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51話 王対神②

 権域で生み出された草原はさながら絶海に浮かぶ最後の島のよう。


 海は波がうねり荒れに荒れ、魚は大小問わず群れを成して海上を飛び回り、眷属たる半魚人は明確な殺意を向け連盟軍を飲み込まんとする。


 それに応戦するように各々の魔術で応戦する兵士達。

 炸裂する火花、吹きすさぶ嵐、幾つもの魔術が魚群と眷属を焼き殺し、切り裂き、押し潰し、血飛沫が舞う。


 雷は轟々と鳴り止まず、白き光は明滅を繰り返しながら海の神へと向かっていく。

 世界の終末のような景色がそこにはあった。


<Aランク連盟軍兵7>

「しかし、杖も持たず、あの威力の雷撃を放てるとはさすが魔法使い。一撃一撃が街を滅ぼしうる威力だ」


 体毛と目なる所から高圧水流を放つ海の神。

 王はそれらを押し除ける威力の雷を絶え間なく浴びせ続けている。


<Aランク連盟軍兵8>

「ホロノア殿もとてつもない量の弾幕。その上我々のサポートと正確に眷属を撃ち落としている」


 周囲に光の球を大量に展開し、そこから放たれる白き光線で眷属を焼き殺すホロノア。

 隙あらば海の神にも収束した光線を当てている。


<ルガル・ギ・メスフィア>

「しかし攻撃は当たるが、致命傷にはならぬか。やはり神とは厄介なものよ。ホロノア、あれをやるぞ」


<ユキユキシカ・ホロノア>

「承知しました」


 ホロノアが一つの光の玉を生み出し魔力を注ぐ。

 光の玉が海の神の目程の大きさになると王は自身の雷を光の球に纏わせた。


<ルガル・ギ・メスフィア>

「寝覚めの一発だ」


 海の神目掛け光球を撃ち出した。

玉は直撃するも、海の神は玉を体に吸収し魔術を飲み込まんとする。


<ルガル・ギ・メスフィア>

「遅い、柘榴(ざくろ)」



 直後光球が炸裂し、海の神の半身を抉る。

 その衝撃で海面が覗ける程の穴が開いていた。


    Khaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!



