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底なしダンジョン学園にようこそ! なんて言われても困るんだけど(仮)  作者: 大沙かんな


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99.風評被害

 妖獣ワニーの小さな群れを蹴散らしながら、魔巌洞(ダンジョン)の中を引き返していく。


 相変わらず周囲は真っ暗、直径五メートルほどの円形の洞窟。地面は少し濡れている。その様子に何も変わったところはない。隠し扉のようなものも見つからない。


「そろそろ時間じゃない?」

「お腹空いちゃったね!」


「うわ、もうそんな時間かぁ」


 外に出る前にスプレーで壁に印をつけておく。もしも幻覚の罠が仕込まれていたとしたら、こんな印ぐらいでは見破ることなんてできないだろう。でも一応念のためってやつだ。


 一つ前の坑道風の階層も、その前の四角い部屋が並んだ階層も、なんだか謎な構造になっていた。しかしどういう罠だったのかイマイチ掴めないうちに、力づくで突破できてしまった。


 だからといって、すべての階層が勢いだけで突破できるとは限らない。絶対に必要というわけじゃないけれど、やっぱり謎があるなら解いておくに越したことはないからね。



 魔巌洞(ダンジョン)から外に出て学生食堂に行ってみると、二年生の朝霞(あさか)春陽(はるひ)穂乃香(ほのか)、そして彼女たち二人とグループを組んでいる女子たちと出くわした。


「あら、(あらた)じゃない。特別講習は無事に終わったみたいね」

「大きな事故があったというウワサでしたから、少し心配していたんですよ」


「おかげさまで。特に問題なく出て来れたよ」


 (あらた)は特別講習に行く前に、朝霞(あさか)姉妹には事前に少し情報を貰っていた。そのおかげで拠点に近づかずに済んだので、軽く礼を言っておく。


 特に問題がなかった、というのは何も虚勢を張ったり、いい恰好をしたり、というわけじゃない。


 特別講習では暴漢と化した元上級生たちとの激しい戦闘になった。真面目な話、かなり厳しい戦いだったけれど、だからといって問題というほどでもなかった。レベルだって大きく上げられたし、なにより全員が無事で切り抜けられている。


 このまま彼女たちと一緒に食事になるのかな? と思ったけれど、どうも様子が怪しい模様。朝霞(あさか)姉妹の態度は今まで通りなんだけど、彼女たちのグループの眼がなんだか変だ。


「ねえ、春陽(はるひ)。そんな子たちは放っておいて、さっさと食事にしましょうよ」

「そうそう。あんまり優しくしてるとつけあがるわよ?」


 なんだか百八十度態度が変わってない?


 ついこの前、同席した時にはこっちに寄生する気満々というか、寄生してあげるわ! ぐらいの勢いだったのに。


 もしかしてよっぽど強くなったのかと思って軽く鑑定してみたけれど、大きくレベルが上がった様子はない。


 春陽(はるひ)穂乃香(ほのか)の二人だって、最初に出会った時は同じくらいのレベルだったけど、特別講習を乗り越えた今では、(あらた)たちは大きくレベルを引き離している。


 グループメンバーに至っては、もともと朝霞(あさか)姉妹よりレベルが低かったのだ。今ではもうまったく勝負になってない。



「ごめんなさいね、でも悪い子たちじゃないのよ? 特別講習って言葉で勘違いしちゃったみたいなの」


 穂乃香(ほのか)が、さっさと立ち去っていく仲間たちから一人遅れて声をかけてきた。


 どうやら(あらた)たちが特別講習に参加したことで、落ちこぼれ認定したということみたいだ。そりゃ落ちこぼれが相手なら、寄生なんて無理だもんね。


 それもこれも夏草(なつくさ)先生のせい、いや、このいい加減な学校のせいだな。


「特に気にしてないよ」

「本当にごめんなさいね」


 仲間たちに呼ばれ、何度かこちらに振り返りながらも、穂乃香(ほのか)(あらた)たちから離れていく。


 特に気にしてない、という言葉は嘘じゃない。ただ丁寧に言い換えると、彼女たちの生き死にを含めて何も気にしていない、と言うのが正解だ。



「失礼な人たちだったわね」

「あんなのがオマケについてくるとしたら、春陽(はるひ)穂乃香(ほのか)を『たかはし』に入れるのは避けた方が無難ですね」


 春陽(はるひ)穂乃香(ほのか)の双子姉妹は、まだ正式に固定グループに参加してもらったわけじゃないし、クラブを作る話もまだしてない。このままお断りの方向かな。


「みなさんが強いのは知ってますけど、無理に敵対はしない方がいいと思いますよ?」


 (みのり)たちクラフター組にも、彼女たちとの関係については簡単な説明はしてある。ただクラフターで苦労してきただけあって、敵を増やすのは反対の様子。


「敵対するわけじゃないって。というか、向こうがこっちの相手をしようとしないよ」


 (みのり)だけじゃなく、陽菜(ひな)亜紗(あさ)由樹(ゆき)の三人も合わせたクラフター組は、レベルは高いけれど戦闘は苦手。それに武士(たけし)たちレベルの低い一年生組もクラブ『たかはし』に合流予定だ。


 だから安全を考えると、できるだけ戦闘力の高いメンバーに合流して欲しいという気持ちはある。でもそれは仲間同士の信頼があってのこと。当てにならない仲間はいない方が安全という説もあるし。


 朝霞(あさか)姉妹の二人、というか、妹の穂乃香(ほのか)だけなら今すぐ入って貰ってもいいんだけどね。


 意味のないマウントの取り合いをしているほど、こっちも暇ではないのだ。



「何だか嫌な雰囲気になっちゃったわね」

「気を取り直して、午後の打ち合わせをしながら食事にしましょう」


 そう、妖獣ワニーが巣くう、土管のような第四階層。その攻略こそが今の(あらた)たちには一番大切なのだ。



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