↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
12章 魔界大戦編~開戦~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

816/821

第12章ー26

 「……は?」


 ……ですよねー。


 アラガから返ってきたのは、予想どおりというべきか、実に冷ややかな反応だった。


 そりゃあ、そうだよな。別に仲がいいわけでもない相手から、いきなり今日の訓練はどうだったかなんて聞かれたところで、困るに決まっている。わざわざ自分の近況を報告してやる義理なんてないだろうし、向こうからすれば、余計なお世話もいいところだろう。


 ……いや、でも、ここで引き下がるわけにはいかない。


 せっかく勇気を出して話しかけたんだ。まだ会話が始まったばかりだというのに、これで終わってしまうのはさすがに寂しすぎる。


 「あっ、いや、その……なんか、そっちの方も大変そうだけど、もしかしたら順調だったりするのかな~……なんて……」


 我ながら、なんとも歯切れの悪い言い方だった。


 しかも、言葉を補おうとするあまり、つい身振り手振りまで交えてしまう。傍から見たら、さぞかし落ち着きのない奴に見えることだろう。


 ……いや、実際、落ち着いていないんだけどさ。


 とはいえ、気になっているのは本当だ。


 アラガが取り組んでいるのは、あの魔眼の制御。以前、魔眼を開放した際に彼がどれほど苦しんでいたかを思えば、簡単に習得できるものではないはずだ。


 それに、もし魔眼を自在に扱えるようになれば、彼自身の負担が軽減されるだけでなく、戦闘能力もさらに向上するかもしれない。


 何か参考になる話が聞ける可能性だってある。


 ……まあ、今の反応を見る限り、あまり期待しない方がよさそうだけど。


 「……」


 「……あ」


 アラガは何も答えず、こちらを見つめている。


 その表情からは、何を考えているのかさっぱり読み取れない。若干、面倒くさそうにしているようにも見えるが、単に疲れているだけという可能性もある。


 ……大丈夫かな、これ。


 やっぱり、話しかけるタイミングを間違えたのだろうか。


 そんな不安が頭をよぎった、そのときだった。


 「……別に何も。そもそも、この訓練に意味があるかどうかも甚だ疑問ではあるがな」


 「……そっか」


 思いのほか、ちゃんとした返事が返ってきた。


 ただし、その内容はなかなかに辛辣だった。


 訓練に意味があるかどうかも疑わしい、か。


 どうやら、本人はまだ納得しきれていないらしい。まあ、無理もないのかもしれない。自分の魔眼を制御するための訓練だと言われても、具体的にどうすればいいのか分からないまま、試行錯誤を続けているのだから。


 それでも、こうして素直に疑問を口にするあたり、少なくとも適当に訓練をこなしているわけではなさそうだ。


 ……なら、もう少し話を続けてみるか。


 「……でも、魔眼を制御できるようになれば、あのときみたいに苦しむこともなくなるんじゃないか? それに、それだけの力を自在に扱えるようになれば、魔王だって倒せるかもしれないだろ?」


 「……」


 「先生も、きっとそれを見越して、いろいろ考えてくれてるんじゃないのか?」


 今度は、先ほどよりも少しだけ踏み込んだ話をしてみた。


 今回の補習について、アラガ自身はまだ疑問を抱いているようだ。だが、自分からすれば、リーフさんたちが彼を補習に参加させた理由は、決して単に魔眼の危険性を抑えるためだけではないように思えた。


 きっと、彼らはアラガに魔眼をきちんと制御し、その力を使いこなせるようになってほしいのだ。


 あの魔眼は、ただ強力なだけの能力ではない。使い方を誤れば、本人の身体にさえ深刻な負担を与えてしまう。だからこそ、力を抑え込むだけでなく、どう扱えば安全に使えるのかを身につける必要がある。


 それに、もう一つ。


 アラガは、魔王を倒すことを目標にしている。


 その話を初めて聞いたときは、正直、無謀なことを言う奴だと思った。けれど、実際に彼の力を目の当たりにした今では、そう簡単に笑い飛ばせる目標ではなくなっている。


 何せ彼は、人類がこれまで到達できなかった領域に、一人で踏み込んでみせたのだ。


 その力に可能性を見出したからこそ、リーフさんも彼を放っておけなかったのではないだろうか。コールスタッシュ先生に頼み込んでまで補習を受けさせているのも、アラガの将来を考えてのことなのかもしれない。


 もちろん、これは自分の推測にすぎない。


 リーフさんたちが本当は何を考えているのか、本人たちから直接聞いたわけではないのだから。


 それでも、少なくとも自分には、彼らがアラガの力を無駄にしたくないと思っているように見えた。


 だからこそ、そのことを伝えてみたのだが――。


 「……」


 アラガは、相変わらず黙ったままだった。


 ……あれ?


 もしかして、余計なことを言ってしまっただろうか。


 彼が何を考えているのかは分からない。魔王を倒すという目標について、どんな思いを抱いているのかも、自分にはまだ理解できていない。


 ただ、今日一日、彼が真剣に訓練へ取り組んでいた姿を思い返すと、魔王討伐を口先だけで語っているようには思えなかった。


 なら、今の言葉も、わざわざ口に出す必要はなかったのかもしれない。


 ……いや、もう言ってしまったものは仕方ないか。


 せっかく会話が続いているのだ。ここで気まずくなったからといって、すぐに話を切り上げるのも違う気がする。


 それに、自分には、もう一つ聞いてみたいことがあった。


 ずっと前から、気になっていたことだ。


 この機会を逃したら、次に聞けるのはいつになるか分からない。


 「……アラガ」


 「……今度はなんだ?」


 再び名前を呼ぶと、アラガはわずかにこちらへ顔を向けた。


 相変わらず素っ気ない返事ではあるが、少なくとも話を聞く気はあるらしい。


 ……よし。


 今度こそ、ちゃんと聞いてみよう。


 「アラガは、なんで魔王を倒したいんだ?」


 それは、彼が掲げている目標についての質問だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。