第12章ー18
リーフさんとの話を終えてから、数分後。
自分は再び、体育館へと戻ってきていた。
理事長室を出てからここに来るまで、ずっと頭の片隅にはギリスケのことが引っかかっていた。
あいつが犯罪に関わっていたこと。
その背後には、反人類活動という組織が存在していること。
そして、今回の犯行は祖父からの命令だった可能性があること。
どれも、今までの学園生活を送ってきた自分にとっては、にわかには信じがたい話ばかりだった。
正直、まだ困惑している。
あいつが何を考えていたのかも、本当に祖父の命令に従わざるを得なかったのかも、今の自分には分からない。
考えれば考えるほど、頭の中がごちゃごちゃになっていく。
……けど、今の自分にできることは何もないんだよな。
いくら考えたところで、ギリスケ本人に会えるわけでもなければ、事件の真相が分かるわけでもない。
だったら、今は一旦忘れるしかない。
もちろん、完全に忘れられるわけじゃない。それでも、いつまでも引きずっていたら、目の前のことにすら集中できなくなってしまう。
まずは補習だ。
そう自分に言い聞かせ、自分は体育館の入り口の前で足を止めた。
「……ふぅ」
小さく息を吐き、ゆっくりと深呼吸をする。
吸って、吐いて。
もう一度、吸って、吐く。
胸の奥に残っていたざわつきが、ほんの少しだけ落ち着いた気がした。
よし。これで大丈夫……なはず。
そういえば、リーフさんからは今回の件について、他言無用だと念を押されていたんだった。
まあ、当然といえば当然か。
まだ騎士団による調査も始まったばかりだ。事情がはっきりしていない以上、余計な情報が広まるのは避けたいのだろう。
自分だって、わざわざ言いふらすつもりはない。
ただ……うっかり口を滑らせないようには気をつけないとな。
ギリスケの話は、思っていた以上に衝撃的だった。先生たちと話しているうちに、つい話題に出してしまう可能性だってある。
特に、こういうときは余計なことを考えないに限る。
今は補習。
それ以外のことは、ひとまず後回しだ。
「よし……」
自分に気合いを入れるように呟き、自分は体育館の扉に手を掛けた。
「すいません。遅れまし――」
扉を開きながら、まずは遅れてしまったことを謝ろうとした。
理事長室に呼び出されていたとはいえ、待たせてしまったことに変わりはない。コールスタッシュ先生にもアラガにも、ひとこと謝ってから補習に参加するつもりだった。
……だったのだが。
「たっ!?」
体育館の中に足を踏み入れた瞬間、自分は思わず変な声を上げてしまった。
目の前に広がっていた光景が、あまりにも予想外だったからだ。
アラガが――。
コールスタッシュ先生の胸ぐらを掴んでおり、一触即発の空気が漂っていた。




