50話 王対神①
11:30 ライトガーデン、連盟軍駐屯地
<ユキユキシカ・ホロノア>
「海の神の補足は済んでいます、ここから南西に300キロの地点、ポイント77に漂流中です」
<ルガル・ギ・メスフィア>
「皆の者、良くぞ集まってくれた。
緊急の招集にも関わらず304名の勇者が集った事を余は誇りに思う。これから始まるのは神話の戦いだ。少しでも神に臆せば死に直結するだろう。
だが余がここに在る。神に屈せず、人の意思を示す事が出来るのなら勝利の暁を拝み、人の未来を掴む事が出来るだろう!」
<連盟軍兵士達>
「はい!」
<ルガル・ギ・メスフィア>
「行くぞ、神々よ聞こえるか。この戦いは生き残った全ての神に終焉をもたらす鐘の音だ。お前達は余の時代で終わらせてやる」
モリタミ総本部テヲカーリ
<モリタミ頭主 フナク>
「遂に見つかってしまったか。ユム、ナナカは?」
<巫女 ユム>
「彼は既にライトガーデンの海域へ向かったと」
<モリタミ頭主 フナク>
「やはりか。ユム留守番を頼む、彼の所に行ってくる」
<巫女 ユム>
「あそこにはルガル王と、魔法使いが」
<モリタミ頭主 フナク>
「大丈夫、彼らとは戦わないよ。ナナカを守るだけさ」
<巫女 ユム>
「……お気をつけて、いってらっしゃいませ」
ポイント77から1200km地点
<毒流 半魚人族 ナナカ>
「はっはっはっ、間に合え!間に合え!僕たちの母さんが!」
ポイント77
304名の兵士が隊列を成し、海の上に立っている。
<エーヤ>
「あの挨拶、前神やった時と同じじゃなかったか?」
<ルガル・ギ・メスフィア>
「あれは神と対峙する前の儀式のようなものよ。あれがなければ始まるまい」
<エーヤ>
「だな」
<ルガル・ギ・メスフィア>
「海の神よ、光届かぬ深海で身を隠しているだろうが、余に見えぬとでも思ったか」
周囲に暗雲が立ち込める。
雲はゴロゴロと鳴き、今か今かと開戦の時を待つ。
<ルガル・ギ・メスフィア>
「姿を見せてみよ、海の神よ!」
王が手を振りかざすと、暗雲から巨大な雷が海上に堕ちた。
とてつもない量の水蒸気が巻き上げられ、雷は深海へと深く突き刺さる。
<Sランク連盟軍兵1>
「これが王の魔法か」
魔法「雷」
雷を生成し、操る事が出来る。
その威力、射程、速度はあらゆる雷系魔術師を凌駕し、世界を単独で滅ぼす事が出来るという。
雷による衝撃波が落ち着き、波が静けさを取り戻した途端、海上が地震の如く揺れる。
Khaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
うめき声にも似た音が討伐隊に襲いかかる。
<Aランク連盟軍兵1>
「何だこりゃ!耳を塞いでも全身に響く感じ!」
海が黒くなる。地平線の先まで黒々とした海。
黒い海は波の動きと連動せずその輪郭だけが段々とはっきりしていた。
<エーヤ>
「おい魚影の大きさじゃねえだろ」
<ルガル・ギ・メスフィア>
「来たか。衝撃に備えよ!」
Khaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
自然の神同様、それはどの生物体系にも載っていない異様な形だった。
魚影に見えていた部分は上側の一部分だけであり、本体は錨を逆様にしたような形相、しかし中央は有機物特有の滑らかさと上下に目のような丸が置いてあり、足と思われる部分にはにはクラゲの足のようなものとその周囲に魚卵が大量に付いている。
そしてその大きさ。
魚卵だけでも人間の10倍以上の大きさがあり、その体長は1km程あるようだった。
<Sランク連盟軍兵1>
「デカすぎるだろ」
Khaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
<Aランク連盟軍兵2>
「またこの音が…意識を保たなければ…」
<ルガル・ギ・メスフィア>
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!遂に来たか海の神よ!!!!今日が貴様の命日だ!」
海の神の目のようなものから超高圧水流が王めがけて飛ぶ。
<ルガル・ギ・メスフィア>
「ふん、こんなもので余を殺せると思わぬ事だな!」
Khaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!
王の背後から水の神の曲射水流が襲う。
神に気を取られ、その攻撃に王は気づいていない。
背中に直撃しかけた時、突如光の柱が王後方の水流を全て撃ち落とした。
<ユキユキシカ・ホロノア>
「昂っている所申し上げます、王よ」
<ルガル・ギ・メスフィア>
「ん、何だ?余はこの一戦に高揚と愉悦を感じているのだが」
<ユキユキシカ・ホロノア>
「他の隊員の事も少しは考えて頂けませんでしょうか?彼らが神の音で動けません」
<ルガル・ギ・メスフィア>
「問題ない、奴らは余の選りすぐりの勇者達よ。各自でどうにかする」
<Sランク連盟兵2>
「よおし!これだけ何回も聞けば対策できる!陰陽道 72符抗体合」
護符が1人の魔術師の周りを舞い、連盟軍全員に貼り付く。
<Sランク連盟軍兵3>
「これは!?音の振動が消えた、さすが安美門殿!」
<Sランク連盟兵2>
「しかし神がこのような生き物だとは、この眺めで一杯やりたい!」
連盟軍十番隊 隊長
Sランク魔術師 安美門 奈々見
<Aランク連盟兵3>
「ここでも酒の話してる」
<エーヤ>
「これなら音でやられねえな、って下に何かいやがるな」
夥しい数の魚が連盟軍目掛けて襲いかかる。
<Sランク連盟軍兵3>
「退避だ!退避!」
一斉に海面から高く飛び上がる連盟兵達。
イワシの大群は彼らを追うように空を翔け、連盟軍に突っ込んでくる。
<Sランク連盟軍兵3>
「なにっ?」
<エーヤ>
「お前らそこを動くなよ!楽園」
連盟軍の周りに結界が展開され、突撃してきた鰯の群れは次々と花びらに変わっていく。
海水が大地に変わり、草木が生え、花が咲く。
<Aランク連盟兵4>
「あれが噂に聞く結界術の極地、権域か!」
<Aランク連盟兵5>
「巨大な津波が四方から!100メートル級はあるぞ」
津波が連盟軍を飲み込むかと思われたが、権域の結界に弾かれ、連盟軍に届く事なく落ちていく。
<エーヤ>
「ここはあらゆる障害を拒絶する楽園、この中に入っていりゃ問題ねえぜ!」
<ルガル・ギ・メスフィア>
「お前達!覚ておけ、神は独自に概念を保有する
山の神なら山の概念を、海の神なら海の概念を持つ奴は海にまつわるのもであれば、あらゆる全てを操る事が出来る。そして神は自ら眷属を大量に生み出し使役する。お前達はらはその眷属を全滅させよ。生み出されるもの全て殺さねば次の海の神が生まれる」
<Sランク連盟軍兵4>
「眷属ってあの魚だけじゃないのか!」
<エーヤ>
「そうだ、来るぞ!」
海の神の後方に付いていた魚卵のような物が海に次々と落ちる。落ちたソレは弾け、中から半魚人が大量に現れた。
<Aランク連盟兵6>
「神は生命まで生み出せるのか」
<エーヤ>
「気張れよ!いくぜみんな!」
次回は7/29になります!




