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41話 魔術大戦②

<ダンセ>

「第二次魔術大戦。それは――魔王、魔女と人間達の血で血を洗う戦い!」


彼の声が響いた瞬間、辺りに広がるのは人間の死体の山。

燃え上がる街。崩れ落ちる建物。文明の残骸を贄とし青黒い炎が湧き立っている。

そしてその中心にいるのは——人間の女の貌だった。


<ダンセ>

「期間は学者によってまちまちですが、魔王が誕生したとされる1096年から1272年この間に起きた戦争を指します」


彼は歩みを止めずに続ける。

戦場の中をまるで舞台の上を歩くように。


<ダンセ>

「この時代、魔王が現れる以前は多少のいざこざはあれど、大きな戦はなく比較的平和な時代だったとされています」


彼が振り返るとその背後で、景色が切り替わった。

さっきまでの戦場は無く、静かな風景が広がっている。

穏やかな村に市場の笑い声。

子供があちこちを走り回っていた。


<ダンセ>

「しかし!突如として魔王が誕生!」


その声と同時に空が歪み、黒い穴が開いた。

奥から何かが落ちてくる。地面に触れた瞬間、一瞬にして白い光に包まれた。


目を開ける。

吹き飛んだ街の中で、炎の向こうで串刺しになった女性がいた。

死体から流れた血を誰かが飲み干している。

それは人間にはある筈のない角。

巨大な翼、研ぎ澄まされた爪。

異形の顔をした、正しく魔王と呼べる者だった。


<ダンセ>

「魔王は人間や魔族の街を襲い、少しずつ“眷属を増やしていきました」


視線を凝らす。

倒れていたはずの人間が、殺された筈の魔族が、ゆっくりと立ち上がる。

その目は濁っていた。


<ダンセ>

「眷属を増やす中、魔王は魔女を生み出した!彼女らこそ、この戦争が長引いた原因!」


影の中から、一人の女が現れる。

絶世の美女と言われても遜色のない容貌。だが、その笑みには狂気が僅かに漏れ出てい


<ダンセ>

「魔女とは!ただの女性魔術師に非ず!種族を問わず、魔王によって直接力を与えられ眷属となった“魔王直属の女魔術師”」


女の周囲に黒い魔力が絡みつく。

その身体がわずかに変質しているように見えた。


<シリウス>

「……魔女」


確かミスガイと一緒に戦ったのって……


<シリウス>

「僕、魔女と戦った事があります」


自然と口から出た。


<シリウス>

「オンズァーシ・ファタ・スナイドルって――」


<ダンセ>

「なんと!スナイドルの魔女と!ぜひその話を――」


ダンセが食い気味に反応する。

一歩詰め寄ってくる。


<パレ・リブッカー>

「ダンセ」


奴の低い声に姿勢を正した。


<ダンセ>

「……はっ!申し訳ございません」


<シリウス>

「スナイドルの魔女?九家の魔女って言ってた気がする」


<ダンセ>

「スナイドルとは魔女の一族の名です。彼女らは魔女の中でも特出して強大な力を持っておりました。そんな一族が大戦時には九つ存在したのです。彼女らは魔王によって直接ファタの銘と魔王の血を与えられた」


だから、オンズァーシ・ファタ・スナイドルか。


<ダンセ>

「その家系に連なる血族を九家の魔女と呼ぶのです」


九家の魔女か....あいつ以外にまだいるのかな。


<ダンセ>

「魔女の性質は騙し、謀り、全てを奪い尽くす!」


次の瞬間、景色が変わった。

閑静な町に次々と悲鳴がこだましている。


<ダンセ>

「男に駆け寄り、好意を抱かせ、結婚前夜に財産と魔力と命までもを奪う!夫の妻に成り変わり、子を成し、産んだ上で子供と夫を殺害する!数多の男と関係を持ち、男同士で殺し合いをさせ、生き残った最後の男を標本にする!時には町の長を誑かし市民を虐殺させ、時には魔族の軍勢を騙し壊滅させる!世界に混沌を撒き散らかす残忍で狡猾な生命体。それが魔女なのです」