<Aランク連盟軍兵9>

「これは!流石に効いたか!」


神の体がボロボロと崩れていく。


<Aランク連盟軍兵10>

「終わったか?」


そう兵士達が口にした途端、海面が揺れる。

海水の柱がいくつも立ち上がり、空中でうねりながら融合し、海の神の形を成す。


<ルガル・ギ・メスフィア>

「海の神め。当然海と同化、流体化させるのも訳ないか」


連盟軍目掛けて襲いかかる海の神。


<ルガル・ギ・メスフィア>

「させぬわ」


 雷の鎖を大量に投下し、海の神を拘束する。

しかし鎖に繋がれた部分をピンポイントで切り離し、連盟軍兵に襲いかかる。


<ルガル・ギ・メスフィア>

「エーヤ!」


 権域の防御壁に衝突する。グググと壁が音を立て、海の神は少しずつ防御壁をすり抜けていく。


<エーヤ>

「俺の権域を上書きしているのか!まずい、ここが破壊される!退避だ!退避!」


 海の神の体当たり。全長1kmの体は権域諸共全てを押し流す。

 逃げようとした兵士達はその巨体から逃れられず、海に落ちていく。


 ホロノアは海中に結界を張り、連盟軍兵を包むと、結界ごと海上に浮上させた。


<ユキユキシカ・ホロノア>

「権域程の力はありませんが、ある程度の攻撃は防げます」


<Sランク連盟軍兵5>

「王様後ろ!」


 海の神が王の背後から覆い被さると、そのまま海に落ちていった。


<ルガル・ギ・メスフィア>

「余を落としたか、雷が放電し続けているな」


王が自らの両手を見ると、絶えず雷が漏れ出ていた。


<ルガル・ギ・メスフィア>

「考えたものよ。海中なら魔力が尽きるまで放電し、敗れていただろう並の魔術師ならばな。だが余を誰と心得る。魔法使いたる余がこの程度で死ぬとは思うなよ、海の神」


すぐに海中から抜け出し、海の神を見下ろす王。


<ルガル・ギ・メスフィア>

「余の勇者達も死力を尽くして眷属を屠ってくれている。王たる余がここで真の勇姿を示さなければな。さて、少々本気を出させてもらうとしようか」


手に持つは一振りの杖。


<ルガル・ギ・メスフィア>

「一騎打ちと行こうではないか海の神よ!」


海に孔が空く。

地平線まで見えていた海水を海の神ごと雷で弾き飛ばした。

打ち上げられた海水は雨となって戦場に降り、飛ばされた神は海に沈んでいく。


周辺の海域を覆うほどの雷雲が立ち込める。

雷雲から無数の雷が海に落ち、眷属を焼いている。


海の神の隙を埋めるかのように海獣の群れが王の全方位に噛みつきにかかる。

だがしかし、雷鳴と共に木っ端微塵に切断された海獣の肉片が舞った。


海中から海の神の目が光ると吹き飛ばされた海水の分を一瞬のうちに満たした。


海の神が海水の柱を纏いながら飛び跳ねる。

その高さは連盟軍を追い越し、海の神の体長以上まで上がり、王を殺さんと突撃する。

1キロメートルに及ぶ巨体が王を海底に押し込んでいく。


<ルガル・ギ・メスフィア>

「水圧か。しかしこれはかなり面倒だぞ」


陽の光すら届かない程暗い場所に到達した海の神は王の周りを旋回しはじめた。


<ルガル・ギ・メスフィア>

「これは時間の巻き戻し、いや原初への回帰か

体が溶けているだと……まずい!」


無数の繊毛で王を絡め取り、体の中に吸収していった。


<Sランク連盟軍兵6>

「静かだ」


<Sランク連盟軍兵6>

「我らが王は!」


海上に静けさが染み渡る。

今まで戦いがあったことすら忘れるように海が次第に凪いでいく。その時だった。


突如として天を覆い尽くす雷雲。

その中央から豪快な笑い声が聞こえてきた。


<ルガル・ギ・メスフィア>

「フハハハハハ!!!!ふん、その程度で余が死ぬと思ったか。あえて余の分身を飲み込ませたのは貴様の核を見つける為よ」


天上に満ちていた雷雲が王の足元に一点に集約している。


<ルガル・ギ・メスフィア>

「海の神よ。さらば」


轟音と共に放たれた巨大な雷の斬撃は、海を割り、深海にいる海の神を真っ二つにした。


<Aランク連盟軍兵10>

「海の底がが見える……倒した!我らが王がやったぞ!」


<ルガル・ギ・メスフィア>

「はあはあ、いささか本気を出しすぎたか。やはり神は視えぬな、力の配分を見誤る。眷属はどうだ?」


<ユキユキシカ・ホロノア>

「彼らによって全て倒されました、反応はありません」


<ルガル・ギ・メスフィア>

「そうか。ならよかった」



海の神遺骸より500メートル地点


<モリタミ頭領 毒流 ナナカ>

「死んだ、僕たちの母が……間に合わなかった。ああああああああああああああああああ」


<モリタミ頭首 フナク>

「ナナカ、すまない」


胸をトンと触れるとナナカは眠るように意識が落ちていった。


<モリタミ頭首 フナク>

「あれが今の王の力か。ん、この気配はもしや」


連盟軍兵の辺りで一斉にサイレンが鳴り始めた。

強制的に起動するiDeas。

そして爆音のノイズ音が流れると、人の喋り声のようなものが聞こえてきた。

段々と鮮明になる声。暗く澱み、耳に入るだけでも体の震えが止まらなくなるほどの悍ましい声。


<声の主>

「聞こえているかなレヴィリオンの王よ、アイシールの住民達、そして全世界の諸君、ご機嫌よう」


そしてその男はゆっくりとこう告げた。


<魔王>

「俺は魔王、今からお前達に宣戦布告を行う」




 世界に向けて宣戦布告を行う魔王。事の発端は、シリウスが王との謁見後まで遡る。



<シリウス>

「……ん、んん、ここは?」


<パレ・リブッカー>

「目覚めたか。連盟軍本部の収監所だ。お前の処遇は我らが王が遠征から戻った後に」


<シリウス>

「遠征?」


<パレ・リブッカー>

「守秘義務でこれ以上は言えん」


帽子で目元を伏している。


<パレ・リブッカー>

「お前とは短い付き合いだったが、これ以上お前と会う事もないだろう。さらばだ」


<ミミナ・ギ・アキサユース>

「じゃあね!多分悪いようにはしないから!」


彼女らはそう言い残し僕の元から去っていった。




捕まってしまった。

檻に入ってから何時間経ったのだろう。

王が遠征から戻ってくるのはいつだろう。自分の命はいつまでなのだろうか。


<男看守>

「おい、お前、起きてるか」


<シリウス>

「は、はい」


<女看守>

「そんな固い挨拶しないの!怖がってるでしょ!」


看守の格好をしているが何やら様子がおかしい。


<シリウス>

「あなた達は?」


<女看守>

「はっじめまして〜!アタシはハビニア・ファタ・シードランド。あなたをここから出してあ・げ・る♡」


これにて第五章完結です!読んで頂いてありがとうございます!

第六章は11/1から再開します!

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