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底なしダンジョン学園にようこそ! なんて言われても困るんだけど(仮)  作者: 大沙かんな


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113.卵魔法のボス

 春陽(はるひ)の妹の穂乃香(ほのか)、そして仲間たちが全員、第零階層のボスのタマゴに捕らえられてしまったという。


 はっきり言うと意味不明、何のことやら全くわからない。


 でも、そのボスは部屋の外には出てこないし、部屋の外までタマゴを飛ばしてくることも無かったという。それなら様子を見に行っても大丈夫、安全なはず。


 最悪の場合、タマゴに捕まった人たちは戻って来ないかも知れない。でも冷たいようだけど、ここは魔巌洞(ダンジョン)攻略を目的とした学校、真神原塾社なのだ。それも運命だと諦めるしかない。今この場で口に出して言わないけどね。


「で、どうする? まずは状況確認しないとどうしようもないと思うけど」

「正直なところ、あの人たちのために体を張りたくはないわね」


「でも穂乃香(ほのか)だけは助けたいと思いませんか?」

「それもそうだけど……様子見に行くだけなら」


 穂乃香(ほのか)を除けば、かなり態度の悪かった人たちだ。このまま魔巌洞(ダンジョン)で砂になって消えても、それほど大きな問題じゃない。


春陽(はるひ)はどうしたい? 僕はここに残った方がいいと思うんだよね」

「もちろん私も行くわよ!」


 どうもまだ混乱しているみたいだし、情緒不安定気味でもある。このまま連れて行って現場で暴れ出されても困る。


「なら絶対に個人行動しない事。勝手に突っ込んだりしたら見捨てるからね。それが守れないなら僕たちに頼らずに一人で何とかして欲しい」


 これは最低限の決め事だ。


 また泣き出して暴れ出すかと思ったけれど、春陽(はるひ)は静かに頷いた。


都久詩(つくし)もそれでいいよね?」

「……うん、いいよ」


 軽く答えたように見えるけど、彼女の表情は硬い。音羽(おとは)と同じく、積極的に助けに行きたくないという思いを感じる。


 何を隠そう、いや何も隠していないけど、(あらた)だって同じ気持ちだ。特別講習を受けたってだけで、あの人たちにはかなり(さげす)まれたからね。


 穂乃香(ほのか)も一緒に捕まったんじゃなければ断ってたと思う。


 助けたところで何のメリットもないし。


「それじゃ、突入しようか」


 制限時間は三十分。さて、まずは様子を見に行くことにしようか。



 第零階層は自然洞穴風、壁も天井も、そして地面もごつごつした岩が飛び出た洞窟になっている。そして天井のあちこちに無数の卵がへばりついている。その卵の下に行くと、急に卵が孵化してゴブリンが降って来る仕掛けだ。


 上から降り注いでくる大量のゴブリン。最初に戦った時は強敵だったけれど、今となってはまったくなんてことはない。


「平気で叩き潰してるけど、これって実は穂乃香(ほのか)の成れの果てだったりしない?」

「卵に捕らえられて、ゴブリン化してるってことですか? ありそうな話ですね」


 特別講習の闘技場では、ゴブリンだと思って倒した敵が、どうやら人間だったみたいな感じだからね。証拠も何も無いけど。


 なんだか嫌な雰囲気をまとったまま、ゴブリンを蹂躙しつつ進んでいく。そしてこんなときでもビー玉はしっかり拾っていく。


 春陽(はるひ)は早く行けと言いたくてうずうずしている模様。


 だけどこういうのってルーチンワークが大切だ。日ごろと同じことをやったほうがいいんだ。その方がリラックスできるというか、急ぎ過ぎないというか、普段通りの実力が発揮できるというか。


 別にチンタラやってるわけじゃないしね。



 卵から生まれ落ちてくるゴブリンたちは数が多いだけでまったく大したことがなく、あっという間にボス部屋の前にたどり着くことができた。


「で、あれね?」

「ゴブリン、だね」


 ボスゴブリンの姿は、今までと代わり映えのしないただのゴブリンだ。一応鑑定してみたものの、取り立てて語るような点はどこにも見つからない。


 背だって低くて特に大きいわけでもない。ただその手には、大きめの卵のような丸いものが付いた短い杖を握っている。


 そして周囲にはゴブリンよりも大きな卵が六個も転がっていた。あの中身が穂乃香(ほのか)たちに違いない。


「杖ってことは、卵の魔法かな?」

「そのようですね。射程距離はどのくらいでしょうか」


 一斉に春陽(はるひ)の方を見る。


「そんなの知るわけないでしょ! 気づいたらみんな、タマゴになってたんだから!」


 役に立たないお姉ちゃんだな。


 となると単体でそこそこ射程のある魔法を想定するしかない。数人が一気にやられたんだとしたら、連射性能もそこそこ高め。でも何度かに分けたとすると、一気に倒しきれるほどではない、そう考えてみる。


「やるなら一気に囲んで勝負するしかないかな。やり直しは効かない。チャンスは一回きりだね」


 こんなの、どう考えても危なすぎだ。卵になった後、元通りに戻れるかもはっきりしないし、ただの自爆じゃないかと思えてくる。


 こうなったら、まずは安全にボスを倒す。卵についてはソロあとゆっくり考えるしかない。



「それじゃ、まずはあのボスを倒す。それに集中しよう。何かいい手はないかな」


「飛び道具で狙えないかな?」

「私は持ってないわよ? 騎士だし。武器は大剣だし」


 春陽(はるひ)は騎士だけあって、全身鎧に包まれている。その鎧で卵の魔法をはじけるならいいけれど、そうじゃなかったらゴブリンに大剣を叩きこむ前に卵にされてしまうだろう。


「私の火の玉だと、倒しきれないと思います」


 (あらた)たちのグループだと、木綿花(ゆうか)が火の玉連射魔法を持っている。弾幕として、そして制圧力としてはかなりのものだけれど、敵を倒しきるには威力不足だ。


 相手の魔法は一撃必殺に近いと思っていい。となると、魔法の打ち合いだと味方の方が分が悪い。


 ちょっと困ったな。何かいい方法が無いものか。


「ん~、ボク、難しく考えなくていいと思うよ!」


 え? 都久詩(つくし)、それどういうこと?




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