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底なしダンジョン学園にようこそ! なんて言われても困るんだけど(仮)  作者: 大沙かんな


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120.他の人たちの事情

 クラブの新設ラッシュが始まっている。これは真神原塾社の恒例行事だ。


 この時期、ほとんどの新設クラブは一年生によるもの。解禁日を待ってクラブ登録したものってことだ。上級生なら別に時期を選ばずにいつでもクラブを設立できるからね。


 ちなみにクラブの作り方は、そのクラスによってまちまちだ。普通は(あらた)たち『たかはし』と同じような方法、つまり個人グループが複数組み合わさってクラブになる。


 それとは違って、一クラス男子十人女子十人、これでそのままクラブに登録するような場合もあった。クラブ『ワイルド・ボア』を設立した一年亥組は、まさにその典型だ。


 同じような感じで、でも男女の仲が険悪になっている例もある。それが一年申組。男子は男子だけで『ワールド・エンド』というクラブを立ち上げていたし、女子は女子だけで『おとめ座』という名前のクラブを作っている。


 つまり一年生のクラブと言っても中身は千差万別。ただし強さは五十歩百歩ってところだった。



 ちなみに最下位ランク(丁種)クラブは、なにも一年生による新設クラブだけじゃない。上級生が作った新設クラブだってあるし、去年のクラブ対抗戦で負けて丁種のままで過ごしてきたクラブだってたくさんある。というよりも、そっちの方が多数派だ。


 そんなクラブたちが手ぐすね引いて待っている、それがクラブ対抗戦。その予選と言われる丁種同士の戦いなのだ。


 朝霞(あさか)春陽(はるひ)が率いる『エメラルドの風』もそんな丙種クラブのうちの一つ。ただここの場合はちょっと他とは事情が違っていた。



春陽(はるひ)、あっちもダメ、こっちもダメ、クラブ合併に乗ってくれるところなんて、ぜんぜん見つからないよ!」

「やっぱり男子たちを追いだしたのは間違いだったんじゃ……」


「そんなこと言ったって、アイツらとは一緒にやれないってみんなも言ってたじゃないの」

「それはそうなんだけどさぁ……」


 元は男女のバランスも良く、戦力的にも二年生にしては高くて、一つ上のランク、丙種も狙えそうな位置につけていた『エメラルドの風』だったけれど、今では朝霞(あさか)姉妹と五人の仲間だけの小さなクラブに変貌している。


 こうなった理由ははっきりしている。元のクラブメンバーの男子たちが入学してきたばかりの新入生、(あらた)と無理やり決闘をして、惨敗してしまったことが原因だ。


 その決闘で男子たちが朝霞(あさか)姉妹とのステディ権を賭けて、失ってしまったのが一番の問題だった。当然のことながらケンカになって、男子たちとはクラブを割ることになった。


 出ていった男子たちは男子たちで、どうやら別のクラブを立ち上げているようだけど、そっちもどうやら微妙な模様。最低ランク(丁種)を脱出できる見込みは無さそうだ。



「こうなったらもう、(あらた)たちを引っ張り込むしかないわよ」

「それはちょっと……、私はやめた方がいいと思いますけど」


 まるで破れかぶれのような春陽(はるひ)の言葉に、妹の穂乃香(ほのか)が反対を唱える。


 どうも春陽(はるひ)は覚えていないようだけれど、あの決闘の後の話し合いでは、彼らとの合流は仲間の女子生徒たちが自立してから、ということになっている。


 それを無視して仲間ごとお世話になるような言動をしたり、逆にこちらがお世話をしているようなことを言ったりするたびに、(あらた)たちの態度は冷たくなり、どんどんこちらから離れている。穂乃香(ほのか)はそう判断していた。


 少し前の遭難のこともあるし、ここで変な要求を入れでもしたら完全に関係を切られるかもしれない。そうなってもちっとも不思議じゃないのだ。強い知り合いに関係を切られるのは絶対に損、やめた方がいいに決まっている。


「そうは言ってもねえ。お願いするだけ、押し付けたりしないなら問題ないでしょ」

「はぁ……、またすぐに調子に乗って。私はどうなっても知りませんよ?」



 そんな朝霞(あさか)姉妹がちょっとした作戦を練りつつ、(あらた)たちの元にやってきたのは、お昼休みのことだった。


 一体またどんな用事でやって来たんだろう? そう思いながらも(あらた)は彼女たち姉妹を普通に出迎える。


「どうなるかと思ったけど、無事に元気に戻ったみたいで良かったね」

「ええ、おかげさまで。あの時はありがとうございました」


 わざわざ救助のお礼に来たんだろうか。そんなことしなくても別に問題ないのに。


「今日来たのはその事じゃなくて、別にお願いがあって……」

「ん? なに?」


 まあ、そりゃそうだよね。お礼だけだったら、そっちの方が驚きだ。


「私たちは『エメラルドの風』っていうクラブを作っているんだけど、そこに入りませんか? っていうお誘いなの。(あらた)たちは戦闘職が四人でしょ? クラブ対抗戦は五人必要だし、そうすれば少しは私たちも役に立てるかと思って」


 ああ、そういうことか。別に悪い話じゃないね。でもねえ……。


「残念ながら、もうクラブ作っちゃったんだよね」

「えええ、そんなぁ。作るの早すぎでしょ!」


 クラブの掛け持ちは禁止されてるから、もう入りたくても入れないんだよね。この学校、手抜きなくせに変なとこだけ厳しいから困っちゃうね。




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