104.おびき出す方法
「水の中に引っ込んじゃったね」
火の玉で妖獣ワニーをおびき寄せるどころか、みんな水中に入ってしまった模様。なんとかして敵を水の中から引っ張り出さないといけない。こういう時には何か飛び道具があればいいのだけれど、そう都合よくは……
「えへへ、実は石をいっぱい拾って袋にしまってあるよ!」
「都久詩、ナイス! どの袋だ?」
「えっと、あれ? 魔法の鎧袋に……」
「それは……例の拠点の……」
魔法の鎧袋は、クラフター組に中身ごと預けてある。もちろん土偶キーホルダーも一緒だ。
「えへへ、置いて来ちゃった!」
都久詩が残念そうにしているけど、どうにもしょうがないよね。
水辺まで近づいて暴れてみるか。
ただ、もしも噛みつかれて水中に引っ張り込まれたら、命に関わることになる。陸上ならともかく、水中では絶対に妖獣ワニーにかなわない。
「これはかなり準備が必要そうですね」
「うん、ボクもそう思うよ」
こうなったら一度安全な所まで下がって、時間切れで外に放り出されるのを待つしかなさそうだ。
魔巌洞から出た新たちは、何らかの対策、そして準備を行うことになった。
「例の拠点候補地に行けば、都久詩が集めた石があるでしょうし、それに他の石もゴロゴロしてるんじゃないかしら」
「そうだね、行ってみよう!」
音羽たちはクラフター組が作業している拠点の候補地を回ってみる様子。
「それなら私たちは、購買で何か役立ちそうなものを探しましょうか」
「うん、それが良さそうだ」
音羽と都久詩が石集め、新と木綿花が購買でなにか役立ちそうなものを探すという分担。
「役立つものを探すのはいいんだけど、何が役に立つかなあ」
「やはり弓矢みたいな飛び道具でしょうか」
弓矢があれば遠くから敵を狙えるし、敵を釣り出すのにも使えそうだ。ちなみに購買で弓矢が売っているところを見たことは無い。
「売ってたとしても、使いこなせるかどうか、だよね」
「はい……、かなり練習が必要かもしれませんね」
購買に到着したので、レジのお姉さんに弓矢みたいなものがあるかどうか聞いてみた。残念ながら、やっぱり飛び道具は置いてない模様。こうなったらもう、石を拾いまくるしかないんだろうか。
いや、他にもいいものがあるかも知れない。新と木綿花は二人並んで、コンビニなんかよりもはるかに広い売り場を歩いてみてまわる。
「あんまり良さそうなものは見つかりませんね」
「そうだね……いや、待てよ。アレはどうだろう?」
「なんです、あれ。おもちゃ?」
「ラジコンのヘリ、っていうかドローンだよ」
新が指さしたのはドローン。空から紐を垂らして水面をパチャパチャさせれば、妖獣が寄って来るんじゃないだろうか。
それに今回使えなくても、曲がり角の向こうの敵を見つけたり、穴の中の様子を探ったり、他の目的にも使えそうな気がしないでもないし。
「思ったよりも安いかも。カメラまでついてるんですね」
「カメラってどこに映すんだろう、別売りなのかな?」
箱の裏にある説明を見てみると、カメラの画像はスマホに転送するらしい。
「スマホ……禁止されてますよね」
「画像映すだけ、回線なしならなんとかならないかな?」
レジに戻ってお姉さんに聞いてみる。どうやら電話回線なし、つまり通信なしならこの学校でも使っていいそうで、年に数台は売れるらしい。
目的は写真を撮ったり、新たちと同じくドローンなどの画像を映したりするだけ。アプリのダウンロードもできないし、他のことにはほとんど使えない。
使えると分かったのは朗報だけど、残念ながら、在庫は一台も残ってないそうだ。
「カメラはすぐに必要ありませんし、ドローンだけ買ってみませんか?」
「予備も含めて二台買っておこうか」
在庫が無いものはしかたないので、スマホは注文しておくだけだ。あとは適当な紐、それと水をパチャパチャするための何かが必要だね。
紐、紐、紐、と。どこに売っているのか探し回っていると、釣り道具のコーナーが目に留まった。
「釣り糸、いけそうだな」
「紐よりも軽くて頑丈そうですね」
この学校のどこでどんな時に釣りが必要になるんだろう。それはそれとして、釣りと言えば糸だ。さらにそこにあった釣り竿になぜか心惹かれる。
一メートルほどの太い棒、それを伸ばすと長い釣り竿になるらしい。長さはええっと……十五メートルだって? かなりの長さになるみたいだ。
「この長い釣り竿、買ってみない? ものすごく長い棒だと思えば、いろいろ役に立つんじゃないかな」
「ドローンより少し高いぐらいですね。買ってしまいましょう」
さらには短くて、リールつきの釣り竿も一本追加で買っておく。糸の先に重りをつけて投げれば、遠くの水たまりをチャポチャポするぐらいのことはできそうだ。
「こんなもんかな」
「ええ、また何か思いついた時に買えばいいと思いますよ」
本当を言うとちょっと強めの毒薬なんかがあると良いんだけど、購買には売っていなかった。
間違ってこっちが毒の水を浴びてしまう危険もあるから、使いどころはかなり難しいけどね。




