42話 魔術大戦③
<ダンセ>
「第三次魔術大戦!それは人と人の血で血を洗う戦い!」
そう彼が叫ぶと再び部屋の様相が変わった。
薄暗い雲が空を覆い尽くし、傷んだ大地が足元に浮かび上がった。
そこらじゅうから獣に似た油臭い匂いと焼けこげた草木が散乱し、辺りには血塗られた武器と杖、そして死体の山。
<パレ・リブッカー>
「この時代の事なら私も知っている。何せ我らが王の時代だからな」
<ダンセ>
「人間の時代が到来したことで、各地に王が擁立されました。その多くは大戦を生き延びた者や、戦場で名を上げた英雄たちであり、彼らはそれぞれの信念と誇りを掲げながら国を築いていきました。世はまさに群雄割拠の時代!」
ダンセの声が響くと戦場の景色から無数の国が乱立する地図が広がった。境界線は複雑に入り組み、それぞれの領土が主張するように色分けされ、その中心には王の名と紋章が刻まれていた。
<ダンセ>
「ですが同時にそれぞれの国が“頂点”を獲ろうと躍起になっていました。次の世界の支配者は誰か、と。その最有力候補にあったのが、魔術連盟とその庇護下にあった光臨者の子!」
魔導書室に風景が変わると、目の前に光り輝く赤子が現れた。
その子供を老齢の魔術師が抱き、多くの魔術師が温かい目で見守っている。
<ダンセ>
「彼の名はイルム。その出自故にこの世界の王になるとまで噂されておりました。当時魔術連盟はどの国にも属さず中立を謳っておりましたが、それ自体が一つの巨大な権力であるのは明白。各国にとってはいかにして連盟を手中に入れるか苦心しておりました」
<パレ・リブッカー>
「魔王を討った魔法使いが三人に光臨者の子供までいるとなるとな。権威も武力も当時最強。どの国も手が出るほど欲しいだろうな」
<ダンセ>
「各国は様々な手段で連盟を取り込もうと試みますが、いずれも決定打にはならずじまい。平穏の裏で見えない駆け引きだけが積み重なっていく。そんな状態が長く続くかに見えました。しかし!その均衡は唐突に崩れたのです」
<パレ・リブッカー>
「魔術連盟の長、第二次魔術大戦の英雄、テオキュリア・シャドゥーマの失踪だ」
<ダンセ>
「突如として失踪した魔法使いの報せを聞き、各国が一斉に動き出したのです!連盟の弱体化を見越した各国は水面下で戦の準備を進めていきました」
<パレ・リブッカー>
「光臨者の子を奪うにも、連盟を手に入れるにもバレないようこっそりってな」
<ダンセ>
「そして1467年、プレノワール王国が連盟に宣戦布告を行い、第三次魔術大戦が始まったのです!」
平原を駆け抜ける兵士の大軍。
彼らはただ一つの場所に向かって進軍している。
巨人でも通ったのかと思うような重く響く地ならしと兵士の勇ましい声がひっきりなしに鳴っていた。
<シリウス>
「でも連盟には魔法使いが二人いたんだよね。他の国に勝ち目なんてあったの?」
<ダンセ>
「確かに大戦の英雄を止めるには一筋縄にはいきませんな」
<パレ・リブッカー>
「だから国々は同盟を結んだのさ。戦いには数を持って制す。基本だな」
<ダンセ>
「それに当時の魔術連盟は学術機関。軍隊は一部の職員のみで構成されておりました。であるならば勝ちの目も出てきますぞ」
<パレ・リブッカー>
「まあ、連盟側も黙ってはいない。彼らも同盟国を募って敵国に応戦した。だが一筋縄にはいかなかった。よくあるだろう、裏切る国というのが」
<ダンセ>
「そう!第三次魔術大戦が血で血を洗う戦いと呼ばれる所以は、国々の思惑が渦巻いていたからなのです。同盟国の裏切りは連盟とプレノワール双方でも起こり、中には共倒れを狙う国、同盟国同士で争い合うなど、世界中の至る所で戦火が上がることとなったのです」
町が焼かれ、積み上がる屍。
同じ人間が刃を向け殺し合う合う光景が当たり前のように繰り返されていた。
<ダンセ>
「戦争は11年間続き、イルムは敵国の襲撃に遭い命を落としました」
<シリウス>
「そんな……」
<ダンセ>
「しかし!この混乱の中で現れた救世主がいたのですっっっっ!そう!世界の危機あるところに必ず彼はやってくる!」
<パレ・リブッカー>
「第三の魔法使い、我らが王その人だ」
<ダンセ>
「その名はルgっと、これも楽しみが減りますかな、リブッカー殿? 」
<パレ・リブッカー>
「別に言ったところでどうこうはないんだがな」
<ダンセ>
「まぁいずれ王自ら聞くことになりましょう!」
<パレ・リブッカー>
「我らが王はすごいぞ!一人で魔術連盟を救出し、連盟軍の前身、連盟騎士団を結成して敵国を完膚なきまでに叩きのめしたんだ!」
なんでそんなに意気揚々としてるんだよ、こいつ。
<ダンセ>
「こほん。まあ救出とはいったものの、我こそが魔術連盟の所有者であると各国に宣言して敵国だけではなく、味方の国も全て王と騎士団が蹂躙して戦争を終わらせたんですけどね」
<パレ・リブッカー>
「そうとも言う」
さらっと言っていたけど全ての国を滅ぼしたなんて……………
そんなに強いのか、この世界の王は。
<ダンセ>
「その後王は統一国家レヴィリオンの建国を宣言し、以降今日までこの世界を収める王となったのです。王は魔術連盟にもテコ入れを行い、人員の大幅増員、連盟騎士団は名を改め連盟軍となり、各地に統治者を置きました。まさにこの世界の礎を作ったといっていいでしょう!そして!」
<シリウス>
「そして?」
<ダンセ>
「異世界転生人の時代がやってくるのです!」
次回は6/3になります!




