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45話 光臨者

試し撃ちが終わったあと、僕達はホーラックさんの車に乗って第五層に向かっている。


<パレ・リブッカー>

「まさかこんな車があったとは」


<リンシー>

「ジープはさすがに分からんだろう。第四次大戦後に作られた骨董品だ。連盟軍創立時のやつを俺が貰って直した」


王都に来るのに乗った車はほぼ部屋みたいになっていたけど、これはバリバリのオープンカーで窓すらも付いて無い。


<リンシー>

「こいつを走らせるのも久しぶりだ。その割にはいい音してやがるぜ」


<シリウス>

「ワープで行けなかったんですか?」


<リンシー>

「使えなくはないんだが、今から行く所は緊急時以外ワープが使えないのさ。それにこうしてドライブしてた方が風が心地いいだろう?」


髪の毛が飛んでいくんじゃないかというくらいの風が吹いてるけど……

低層、といっても十階建相当のの ビルが地平線の先まで規則正しく並んでいる。


一層に近い気もするけど、それほど賑やかでもない。歩道をよく見ると子供達やスーツを着た大人が多いような気がする。


<シリウス>

「四層に比べて静かですね」


<リンシー>

「そりゃそうだ。騒がしいのはあそこだけだよ」


<パレ・リブッカー>

「第五層オリーフは魔術学校や大学、研究機関、行政を執り仕切る各省庁、裁判所がある」


<リンシー>

「まぁ平たく言えばお硬い所だな。お、見えてきた。あれがレヴィリオンの最高意思決定機関にして俺達連盟軍の総本山。魔術連盟だ」


目の前に現れたのは巨大な白い八角形の構造体。

幾何学模様の入った壁は王都の外壁を思い起こす。

それが立ち塞がるように反り立っていた。

まだ遠くにあるはずなのに威圧感を感じる。


<リンシー>

「俺たち連盟軍は魔術連盟直属の軍隊ってのは知ってるよな?レヴィリオンにある全ての機関はこの魔術連盟の傘下だ」


<パレ・リブッカー>

「前行った異世界事務局もそのうちの一つだ」


へえ〜と声を漏らす。

距離が縮まるたびに建物の全容は段々見えなくなって視界が白い壁で埋め尽くされていく。

そうこうしているうちに壁の中心にある穴へと向かっていった。


トレーラーや小型車、僕を連れて行った戦闘車両など大小様々な車が行き交っている。

動きもゆっくりで誰も隊列を乱していない。

奥まで進むと、駐車場の精算機のような場所に着いた。


<アナウンス>

「七十三番隊隊長リンシー・ホーラック。

十三番隊長パレ・リブッカー。

承認しました。お入り下さい」



<リンシー>

「ふぅ着いたぜ。ここからは歩きだ。遅れるなよ」



リンシーさんに連れられ、通路を進む。

今日はよく歩くなあ。


道なりに歩くと大広間に出た。

巨大な吹き抜け構造で、レッドカーペットの床にギリシャ調子の柱が立っている。奥の壁がステンドグラスで光が差し込むと床がキラキラ光って万華鏡のように輝いていた。


<シリウス>

「こんなに人がいるなんて……」


<リンシー>

「ここにいる奴らは大体各専門機関のトップや議会議員、秘書たちがよくいる所だな。あらゆる専門分野の奴らが集まるんだからそりゃ人も多い」


<パレ・リブッカー>

「ここに来るのは幼少期以来か」


<リンシー>

「まぁ俺たちは外回りが多いからな、よく学校の修学旅行で来たりしたよな」


奥には三体の巨大な銅像が立っていた。


<シリウス>

「あの像は?」


<リンシー>

「あれがここの名物、”光臨者”達の像だ。」


あれが、ダンセさんが言っていた光臨者……


<リンシー>

「ちょっと近くで見てみるか」


像の目の前まで来るとここに来た時とは違った威圧感を感じる。


<リンシー>

「十メートルくらいはあったっけな。仏像だったか?これくらいのサイズをしてるよな。デカいのはいい。ハエだろうがゴミだろうが、どんなものでもこれくらいのサイズをしてりゃあ偉大に見える。まぁ彼らは正真正銘の英雄だがな」


ダンセさんのところで聞いた魔術大戦。その平定には光臨者の存在が大きく関わっているという。


<リンシー>

「これは世界を守った偉大な人物を讃えて作られたものだ。光臨者は世界の危機に呼応して呼び出される特別な異世界転生者だという」


槍と盾、マントを翻し雄叫びをあげている男の像。


<リンシー>

「第一次大戦の英雄、神々の戦いを諌め、人間の時代を作った男。覇王—ザラトストラ」


巨大な杖を持ち、荘厳に佇む女の像。


<リンシー>

「第二次魔術大戦の女神 魔女の悪行を断罪し、魔王軍との戦いに多大な貢献を果たした女。光王—ヨハンナ」


魔導所を持ち、眼鏡をかけ、まるで未来を見据えるかのような眼差しの男の像。


<リンシー>

「第四次魔術大戦の賢者 魔王の疫病から人々を救い、科学魔術の基盤を作り、今現在の文明にまで影響を与える男。叡王—ソロモン」


像を改めて見直す。

彼らに敬意を表してか、道ゆく人々の中で何人かがこれらの像にお辞儀をしているようだった。

本当に仏像のような有り難い存在のように思えてくる。


<リンシー>

「今までに光臨者は3人しかいない。そのどの人物も例外なく短命だったと言う」


<パレ・リブッカー>

「最長でソロモンが十年だったが、他の二人は三年程で亡くなってる」


たった三年……


<リンシー>

「俺はこう思うね。世界の為に、まさに命の全てを捧げて救っていると。まさに世界の奴隷だ。悪い言い方だがな。ん?坊主どうした?」


他の二人は平気なのにソロモンの文字だけ掠れているような……


<パレ・リブッカー>

「なんかあったか?」


<シリウス>

「いや何も」


<リンシー>

「彼らが何をしたかは、ダンセの野郎が話たから割愛するぜ」


どうしてか、ソロモンの像のことが気になる。

何か彼を見ていると心がモヤモヤしてくる。


<リンシー>

「ほれ見終わったらとうとうメインイベントだ」


<シリウス>

「メインイベント?」


<リンシー>

「そう言えば坊主にはまだ言ってなかったっけな」


彼はニヤリと笑い、僕に振り返って言った。


<リンシー>

「王都アイシールの最上層、統一国家レヴィリオンの最奥、王宮フィキットだ」


次回は6/24になります!

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