121.強化プラン
新たち四人を自分たちのクラブに勧誘しに来た朝霞姉妹。
だけど新たちはクラフターの三年生たちと一緒になって、すでに自分たち自身のクラブ『たかはし』を設立してしまっていた。
確かにわざわざ連絡したりしなかったけどね。
というか、特別講習を終わってすぐの話だったし、彼女たちのグループの方がこっちを馬鹿にして距離を取った時だったし。巡り合わせが悪かった、縁が無かった、それもこれも運、ってことだよね。
二つのクラブに同時に加入することはできないので、このままだとどうにもならない。クラブの掛け持ち禁止は校則で決まっている事なので仕方ないのだ。
「それじゃ、私たちのクラブを解散して、そちらに合流するっていうのはどうかな?」
「ええっとそれは……」
ちょっと困るというか、強引すぎるというか。
「……まずは春陽と穂乃香の二人だけ、他の人はそれぞれ別に考える、っていうのなら問題ないですよ」
ここで木綿花が会話に参戦してきた。
新だけでは情で押し切られると思ったのだろう。彼女だってクラブの副部長、しっかり発言権はあるのだ。いや、こういう時はどちらかというと新よりも頼もしい。
「それは……困るな。まとめて何とかならないかな?」
「それは無理ですね、こちらにはこちらの事情がありますから」
穂乃香にしっかりと断られた春陽が、新に視線を投げかけてくる。なんとか彼女に意見してくれって意味だろうけど、新だって穂乃香の意見に賛成なのだ。
いくらそんな目をされたって、判断は変わらないよ?
新からしてみたら、春陽と穂乃香、二人だけなら受け入れても何の問題もない。ただ、二人の仲間の女子生徒たちが苦手なだけ。
彼女たちは何ていうか、例えるなら、人の家にドカドカ押しかけてきて、勝手に冷蔵庫を開けて中身を漁っていくというかなんというか。そんな感じがするんだよね。
クラフター組のみんななら、朝霞姉妹のグループ全員を受け入れるって言ってくれるかもしれない。でも新自身が嫌なんだから、そのために動くわけがなかった。
がっくりと肩を落としてトボトボと引き返していく春陽と、姉を慰めながらついていく穂乃香。彼女たちはクラブ対抗戦までに、戦力の増強はできるのだろうか。
朝霞姉妹の『エメラルドの風』だけじゃなく、各々のクラブがそれぞれ勧誘合戦を繰り広げていた。
クラブ側からすると、強い人に入って欲しいけど弱い人はお断り。でもクラブに入る生徒側からしてもそれは同じで、弱いクラブに入る価値はほとんどない。
つまり弱いクラブには弱い人しか入って来ないんだから、勧誘で即戦力を増強するなんて、かなり無理な話だったりする。
最底辺クラブが成長するには、自分たちが強くなって、そして一つ上のランクである丙種に上がる、実を言えばそれしか道はないのだ。
そんな現実の前には、夢や希望なんてどこにもなかった。
新たちには新たちで、別の問題があった。クラブ対抗戦の選手は五人、誰を選手にするのか。
新、音羽、都久詩の三人、そして木綿花。ここまではいい。だけどあと一人はクラフター組から出てもらわないといけない。
どうやって選べばいいんだろう。
「もちろん、私が出るよ! こう見えても、副部長だもんね!」
クラフター組から名乗り出たのは、調理師の陽菜だ。
「一番小さくて弱そうなんですけど……」
「あああっ! 気にしてることをっ! そういうこと言っちゃ駄目なんだぞ!」
見た目だけで判断すると、木工師の由樹が一番強そうに見えるだろう。巨大な丸太を何本も肩に担いで動き回ってる。なんとなくだけどパワーファイターって感じ。
毎日のように巨大な草刈りガマを振り回している、栽培師の穂も捨てがたい。気が付いた時には命ごと刈られてそうだ。
「心配しなくても大丈夫かな。クラフター四人の中だと、陽菜が一番お肉を捌くのが上手いから」
「そうそう。急所だって一発で絞めちゃうよ?」
なんだか違う話をしてない? 本当に大丈夫なんだろうか。でもクラフター組の意見は一致してるし、任せちゃうしかない。
新たち戦闘組だって、木綿花がどのくらい戦えるのか、かなり不安があることだし。
「大丈夫ですよ、予選は勝ち抜き戦ですから。私や陽菜どころか、新にだって出番はありませんよ?」
それってつまり、音羽と都久詩で終わっちゃうってこと? たしかにありそうで怖い。
「大丈夫だよ! ボクが全部片づけちゃうし、音羽にも出番はないからね!」
「何を言ってるんだか。先鋒は私でしょ?」
「ボクですよーっだ!」
「私でしょうがっ!」
ああ、もう! そんなことで、ケンカするのはやめようよ。交代でやればいいじゃないの!
決闘で決める? そんなの許さないよっ!