<シリウス>

「……」


言葉が出ない。


「しかしそんな存在なら、すぐに討伐されるはずだか」



「その通り!だからこそ、“魔女狩り”が始まったのです!ですが」


だが――


景色が更に暗くなる。

縄で縛られ磔にされた女性が、周囲から火を投げられていた。


<ダンセ>

「効果はほぼ皆無。むしろ魔女に抱く恐怖心を利用されたのです」


次々に火刑に処される人々。その中に――どこからどう見ても魔女じゃない人間”が混ざっている。


<ダンセ>

「冤罪」


そう一言だけ告げた。


<ダンセ>

「当時魔術師という概念は無く、魔術という名すらもありませんでした」


<シリウス>

「魔術すらなかったんだ」


<パレ・リブッカー>

「それに近しい力はあるにはあったと思うが、ごく一部の人間が使う不思議な力って感じだろう」


<ダンセ>

「魔女狩りが始まった際、真っ先に狩の対象となったのが彼ら。力を使える者は老若男女関係なく処刑されました。その次は力の持たない女性達。結果、人口は半数まで減り多くの女性達が亡き者になったと言われています」


空気が重い。


<ダンセ>

「魔女の本当に恐ろしい点は“見分けがつかない”こと。彼女らは他者の顔を奪うことができた」


一人の女の顔が一瞬で別人になった。

処刑台に立つ“無実の人”。その裏で魔女が笑っている。


<ダンセ>

「誰を信じるか、誰を疑うか。この問いに人々は狂っていきました。人間の勢力が落ちる中、魔王は着々と眷属を増やしていきました。特に魔族を中心に配下に加え、当時約半数の魔族を従えていたといいます」


魔王軍の大軍がいつの間にか僕達の周囲を囲み、襲撃のタイミングを今か今かと伺っている。


<ダンセ>

「そんな中現れた一筋の光!」


ダンセが手を掲げると、魔王軍を押しのけ光が差し込んだ。


<ダンセ>

「それこそは第二の魔法使い!呪術、錬金術を生み出し、魔女、そして魔王討伐に多大な貢献を果たした魔術の祖たる男!その名は――テオキュリア・シャドゥーマ!」


一人の男が降り立った。

長身で中年の男。ローブを纏い、片手には一つの書物が握られている。


<ダンセ>

「彼は魔女の魔術を解析し、世界初の魔導書“魔女に対する防衛術”を書き上げかました」


本が開かれると文字が空中に浮かび上がった。

それらは部屋中に広がり、魔術式が展開される。


<ダンセ>

「そこには魔術の原理、構築の理論、魔女への対抗魔術、そして魔術の研鑽方法といった魔術の基礎基本が記されており、特に変身解除の魔術は魔女を見破るのに大変重宝しました」


<パレ・リブッカー>

「しかし魔術を使える人間は一握りしかいなかったのだろう?魔術書があったって意味なと無いのでは」


<ダンセ>

「しかし彼は気付いたのです。魔術が使えなのではなく、使う方法を知らなかっただけなのだと!彼は人々に魔術書を配り、教え導く事で少しずつ魔王への対抗勢力を作り上げていきました」


魔術を使う人々が投影された。焼け野原で訓練を行い、廃墟で学習し、連携して魔王軍に対抗していった。


<ダンセ>

「その後彼は原初の魔法使い――ホロノア殿、アキサユース殿と手を組み、大規模な魔術師の軍勢を率いて魔王軍に反撃!魔女そして魔王打倒の最後の一手として二人目の光臨者を召喚!」


闇を切り裂く強烈な光が戦場に突き刺さる。


<ダンセ>

「魔女を次々と看破し、対魔王魔術である神聖魔術によって形勢は逆転!」


神聖魔術……………ミスガイのあれか!


<ダンセ>

「連合軍により魔王を討ち取る事ができました」


辺りを見回すと静寂。

焼け跡。


<パレ・リブッカー>

「……終わったのか」


<ダンセ>

「その後光臨者は1人の子を産み落とし死去。魔法使い達によって魔術連盟が結成、初代総長シャドゥーマの下で世界の復興がなされました」


<シリウス>

「魔術連盟ってそんな前からあるんだ」


<ダンセ>

「はい!連盟の本質は魔術の一般化。この頃から魔術は多くの人々が学ぶようになったのです」


<シリウス>

「そういえば、魔王は滅びたのになんで今も魔王軍はいるんですか?」


<ダンセ>

「良い質問ですね!ですがそれはこの後分かること。一つ言うならば、魔王軍の残党兵はいたのですが闇に紛れて生きる事を選びました。いつか復讐する機会を伺って」


<パレ・リブッカー>

「眷属にならなかった魔族もそうなのか?生き残りはいたんだろう?」


<ダンセ>

「彼らはこれから300年さぞ生き辛かったでしょうう。大戦によって魔族=魔王軍という構図が人間の間で浸透してしまったばかりに」


モリタミの人々の中にも生き残りはあるのだろうか。そうしたらこの世界の事は……


<ダンセ>

「しかし、この大戦を契機に我ら人類の時代が到来する事となるのです!さあ眠くなってきましたか?ここからは後半戦。サクサク進みますよ!」


次回は5/27になります!

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