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転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
12章 魔界大戦編~開戦~

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第12章ー12

 「俺はまだ、指導を受けたいとは一言も言っていないぞ」


 アラガが、不満を隠そうともせずに言い放った。


 「……」


 確かに、その通りだ。


 そもそもアラガ自身が先生の指導を受けたいなんて頼んだわけじゃない。


 自分と同じように、本人の意思とは関係なく話が決められている。


 しかも、朝っぱらから学園に呼び出された挙げ句、「今日から補習を受けろ」と言われたようなものだ。


 そりゃあ、文句の一つくらい言いたくもなるよな。


 自分だって、いきなりそんなことを言われたら困る。


 「……君は、魔王を倒すために、この学園へ来たんだろう?」


 「それがどうした?」


 少しの沈黙を挟んで、リーフさんが問いかける。


 対するアラガは、険しい目つきのままリーフさんを睨みつけていた。


 明らかに警戒している。


 まるで、これから返ってくる言葉次第では、一歩も引かないとでも言いたげな目だ。


 それを真正面から受け止めながら、リーフさんはいつもの穏やかな表情を崩さなかった。


 「なら、彼から教わることは、君にとってとても大きな意味を持つと思うよ」


 「……なん、だと?」


 アラガの目が僅かに見開かれる。


 「?」


 自分も思わず首を傾げた。


 彼から教わること。


 つまり、先生から魔法を教わることが、アラガにとって大きな意味を持つってことか?


 でも――。


 「どういう意味だ?」


 アラガが更に問う。


 リーフさんは自分の方へ視線を向け、それからアラガへと戻した。


 「それは、彼から教わっていけば分かるんじゃないかな?」


 「……」


 また、それか。


 肝心なところになると、いつもこうやってはぐらかされる。


 アラガも同じことを思ったのだろう。


 眉間に皺を寄せ、明らかに納得していない様子でリーフさんを睨み続けている。


 けれど、リーフさんはそれ以上何も語らなかった。


 ただ、「補習を受ければ分かる」と。


 それだけを伝えている。


 まるで、今ここで説明することはできないとでも言うように。


 ……どういうことなんだ?


 自分にはさっぱり分からない。


 先生から魔法を教わる。


 それがアラガにとって大きな意味を持つ。


 それだけ聞けば、普通の話にも思える。


 でも、リーフさんの言い方が妙に引っかかる。


 まるで、自分やアラガがまだ知らない何かを知っているみたいだった。


 「……くっ」


 当然、アラガも納得してはいない。


 それでも、それ以上リーフさんを追及することはなかった。


 「……」


 自分は思わずアラガの横顔を見る。


 もっと食い下がると思っていた。


 「なぜだ」「どういう意味だ」と、さらに問い詰めてもおかしくない。


 なのに――。


 「……分かった」


 小さく呟くと、アラガは踵を返した。


 そして、そのまま体育館の中へと入っていく。


 「え……?」


 意外な反応に、思わず声が漏れた。


 アラガが、素直に引き下がった?


 もちろん、納得したわけじゃないのは見ていて分かる。


 最後まで不満そうな顔をしていたし、歩き方だってどこか苛立っている。


 それでも、これ以上は何も言わなかった。


 ……リーフさんの言葉に、何か思うところがあったのか?


 それとも――。


 「……」


 考えてみても、答えは出てこない。


 そもそも、自分自身がリーフさんの言葉の意味を理解できていないのだ。


 アラガが何を感じ取ったのかなんて、分かるはずもなかった。


 「じゃあ、彼をよろしくね」


 リーフさんが先生へ向き直る。


 「フゥ……」


 先生は大きく息を吐いた。


 そして、面倒くさそうに頭を掻きながら、


 「全く……どうもこうも、自分勝手な奴ばっかだな」


 と、ぼやく。


 「ははは。そう言わないでくれよ」


 「誰のせいだと思ってんすか……」


 先生の愚痴を聞きながら、自分は苦笑するしかなかった。


 こうして自分とアラガの補習は、本人達の意思とは少し違った形で始まることになった。


 アラガは体育館へ。


 そして自分は――。


 「じゃあ、行こうか」


 「……はい」


 リーフさんに促され、その場を離れる。


 向かう先は、理事長室。


 何の用事なのか。


 どうして自分だけ呼び出されたのか。


 そして、騎士団が朝早くからここへ来ていた理由とか、自分に一体何か関係があるのかとか。


 聞きたいことは山ほどある。


 けれど、隣を歩くリーフさんは、相変わらず穏やかな笑みを浮かべているだけだった。


 ……まあ、理事長室に着けば分かるか。


 そう思いながら、自分はリーフさんの後を追って歩き始めた。

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