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底なしダンジョン学園にようこそ! なんて言われても困るんだけど(仮)  作者: 大沙かんな


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114.卵魔法の結果

 ここは第零階層、相手の魔法は得体が知れないけれど、ボスゴブリン自体はそれほど強いわけでもないはずだ。


 まずはこいつを安全に倒す。卵について考えるのはそれからだ。


 そう考えを絞ったら、問題はただ一つ、相手の卵魔法。本当にそれだけ。


 都久詩(つくし)は簡単に考えろと言うけれど、簡単に考えても、難しく考えても、全然いい手が浮かんでこないんだよね。


「手なんて考えずに、石を投げてみようよ、ってこと!」

「まずやってみるってわけね、了解よ!」


 音羽(おとは)が腰のポーチから手ごろな石を取り出して、ビュッとばかりにゴブリン目掛けて投げつける。


 その石は見事ゴブリンボスに命中……とはいかず、足元に転がっている卵の一つにぶつかった。


 ゴキッ!


 なんだか鈍い音を立てて、石はぼてっとゴブリンの足元に転がった。


 ゴブリンが腹を抱えて笑っている。なんか腹立つなあ。


 石が当たったタマゴにはヒビが入った模様。さすがの威力、といいたいとこだけど、あの卵って割れちゃったら中身はどうなってしまうんだろう。そこは見なかったことにしておく。


「卵が、ああ卵が、何してくれてんのよ! 人殺し!」


 見なかったことにできなかった人が一人。気持ちは分からなくもないけど、黙っててくれないかな。


 あの卵って割った方がいいのか、割らない方がいいのか、それさえもまだ分からないんだから。



 ゴブリンボスはいまだに笑っている。


 その態度が頭に来たのか、音羽(おとは)が石をどんどん投げ始めた。さすがに倒すところまではいかないけれど、そこそこダメージを与えているようだ。


 もちろんいくつかは卵に当たっている。でも音羽(おとは)はそんなことを気にする様子はない。どんどん石を投げこんでいく。


 あ、また卵に当たったよ。本当に大丈夫なのかな、さすがに心配になってくる。


〈いかんっ! 避けよ!〉


 え?


 卵に気を取られすぎていた(あらた)のすぐ目の前に、卵型の魔法弾が向かってきていた。体をひねって避けようとするけれど、とてもじゃないけど、もう避けきれない!


 シャキンッ!


 さらに目の前に剣閃が走る。都久詩(つくし)だ。


 卵の魔法弾は都久詩(つくし)の刀で真っ二つにされて、空中に消えていく。


「うわぁ、危なかった! ありがとう、助かったよ」

「もう、よそ見しすぎだよ!」


 その通り、申し訳ない。


 でもその代わりに、ゴブリンボスの魔法は剣で切れる事が判明した。一気に味方の安全度が上がる。



「ボクも投げちゃうもんねっ!」


 さらには音羽(おとは)だけじゃなく、都久詩(つくし)も投石に加わり始めた。


 第四階層の水たまりの前で、妖獣ワニーの群れを目掛けて石を投げ続けてきた二人組だ。もちろん百発百中とはいかないけれど、その石(つぶて)はかなりの精度、そして恐ろしいまでの威力でゴブリンボスに襲い掛かる。


「うわ~、卵が~、卵がぁ~っ!」


 石が卵に当たるたびに春陽(はるひ)が暴れだすので、取り押さえるのに大忙しだ。だから外で待ってろって言ったのに。


 木綿花(ゆうか)の眼に殺気が籠り始めてるから、ほんとにやめて欲しい。実際問題、これは冗談でも何でもない。何よりこっちの身が危険だ。これ以上暴れるようなら非常手段を取るしかない。


 まるで荒れ狂うような投石の嵐に、反撃しようと杖を構えなおすゴブリンボス。その手の杖にバシッと音を立てて石(つぶて)が命中した。ゴブリンボスの手から杖が吹き飛ぶ。


「今だ、突撃ッ!」


 魔法の杖さえ止めれば、もうこっちのモノ。


 真っ先に飛び込んだ音羽(おとは)のミドルキックを受けて、ゴブリンボスはあっけなく砂になって消えていった。



「あれれ、杖も消えちゃったよ」


 ボスの武器はドロップアイテムになることが多いのだけど、卵魔法の杖は残らなかった。こちらも砂のように崩れて消えていく。


 見ていた感じ、卵の部分に石が当たってバラバラになった気がしたし、壊れちゃったのがドロップアイテムにならなかった原因かもしれない。


「卵はそのままみたいね」

「杖が壊れちゃったからかな?」


 ヒビが入った卵もあるけれど、割れるには至ってない。だからどうしたという話でもある。どちらにしても卵は卵のまま、中の人間が出てきたわけではなかった。


「なあ、卵……、元に……戻らないのか? なあ?」


 あんなに暴れていた春陽(はるひ)だったけど、ゴブリンボス討伐後にも卵が元に戻らないので、心が折れてしまった様子。


 卵がどうなるかなんて、そんなこと聞かれても(あらた)に分かるわけがない。こっちが聞きたいくらいだ。何より聖者の瞳の鑑定だって何も教えてくれないんだから、どうしようもない。


 まだヒビの入っていない、無傷の卵を撫でてみる。この中に人が入っているのか。そう思うと、何だかほんのりと暖かいような気がしてくる。でもこれはおそらくただの感傷。


 このまま持ち出して、専門家に任せるしかないのだろうか。


 それとも……。



 その時突然、聖者の瞳が強く反応した。


 え? もしかして卵に触ったから?


――卵魔法の檻。割れば中に入っている人が出てくる。中の人が命を落とすまで、あと五十七秒。


 中に人? 生きてる? そしてタイムリミットが……ヤバい、急がないと!


「みんな、すぐに卵を割って! 時間切れになっちゃう!」




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