46話 魔法使い達
光臨者の像を見た後、リンシーさんに連れられ魔術連盟の廊下をひたすら歩いていく。
次第に人の姿も見えなくなり僕達だけになった。
<シリウス>
「静かですね」
<リンシー>
「まぁな。ここに立ち入れる人間は限られている。各行政機関の長、議会のトップ、俺達連盟軍じゃあSランクの隊長じゃなきゃ入る事すら罷りならない。特例とはいえここに入れるのは奇跡だぜ。よく見ておけよ」
長い廊下を歩いていくと、巨大な扉がある所に着いた。ここにいる三人の何十倍の高さがある。
<リンシー>
「王宮への直通エレベーターだ。こいつに乗って上まで行く」
<シリウス>
「ここもワープじゃないんですね」
<リンシー>
「ここから上は超高濃度の魔力が満ちている。やろうとしても術式が乱れて途中でダメだ。ワープは途中で失敗するとどこ飛ばされるか分からないからな。ここは文明の利器の出番だ」
扉がゆっくりと開き、中へと入る。
ついに王と会うのか。
この世界の王……どんな人なのだろうか。何をされるのだろうか。殺されるのか……足が震える。
<リンシー>
「サービスだ。肩車してやろう」
彼に担がれエレベーターの中に入った。
上がっていく途中から外が見えた。
今まで見てきた街が段々と遠ざかっていった。
雲を抜け、空は青色から段々と藍に変わっていく。景色がいい。
<リンシー>
「気持ち悪くないか?ここら辺から魔力濃度がさらに高くなる、気持ち悪かったら言えよ」
<パレ・リブッカー>
「私は問題ないです」
<シリウス>
「……なんとか大丈夫です」
<リンシー>
「……そうか、なら問題無いな」
彼は気さくに笑った。
大きな影がエレベーターを覆い、外の景色が見えなくなった。減速していくのが分かる。
チンと音が鳴ると扉が開いた。
<リンシー>
「着いたな、ここが最上層、王宮フィキットだ」
<シリウス>
「これって……」
「ああ、下を街を見てると驚くよな」
城が建っていた。
未来都市の最上層とは嘘のように、その様相は古く、まるで中世の城そのもの。
城壁が周囲を囲い、レンガ造りの建物が並ぶ。
異様だったのは首都の壁と同様に、すべてのものが真っ白だったということだ。
<リンシー>
「ああ、目がチカチカする。ほれ、サングラスだ」
彼と同じサングラスを手渡された。
<リンシー>
「俺はここまでだ。呼ばれているのはお前達だろう?下で待ってる」
<パレ・リブッカー>
「ここまでありがとうございました」
<リンシー>
「良いって事さ。俺もヒマだったしな」
彼は背を向けてエレベーターの方へと歩いていった。
<パレ・リブッカー>
「さて、どこが入り口だ?」
奴がそう言うと、示し合わせたようにiDeasが鳴り、矢印が表示された。
<パレ・リブッカー>
「こっちに進めってことか。行くぞ」
奴の後ろについて歩く。
煉瓦造りの白亜の建物が続いていく。
矢印は目の前の小屋を指し示し、ドアを開けて入ると、大広間に出た。
<パレ・リブッカー>
「ワープしたのか」
いつの間にか服装が変わっている。
今まで着ていたポンチョが真新しいものに変わってるし、サングラスも消えていた。だけど拘束具はそのままみたいだ。
<パレ・リブッカー>
「他の階層は無理だが、同じ階層ならワープができるということか。どこかはさっぱりだが、それにしてもかなり広いが」
魔術連盟よりも遥かに大きな空間。
天井一面に描かれている絵画は多くの人々が一人の人物を讃えている。
緻密な意匠に真っ白な壁。
窓からは自然光が入り、部屋を眩く照らす。
部屋の中心あたりに円を描くように七つの台座のようなものがある。
台座の上にはそれぞれ水晶、羽、本、ダイヤモンド、魔石、双眼鏡、杖が置いてあった。
<パレ・リブッカー>
「これは、魔法使い達の名前か」
台座にはそれぞれの渾銘と名前が書いてあった。
戦乙女
ミミナ・ギ・アキサユース
白夜姫
ユキユキシカ・ホロノア
大賢帥
テオキュリア・シャドゥーマ
<パレ・リブッカー>
「お前の主人の名前もあるぞ」
魔術女帝
ファリア
元魔法使いでもここに名前があるんだな
なんかこっちも字が擦れているような……
印章令嬢
アースハール・ルーンショット
ルーンショットってアヴィーチェの所で聞いた人か!
本名はアースハールって言うのか。
迷宮野郎
アスティアナス・エルカミーノ
結界女王
エリトリー・エルスゾーン
こっちは知らない名前だ。どんな人なんだろう。
<パレ・リブッカー>
「学校で習った事はあるが未だ会ったことはない」
一通り台座を見回すと、再びiDeasが鳴った。
表示された矢印が部屋の奥の方を指した。
<パレ・リブッカー>
「ここに立てと言ってるのか」
丸い意匠がある床に立つと一瞬で別の景色に変わった。
さっきの部屋同様の広さの白い部屋。
奥には階段があり、その先に明らかに特別な者が座る玉座が一つ。
階段で座り足をバタバタしている女性が一人。
王と話しながら、ディスプレイを幾つも空中に展開し、仕事をしている女性が一人。
そして中央の椅子に座る者——
<玉座に座る者>
「年俸をあげろだと?ダメだ。すでに有り余っているだろうに、上手くやりくりしろ。もし上げたいのなら今以上に余に貢献しろ」
玉座で深々とため息をつく人物。
<玉座に座る者>
「提案したのはダーミだな。分からぬとでも思ったか。解雇しておけ。民の意を慮らぬ為政者など、このレヴィリオンには不要だとな」
そう啖呵を切るとその人は一つのディスプレイを閉じた。
<玉座に座る者>
「全く、無駄な事で余の頭を使わせるな。金など、余るほど貰っていように。ダーミの再就職先を用意しておけ、これで話は終いだ」
<側近>
「仰せのままに、王よ。次はこちらを」
<玉座に座る者>
「新年度のカリキュラムか、基礎魔術の見直し——」
声が体の芯に伝わる。間違いない。
<シリウス>
「あれが……王……」
<玉座に座る者>
「ん、来たか。この話は後だ。お前達で話を纏めておけ」
<玉座に座る者>
「遅かったぞ、パレ・リブッカー」
<パレ・リブッカー>
「申し訳ありません、我が王」
奴はすでに膝を付いて頭を垂れていた。
<玉座に座る者>
「存外楽しんだようだな。ならば良い、余が許す」
王がこちらに目をやると全身に緊張が走る。
ただ一瞬目を見ただけでこの世のものと対面していると思えない感覚になる。
<玉座に座る者>
「名を聞こうか、童よ」
彼の目を見る。自分を睨むその目に意識すら吸い込まれそうになる。
<シリウス>
「僕は、僕はシリウスと言います」
<玉座に座る者>
「そうか、シリウスと言うのか。全く、あの女の自動人形がよもやこうなっているとはな」
その声を聞いた瞬間、勝手に体が動いていく。
僕はいつの間にか跪く体制になっていた。
<玉座に座る者>
「平伏せよ。余自ら名乗る栄誉を賜るが良い」
体が動かない。ただ見つめられているだけなのに恐怖が止まらない。
<玉座に座る者>
「余はルガル・ギ・メスフィア・ハーダット。世界の王である」
全統王
ルガル・ギ・メスフィア・ハーダット
次回は7/1になります!




