が並んでいた。
「あれ、春陽と穂乃香じゃないの。奇遇だね!」
「新! なんであんたがここにいるのよっ!」
「何でって言われても……、決闘管理軍団の人に案内されて?」
どうやら新たちの新設クラブ、『たかはし』の初戦の相手は、朝霞姉妹のグループってことらしい。
「何でもいいから、早く終わらせちゃいましょ」
「あら? そんなこと言って良いのかしら? 負けて終わるって意味なら分かるけど?」
この最初の試合では、新たち『たかはし』の先鋒は音羽だ。
そんな彼女の言葉が『ザコ』という意味に聞こえたのか、負けず嫌いの春陽が噛みついた。
「だよね、だよね! 音羽なんて、パッとやっつけてくれていいよ!」
なぜか都久詩まで春陽を応援し始めた。
実は都久詩、ジャンケンに負けてしまったので、第一試合は二番手ってことになっているのだ。つまり音羽が負けない限り、次の試合まで出番がない。
こちら側の先鋒、一番手の音羽に対して、朝霞姉妹の側の一番手は姉妹のどちらでもなく、仲間の女子生徒だ。
この学校の闘技場、実は魔巌洞の一部になっている。だから大怪我をしても外に出れば完治する。つまり即死でない限り、緊急退出させるだけで完全無事、安全な戦いができるってこと。
「音羽、分かっているとは思いますが、この辺りで彼女たちには、しっかり現実を教えてあげるようにしてくださいね?」
「うわ、木綿花……、そこまで言っちゃうんだ?」
そこまでする必要はあるのか、音羽はそう思ったけれど、対戦相手のこちらを小馬鹿にする表情を見て、少し考えを変えた。
これはちゃんと教えてあげないといけない。




