118.クラスの女子会
昼食後は武士と連れ立って拠点候補地に顔を出してみる。
女子組は女子会真っ最中だろうしね。あんまり邪魔をするわけにはいかないのだ。
クラフター組の四人はすでに集まっていて、それぞれ作業を始めようとしているところだ。
「こんにちは。何かお手伝いできることってある?」
「あ、ちょうどいい所に! それじゃ、杭打ち手伝って貰おうかな」
木工師の由樹にお願いされたのは拠点周囲の柵作り、その基になるように等間隔に杭を打っていく作業だ。あとから杭に木の板を打ち付けて、柵にしていくらしい。
「ちょっと待っててね、まずはハンマー作っちゃうから」
おお、ハンマーから手作りしていくのか! ……って、よく考えてみたら、柵作りより、ハンマー作りの方が木工っぽい感じだよね。
横から見ていると、切り倒された木材の山から、みるみるうちに大型のハンマーが、そして木の杭が続々と生み出されていく。
新たちの仕事は、杭を拠点の周辺に運んで、だいたい同じくらいの高さになるように地面に打ち付けていくだけ。結構な高さがあるので、ちゃんと木製の脚立も用意されている。
武士と二人で抑え役、打ち付け役を交代しながら、拠点の周囲を杭で囲っていく。
「二人とも、そろそろ片づけ始めないと、授業の時間だよ!」
「ええ? もうそんな時間?」
時計を見ると、そろそろお昼休みも終わる時間になっている。
新はこのしばらく後に魔巌洞に向かうことになっているのでいいけれど、武士やクラフター組の四人は授業に行かないといけない。
「それじゃ後は僕がやっとくよ」
「新、お前、授業に出ないのかよ、ずるいぞ!」
そんなこと言われてもねえ。午後の授業は実技だから途中で退出しにくいのだ。たとえば持久走の最中に「それじゃ後はよろしく~」って抜けだしたらどう思う?って話。
そんな話をしてたら、本当に持久走だったらしい。
「裏切者め~~っ!」
運動場の方からそんな叫び声が聞こえてきたような気がする。
彼らが授業に向かってしばらく、抑え役なしで一人えっちらおっちら杭打ちを続けていると、音羽たち三人が拠点候補地にやってきた。
「なによ新、一人だけ拠点づくりに参加しちゃって、ずるいわよ! 私たちにもやらせなさいよね」
「うん、ボクたちにも権利があるよね!」
せっかくの柵作りは、あっさり音羽と都久詩に奪われてしまった。もうしょうがないなあ。
交代するだけだからね? あとでまた代わってもらうからね?
それに、ずるいって言われても困ってしまう。女子会に参加するわけにはいかなかったんだから、許して欲しい所存。
「女子会が面白くなかったから、二人とも少し荒れているんですよ」
「えええ? 面白くなかったって、どうして!」
女子会って女の子だけでワイワイというか、キャッキャウフフって楽しむものじゃなかったの!
「それがですね、今一つ盛り上がらなかったんですよね」
「ありゃりゃ、そりゃ残念だったね」
何があったか知らないし、詳細を聞くつもりはない。そんなの教えてもらったって面倒くさいことになるだけだ。
女子会は女子会。新のような男子が口を出す領域ではないのだ。
ただねえ、音羽と都久詩だけじゃなく、木綿花もご不満が溜まっているご様子。とりあえず巻き込まれないように、適当に相槌だけ打っておくのが吉だ。
「適当に聞き流しておこうって魂胆ですね?」
「い、いや、そんなことはないよ」
バレてるし!
「実は女子会でですね~」
「いや、ほら、そういう話はやめとこうッていうか……」
「本当に困っちゃう話でですね~」
「だめだって、女子会の話は。女子限定なんだってば」
聞いちゃ駄目だ、聞いちゃ駄目だぞ。
「そんな、ちゃんと聞いてくれないと~」
「だめだめっ! 聞こえな~い」
両手で耳を塞ぐ。絶対に聞かないぞ!
しかし木綿花もそれぐらいじゃ引き下がらない。新の手を耳から引きはがしにかかってくる。待って、それ本気パワーじゃないか!
そんなことに負けてはいられない。新さらに両手に力を入れる。
うおおおおっ! 絶対に耳は死守だ! 死守っ!
…………。
……。
「あんたたち、何を乳繰り合ってるの……。昼間っからサカってないで、そろそろ時間よ?」
「あらあら、もうそんな時間ですか」
まるで何事もなかったかのように、木綿花が新から離れる。
「ほら、新は鎧を着るんでしょ? 待っててあげるから、早く準備しなさいよね」
「うわわわ、ごめん!」
なんだかちょっと納得できないような、そんな気がしないでもないけれど、急いで鎧に着替え始める。
杭打ち作業の方は、というと、ちゃんと後片付けが終わっていた。まだ打ち込んでない木杭は一ヶ所にまとめてあるし、巨大ハンマーと脚立は小屋の中に片づけたそうだ。
この定期的にチョコっとづつ魔巌洞に行く感じ、やっぱり全然慣れないわ。




