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底なしダンジョン学園にようこそ! なんて言われても困るんだけど(仮)  作者: 大沙かんな


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103.詳細の調査

 第四階層の入り口近く、古民家の中に入ってから魔巌洞(ダンジョン)の入退場を行う。


 古民家の中には昇りの螺旋階段、それが天井に突き刺さっているように見える。少し昇ると天井が見えなくなり、ずっと上まで螺旋階段が続いているのが確認できる。


「来た時も思ったけど、ホントに意味が分からないわね」


 幻術に騙されているのか、それともこれが正常なのか。それさえも判別不能だ。


「この階段も調べてみる?」

「ええ、そうしましょう。どうせ時間は有り余ってますから」


 聖者の瞳で鑑定しながら螺旋階段を昇り、上まで辿り着いたらまた聖者の瞳で鑑定しながら螺旋階段を下りる。


 特に何も見つからない。


 どうやらこのパイプ洞窟、脇道はないらしい。


「回転した時に合わせて、あの水たまりを越えるしかないってわけね」

「回転速度がどのくらいなのか分からないと厳しいですよね」


 全く面倒な話だね。



 螺旋階段のある古民家から外に出て、もう一度パイプ洞窟に戻る。


「それじゃあ、あの水たまりに向かうか」

「ちょっと待って! ボク、思いついちゃった。ここに印をつけたらいいんじゃないかな!」


 ここに印? どういう意味だろう?


「ああっ! それ、いい手かもしれないわ!」

「やってみるべきですね!」


 (あらた)にはまだ理解できていないけど、音羽(おとは)木綿花(ゆうか)都久詩(つくし)に賛成の様子。


 ここは素直に教えてもらうことにしよう。


「どういうことなの?」

「この家は浮いてて動かない、でも地面は動くんですよね。だから両方に印をつけておけば、どれくらい動くか見えるんじゃないかってことですよ」


 なるほど! その手があったか!


 同じ速さで少しづつ回っているのか、それとも違うのか。それもある程度、はっきりするかもしれないぞ。



 (あらた)はスプレーで古民家に印をつけ、その印と同じ場所の地面にももう一つ印をつける。そして地面の方には、今の時間も書いておくことにする。


 あとはこの場所に留まって、しばらく様子を見るだけだ。


 この近くを歩き回ってもいいんだけどね、それはやめておくことにする。


 ぼーっとしているのは退屈だけど、このパイプ洞窟の回転には命がかかっているわけで。ここである程度はっきりさせておいた方が安全だ。


 命がけでぼーっとするっていうのも変な話だけれど、必要なんだから仕方ないよね。


「こんな時のために、トランプでも持ち込んだ方がいいかな」


 いや、それはさすがに気を抜きすぎじゃない?



 何度か時間切れでの入退場を繰り返して、おおよその回転速度が分かった。


「これだと半日で一回転、ってところかしら」

「この結果から見たら、そういうことになりますね」


 半日で一回転、ということは六時間で百八十度、三時間で九十度回るという計算だ。


「ということは、あの水たまりは今……」

「……天井になってますね」

「行ってみようよ!」


 そそくさと準備して、あの水だまりを目指す。いや、今は水たまりじゃないはず。水が引いて越えられるはずだ。


 妖獣ワニーの小さな群れを叩き潰しながら進む。四匹や五匹程度の小さな群れならば、特に問題なく処理できるようになってきた。慣れっていうのはすごいね。


 さらに進んでいくと、下り坂の向こうに水たまりが見えた。ヘッドランプの光がキラキラと水面で反射する。水際には大量の妖獣ワニーの姿まで見える。


「あれ? 何で水たまりが……」

「おかしいわね、それにこんなに近かったかしら?」


 都久詩(つくし)、それに音羽(おとは)は混乱している模様。


 (あらた)にも一瞬何のことやら理解できなかったが、聖者の瞳で鑑定してみるとはっきりと答えが出てきた。


「ここ、あの水たまりじゃないよ。最初に通った時は上り坂の頂上だったところだ」

「うわぁ、そういうことかぁ」


 パイプ洞窟は十二時間で一回転している。つまり六時間かけて半分回転すれば、下り坂だったところは上り坂になるし、上り坂だったところは下り坂になる。水は高い所から低い所に流れるので、回転するごとに水たまりの場所は動くのだ。


 妖獣ワニーは水たまりの場所に合わせて移動しているに違いない。そうして水たまりの所に大量に集まるってわけだ。


 魔巌洞(ダンジョン)ってヤツは、一体どこまで嫌がらせすれば気が済むんだろうか。



「まずは火の玉で先制してみましょうか」

「効果は薄いかもしれないけど頼むよ」


 相手は水際にいる妖獣。いくら火の玉で弾幕を張ったとしても、水中に戻れば全くダメージを受けないだろう。それでも何匹か、短気なヤツを釣り出せるかもしれない。


 木綿花(ゆうか)が炎の杖を片手に前に出る。杖を上に掲げると、(あらた)たちの視界が大量の火の玉で真っ赤に染まった。


 バシャバシャと水が大きく暴れる音。しばらくするとその音も小さくなり、ジュっと火の消える小さな音が重なり合って、シャーッという雨音のような響きだけが残る。


「どうかな」

「全く手ごたえはありませんね」


 やはり駄目か。


 まあそれはそうだろう。杖の元々の持ち主はゴブリン魔女。あの戦いでは(あらた)たちは水タンクの水をかぶりながら戦ったわけで、水を浴びていれば火の玉はほぼ無効化できることを実際に体験しているのだ。


 木綿花(ゆうか)が火の玉の魔法を止めると、下り坂の先にはただの水たまりがあるだけだ。妖獣ワニーの姿はどこにもない。どうやら水の中に潜ってしまったらしい。


 さて、どうしたものやら。


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