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転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
12章 魔界大戦編~開戦~

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第12章ー4

 「先生、なんでこんなところに?」


 突然の乱入者に、俺は思わず目を丸くした。


 いや、本当に何でこんなところにいるんだ?


 しかも、まだ朝早い時間帯だ。


 昨日は学園祭があって、その後には後夜祭まであった。


 普通ならまだ寝ていてもおかしくない時間だろう。


 てっきり徹夜で酒でも飲んで、そのままフラフラ歩いてきたのかと思ったが――見たところ、そんな様子はない。


 ということは、普通に早起きしたのか?


 正直、この人が朝早くから起きているというのは少し意外だった。


 まあ、仮にも教師なんだから、早起きくらいできるんだろうけど。


 「寝起きの一服しに来たんだよ。教員寮《あっち》じゃ、うるせえのが多いからな。この時間なら誰も見回りに来ねえだろうし」


 「は、はあ……」


 どうやら、単純に煙草を吸うためにここまで来たらしい。


 なるほど。


 教員寮には教師が大勢いる。


 当然、その中には煙草を嫌う人もいるだろう。ライラック先生とか絶対嫌そうな顔するのが目に浮かぶ。


 だったら、人目を避けて落ち着いて吸える場所を探したくなる気持ちも……まあ、分からなくはない。


 分からなくはないけど。


 「こんな朝早くから吸いに来るんですか……?」


 思わず疑問が口から漏れた。


 寝起きの一服って、そこまでして吸いたいものなのか?


 俺には煙草を吸う習慣がないから、いまいち理解できない。


 ……ヤニカスって、みんなそういうもんなのか?


 「うるせえ。吸いたくなったんだから仕方ねえだろ」


 「いや、別に文句を言ったわけじゃ……」


 なんだか理不尽な気がする。


 そんなことを考えていると、先生が俺とマヒロを交互に見た。


 そして――。


 「それより、お前ら。さっきなんかバトろうとしてなかったか?」


 「……」


 「ったく。朝っぱらから何考えてんだか」


 呆れたような顔を向けられる。


 ……いや。


 確かに俺達は、ついさっきまで決闘を始めようとしていた。


 それについては反論できない。


 でも――。


 (いや、先生も大概だと思うんですけど……)


 朝っぱらから寮を抜け出して、生徒が暮らしている場所で煙草を吸っている教師に言われたくはない。


 そんな俺の心の声を知るはずもなく、先生は煙草を咥えたまま俺達を見ている。


 すると、マヒロが一歩前へ出た。


 「拙者、昨日の決勝試合は納得いかなかったでござる」


 「……」


 「本来ならば、サダメと最後まで戦って決着をつけたかったのでござる。だが、サダメが倒れてしまったことで不戦敗となった」


 マヒロは腰に手を当て、堂々と胸を張る。


 「そのような勝利では、拙者は納得できぬ!」


 「ふーん」


 「…………」


 先生の反応は、驚くほど薄かった。


 「ふーん」って。


 自分から理由を聞いておいて、興味なさそうなのは何なんだ。


 マヒロも少し困惑したような顔をしている。


 それでも構わず、話を続けた。


 「故に、偶然サダメと再会できたこの機に、一度相まみえたいと思っていたところでござる!」


 「であるからして、邪魔立てはしないで貰いたい」


 「馬鹿かテメーは」


 俺が説明するより先に、先生がマヒロを一蹴した。


 「テメーらが勝手なことすると、こっちに余計な責任が回ってくんだよ」


 「……責任?」


 「教師が生徒同士の決闘を目の前で見て、何もしなかったなんてことになってみろ。後で面倒なことになるに決まってんだろうが」


 「……ああ」


 なるほど。


 言われてみれば、その通りだ。


 先生がここで俺達を止めなかったら、何か事故や問題が起きた時に責任を問われる可能性がある。


 教師としては、見て見ぬふりなんてできないわけだ。


 「だから諦めて、とっとと朝練にでも行ってこい」


 「なっ!?」


 マヒロの顔が一瞬で曇った。


 「朝飯、遅れんぞ」


 「む……」


 「ほら、行け」


 「……承知したでござる」


 マヒロは渋々ながら刀から手を離した。


 「……助かった」


 思わず小さく呟く。


 正直、今の俺にマヒロと戦う余裕なんてない。


 頭痛も完全には治っていないし、昨日の疲労だって残っている。


 何より、せっかくミオがくれたハンバーガーで命を繋いだばかりなんだ。


 朝食前にもう一戦なんて、絶対に御免だった。


 そもそもマヒロと戦う心の準備すらロクにしてないからな。いくらなんでもいきなり勝負は無理だ。


 「…ああ、そうだ。あと」


 先生が煙草を指に挟みながら、こちらを見る。


 「こいつにちっと用事があっからな」


 「え?」


 俺を指差す先生。


 ……俺?


 嫌な予感がした。


 マヒロとの決闘を回避できたと思った矢先に、別の問題が舞い込んできたような気がする。


 「レールステン」


 「は、はい」


 先生は俺を真っ直ぐ見つめると、ぶっきらぼうに告げた。


 「飯食ったら、面《ツラ》貸せ」


 「……え?」


 思わず間の抜けた声が出た。


 「何の用事ですか?」


 「それは後で話す」


 「いや、そこは今教えてくれても――」


 「飯食ってから来い。朝飯抜いてフラフラしてる奴の相手なんざしたくねえ」


 そう言い残すと、先生は煙草を咥え直した。


 ……なんなんだ、この人。


 マヒロとの決闘は止めてくれた。


 それについては本当に助かった。


 助かったんだけど――。


 結局その後、俺は予定通り朝練を済ませ、寮の食堂で朝食を摂った。


 そして――。


 先生のもとへ向かうことになった。

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