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底なしダンジョン学園にようこそ! なんて言われても困るんだけど(仮)  作者: 大沙かんな


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105.作戦の成果

 購買でドローンと釣り竿を購入した(あらた)木綿花(ゆうか)は、石を集めに行っていた音羽(おとは)都久詩(つくし)と合流し、もういちど魔巌洞(ダンジョン)の第四階層、水たまり近くを目指した。


 魔巌洞(ダンジョン)に入り直しすると、中の敵の様子が変わることは少なくない。全滅させたはずの敵が再び群れをなしていたり、いたはずの敵がいなくなっていたり、ほんの短時間で考えられないくらい状況が大きく変わるのだ。


 今回は少し時間を置いたことが良かったのか、水中にもぐってしまって見当たらなくなってしまっていた妖獣ワニーが、また水際に集まって来ていた。


「これならドローンも釣り竿も、要らないかもしれませんね」

「そうだね、まずは石投げ作戦で行ってみようか」


「今度はちゃんと持ってきたから、任せてよね!」


 都久詩(つくし)が腰につけたポーチをポンと叩く。このポーチは小さく見えても中はとても大きく、山登り用の巨大リュック程度の容量がある。裁縫師の亜紗(あさ)が作ってくれた魔法の袋なのだ。


 そんな魔法のポーチを都久詩(つくし)の分と音羽(おとは)の分、二つを石で満タンにしてきたという。



「さあ、投げまくるわよ!」

「うん、やっちゃおう」


 ビュンッ! ビュンッ!


 二人の手から投げられた石は思っていたよりもはるかに速い。それはまるで剛速球投手のよう。


 バシッ! バシッ!


 しかも狙いを外すことなく、しっかり妖獣に命中する。さすがにレベルがあるので投石で倒せるほどではないけれど、これならかなり痛いはずだ。


「へへ~ん、ちゃんと練習してきたんだもんね!」


 ビュンッ! バシッ!


 おお、また当たった! すごいコントロールだ。


 都久詩(つくし)、そして音羽(おとは)の手から、どんどん投げつけられる石の嵐、妖獣ワニーにとったらたまったモノじゃない。五匹ほどが水際から離れ、(あらた)たちに向かって突進してくる。


 妖獣ワニーの突進は素早い。しかしそれは短時間だけ、彼らはずっと走り続けることはできない。(あらた)たちの手前まで来る頃には息切れしてしまい、突進は止まってしまう。


「これならっ!」

「楽勝だよ!」


 群れから離れた五匹は、あっさりと二人の手にかかって砂になって消えていく。


 音羽(おとは)都久詩(つくし)、二人のあまりの手の早さに、(あらた)にできることはといえば、妖獣を倒した後に転がったビー玉を拾い集めることぐらいだ。



「まだまだ行くわよ!」


 石が投げられては妖獣が突進、そして倒されて砂になっていく。水際を埋め尽くさんばかりだった妖獣ワニーの姿はみるみるうちに減っていき、ついにはほとんどいなくなってしまった。


「全滅できたかな?」

「わかりません。まだ水の中に潜んでいるのかも」


――沼のようになった大きな水たまり。妖獣ワニーが潜んでいる確率は七十パーセント程度。


 聖者の瞳で鑑定してみたけれど、はっきりしたことは不明だ。ただ恐らくまだ潜んでいるだろう。


「見えなくなっちゃったね」

「もうちょっと投げてみる?」


 追加で石を水たまりに向けて投げ込んでみたけれど、妖獣ワニーが出てくる様子はない。



「次は僕たちの番だね」


 ドローンを使って水をバチャバチャさせてみる? いや、石でだめならドローンでもそれほど効果はないに違いない。飛び掛かられて撃墜されてしまうのがオチだ。妖獣ワニーは見た目以上にジャンプ力があるからね。


 (あらた)はドローンではなく、長い釣り竿を取り出した。縮めると一メートルほど、伸ばせば十五メートルになるという長い竿だ。これを思いっきり伸ばして、遠くから水際をバチャバチャと叩いてみる作戦。


 釣り竿を順々に伸ばしていく。長く伸ばせば伸ばすほど、思ったよりも持ち重りがするというか、伸ばす前は軽かったはずなのに、ずっしりと重たく感じる。あまり自由に動かせない感じ。


 長い竿が水面に届くように少し前に出る。思惑通りに行けば、獲物がいると勘違いした妖獣ワニーが水の中から出てくるはず……


「よし、寄ってたぞ」


 大きな水たまりの水面から、妖獣ワニーの鼻と目と思しきものが顔を出す。もちろん一つや二つじゃない。それが一斉に水際に向かってゆっくりと向かってくる。


 さらにもう少しバチャバチャと水を叩いた後、(あらた)は竿を持ったまま後ろに下がる。ここまで来れば、あとは石をぶつければ誘えるはずだ。


「これなら行けるよ」

「任せて!」


 こちらの読み通り、石をぶつけられた妖獣ワニーは怒り狂ったように水から飛び出し、すごい勢いで突進してくる。巨大ワニの倍以上ある巨体、その迫力は半端ない。



 すぐに力尽きるけど。ほらね。


 あとは横に回り込んで、個別に倒すだけの簡単な作業だ。それをやっているのはもちろん(あらた)ではなく、音羽(おとは)都久詩(つくし)の二人。(あらた)はビー玉を拾うだけの簡単なお仕事だ。


 釣り竿で水をバチャバチャしては妖獣ワニーをおびき寄せ、寄ってきたところで石を投げて引き付けて倒す。あとはその繰り返しにすぎない。


 何度も何度も繰り返すうちに、水をバチャバチャしても寄ってくる妖獣ワニーが減ってきて、ついには一匹も出て来なくなってしまった。


「全部倒しちゃったのかな?」


――妖獣ワニーが潜んでいる確率は二十パーセント程度。


 鑑定してみると、まだ妖獣が残っている可能性があるらしい。所詮は聖者の瞳の鑑定だ。本当かどうかわからないけどね。




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