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転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
12章 魔界大戦編~開戦~

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第12章ー23

 「んじゃ、さっき言った通りにやってみろ」


 「はい!」


 昼食を終え、再び体育館へと戻ってきた自分は、先生の指示に従って鎧の生成に取りかかった。


 まずは出力を一割に抑えること。


 これまでの自分は、鎧を生成する際に魔力を全力で注ぎ込んでいた。だからこそ、今回はそのやり方を根本から見直す必要がある。


 幸い、昼食のおかげで魔力はかなり回復していた。完全に元通りというわけではないが、この世界の食事には魔力の自然回復を早める効果があるらしい。おかげで、午前中に消耗した分も随分と補えている。


 これなら、ひとまず試すことはできそうだ。


 「……煉獄に誘いし炎獅子よ、我に汝の永遠に燃ゆる炎で悪事滅却せし力を与え、我と共に悪名轟く魔の種族に制裁を下さん! 悪逆無道、灰燼に帰せ――【煉獅子《プルガオン・》装炎獄《エクフレイリウム・》誘灰武者《インデュハイアー》】!」


 詠唱を終えた瞬間、真紅の魔力が自分の身体を包み込んだ。


 それは瞬く間に形を成し、全身を覆う鎧へと変化していく。


 やがて魔力の輝きが収まると、そこにはいつもと変わらぬ真紅の鎧が完成していた。


 「……ふう」


 ひとまず、第一段階は問題なし。


 鎧の形状に目立った変化はないし、装着した感覚にも違和感はなかった。魔力の出力を一割に抑えたからといって、生成そのものに支障が出るわけではないらしい。


 なら、次は本命だ。


 「次は太陽の魔力だな」


 「はい!」


 先生の言葉に頷き、意識を切り替える。


 この鎧の最大の目的は、太陽の魔力によって生じる熱から自分の身体を守ることだ。いくら少ない魔力で生成できたとしても、肝心の太陽の魔力に耐えられなければ意味がない。


 むしろ、そこが最も重要な部分と言ってもいい。


 自分は呼吸を整え、体内の魔力を太陽の魔力へと変換していく。


 身体の奥に、あの灼熱の力が生まれた。


 それを鎧全体へと流し込むように意識を集中させる。


 ……いけるか?


 「……っ」


 太陽の魔力を鎧へと送り込んだ、その直後だった。


 「う゛っ!?」


 思わず、喉の奥から苦悶の声が漏れた。


 熱い。


 肌に、直接熱湯を浴びせられたかのような感覚が走る。


 いや、これは熱湯どころの話ではない。身体の内側から焼かれているような、じりじりとした熱が鎧越しに伝わってきていた。


 「ぐっ……!?」


 慌てて魔力の流れを止める。


 危なかった。


 あと少しでも無理をしていたら、本当に火傷を負っていたかもしれない。


 鎧を解除し、荒くなった呼吸を整えながら、自分は先ほどまで鎧に覆われていた身体を確かめた。


 幸い、目立った火傷はない。だが、あの熱が伝わってきた感覚は、決して気のせいではなかった。


 そもそも、まだ太陽の魔力を一段階も解放していないのだ。


 それなのに、これほどの熱が伝わってくるとは。


 「ふむ。流石に出力一割じゃ、太陽の魔力までは耐えきれねえか」


 傍らで様子を見ていた先生が、顎に手を当てながら呟いた。


 その声に焦りはない。こちらの状態を確認し、何が問題だったのかを冷静に分析しているようだった。


 ……先生でも、実際に試してみるまでは分からなかったのか。


 まあ、当然と言えば当然か。


 この鎧は、自分自身の魔力とイメージによって生み出したものだ。太陽の魔力という特殊な力をどれだけ受け止められるのか、その詳細まで他人が完全に把握するのは難しいだろう。


 「……先生。やっぱり、出力を抑えるのは厳しそうですよ?」


 「……」


 鎧を解除した自分は、先生の方へと顔を向けた。


 正直、出力を一割に抑えた状態では厳しい気がする。


 鎧そのものを生成することはできても、太陽の魔力を流し込んだ途端に熱が伝わってくるのでは、まともに戦うことなどできない。下手をすれば、敵と戦う前に自分の身体が限界を迎えてしまう。


 魔力の消費を抑えることと、太陽の魔力に耐えられること。


 この二つを両立させるのは、思っていた以上に難しいらしい。


 しかし、先生はすぐに結論を出すことなく、少しの間考え込んでいた。


 やがて、何か思いついたように口を開く。


 「そうだな。なら、ギリギリ耐えきれる出力を探ってみろ」


 「ギリギリ、ですか?」


 「ああ。一割で駄目なら、少しずつ出力を上げていけばいい。どこまで抑えれば太陽の魔力に耐えられなくなるのか、逆に、どこまで出力を上げれば問題なく耐えられるのか。それを確かめるんだ」


 なるほど。


 確かに、いきなり一割にこだわる必要はない。


 大事なのは、魔力の消費を抑えながら、必要な性能を維持できる出力を見つけることなのだから。


 「それでも駄目そうなら、鎧の形を変えるなり、余計なもんを省くなりして、極力魔力を抑えられるように調整するべきだな」


 先生はそう言って、鎧のあった場所へと視線を向けた。


 形状そのものを変える。


 あるいは、必要のない部分を削ぎ落とす。


 言われてみれば、鎧を生成するとき、自分は防御力や見た目ばかりを意識していた。飛行のための噴射口を取り付けたり、太陽の魔力に耐えられるようにしたりと、機能を追加することばかり考えていた気がする。


 けれど、機能を増やせば増やすほど、維持に必要な魔力も増えてしまうのかもしれない。


 ならば、必要なものと、そうでないものを見極めることも重要になってくる。


 「わ、分かりました」


 自分は頷き、改めて鎧の構造を頭の中で思い描いた。


 出力を調整するだけで解決できるのか。それとも、鎧そのものを作り直す必要があるのか。


 今の段階では、まだ分からない。


 ただ、一つだけ確かなことがある。


 この鎧を本当の意味で使いこなすためには、まだまだ試行錯誤が必要だということだ。


 「よし。じゃあ、納得いくまで試してみろ。無理だと思ったらすぐに止めろよ。身体を壊したら元も子もねえからな」


 「はい!」


 こうして、その後の時間は、太陽の魔力に耐えられる鎧の出力を探り、必要に応じて形状や構造を見直すための試行錯誤に費やされることとなった。

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